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第21章 交渉成立

海馬と朱夏が体に戻るのはそれはそれは大変だった。

特に海馬は、静電気除去ブレスレットを二本もつけているが、全然身体に戻って行けない。

手を取り合おうにも霊体の身体はすり抜けるばかりで2人は、疲弊していた。

地下室に入ってからはほぼ動けてない。

「これ、違う意味でやばいね。」

海馬は体に戻れない気がしてくる。

「諦めちゃダメだよ!頑張ろう??」

朱夏は応援してくれるが全くびくともしない。

「朱夏ちゃんだけでも戻って・・・?」

きっと朱夏だけなら戻れるはずなのに、朱夏は頑なにそうしようとはしない。

「嫌です。海馬お兄ちゃんが体に戻るまでは絶対はいりませんから。」

ちょっと怒り気味でそう返される。

「参ったなぁ・・・もう夜が明けちゃうのに・・・。」

頑固なお嬢様を横目に海馬はため息をついた。

もう一度挑戦する。

「うぬぬぬっ!!」

「頑張って!!!ファイトです!!!」

しかし、やはり体から弾き返されてしまった。

「がぁっ!!」

すると、思っても見ないことに、吹っ飛ばされた海馬の背中が何かにぶつかった。

すべてのものを通過していたはずなのに急に支えられている感じがして海馬はビビった。

「うわっ!!なんだ!!」

慌てて後ろを振り向くと死神がいる。

「なんで死神!?え!?あれ!?・・・心琴ちゃんと鷲一・・・?」

その後ろには鷲一と心琴もいる。

「やっほー!」

「死神と話ができた。」

心琴も鷲一もにっこりと笑った。

「おお!お手柄じゃないか!」

「やりましたね!」

海馬も朱夏も嬉しそうにする。

「・・・だけど・・・言いにくいんだが・・・体に戻れなくてね。」

海馬が困ったように笑うと、死神がむくれた顔をした。

「ったく。しょうがねぇなぁ!!」

「し、死神!?う、うわぁぁ!!」

海馬の首根っこを掴んで身体へ霊体を投げ付ける。

死神は霊を触れる馬鹿力の人間だ。

海馬の霊体は投げられるがままにすっぽりと身体に入って行った。

「はっ!!」

海馬が目を覚ました。

「も、戻れた!」

続いて朱夏も目を覚ます。

「良かったです!!もう、ダメかと思いましたよ!」

朱夏も安堵した様子だ。

「あははっ!死神のおかげだね。」

「ああ。マジで、あいついなかったら体に戻れてねぇな。」

心琴も鷲一も体に戻ってきた。

「おぉぃ。誰もテメェラを助けたつもりはねぇからな。邪魔だったから投げ飛ばしただけだぁ。」

相変わらず怒った顔をして死神は言う。

その様子にみんなは顔を見合わせて笑う。

「お前、意外と面白いやつだな。」

「ちょうど反抗期なお年頃ですもんね。」

和気藹々とした雰囲気だが死神はニコリともしない。

「坊主・・・テメェ・・・来てやったからには例の方法、教えろよ?」

「・・・・へ?何の?」

海馬は急な話についていけない。

鷲一は慌てて海馬に耳打ちをした。

(わりぃ・・・あいつ連れてきた時・・・首輪を取る方法を教えるって・・・)

(はぁぁぁぁ!?!そんなのまだわかるわけねぇだろ!!このバカ!!!)

海馬の顔が青ざめる。

死神を見ると目が赤く光っている。

「おぉい!?ぶっ殺されてぇのか!?」

手には鎌。

「ひ・・・ひぃぃ!!」

海馬は青筋を立ててビビる。

「ちょ、ちょっと待ってください!」

そこに割って入ったのは朱夏だった。

「あなたの協力があれば・・・判明するという話です。」

死神の目をまっすぐと見て言う。

「・・・なんだぁ・・・?協力だぁ!?できるわけがねぇだろぉ。敵同士だって自覚ねぇのかよ。」

死神は呆れ果てた声を上げる。

「ほら、海馬お兄ちゃん。さっきの話、死神にもしてください?」

「あ・・・ああ。」

促されるままに海馬は死神に向かう。

「あのさ?首輪って死神も持っているのかい?」

「あ?」

突然の言葉に首を傾げた。

「エリを捕まえるために、持たされていたんじゃないかなって推測してるんだけど。」

「・・・確かに。持ってるぜ。忌々しい首輪。」

死神はポケットから畳まれた首輪を取り出した。

「これが・・・道連れの首輪だね。」

「ああ。」

静かに死神は頷いた。

海馬は赤い目をじっと見つめてこういった。


「この首輪を・・・魔女の首につけたいんだ。」


死神は驚いた顔をして止まった。

「そ・・・そんなことしたら妹が殺されちまう。できねぇよ・・・。」

目をそらして、首輪を再びポケットにしまう。

「まて。死神。逆なんだ。」

「逆だって・・・?」

「これは首輪の解除方法を探るための、効果的な手段だと思わないかい?」

海馬はニヤッと笑った。

「つまり・・・。あのばばぁに首輪をつけて、解除させる・・・。それで方法を探るって事か?」

「その通り。どうだい?やる価値があると僕は思うけどね?」

海馬は胡座をかいて、ふてぶてしく笑ってみせる。

「考えたこともなかったぜぇ。確かに・・・そりゃぁいいなぁ。」

「だろ?」

そう海馬は言ったが死神の顔は浮かない表情のままだ。

「でもわりぃがお断りだぜぇ。判明する前に妹の首が飛んだら意味がねぇんでなぁ。」

死神は下を向いたが、海馬の表情は何一つ変わらない。

「ふふっ。なめてもらっちゃ困るね。」

「あぁ?」

死神は不機嫌な声を出す。

「君はボスの命令通りに動けばいい。むしろ命令に背くな。妹が危なくなる。」

その一言に眉毛がピクリと動く。

「・・・なんでだ?なんでお前らが妹の心配すんだよ。お前ら、俺の敵だろぉ・・・?」

死神は今まで言われたことがない言葉に戸惑いを隠せない。

「ああ。今までは、ね?これからは君が決めると良い。」

不敵な笑みに、死神はようやく歯を見せて笑った。

それを見てみんなも笑顔になる。

「そんな事言ってきたやつはお前が初めてだぜぇ。・・・で、俺様に何をしてほしいんだ?」

「君に協力してほしいのはただ一つ。僕たちを捕まえたと魔女に報告することだけだ。」

その言葉を聞いて死神は拍子抜けする。

「あん?それだけでいいのかぁ?」

「ああ。もし失敗したら、妹の命が危ないだろ?君はできる行動の中で協力してくれればいい。」

「言っている意味が分からねぇ。」

死神の口は逆三角形だ。

「君にリスクは負わせないといっているのさ。」

死神は困惑してはいたが、とりあえず納得した。

「・・・わかった。とにかくそれだけでいいんだなぁ?」

「ああ。男に二言はないからね。」

海馬が手を差し出す。

「・・・。」

死神は少し黙って手を眺めていたが、戸惑いながらも海馬の手を握った。

「交渉成立。ってことでいいね?」

「ああ。あんたの言う通りにしてやるぜぇ。少しここで待ってろよぉ。」

死神はそう言うと暗闇の中へ消えていった。


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