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第16章 三上という女

車を走らせること15分。

丸尾が運転する車は山道を走っていた。

「なぁ、海馬?」

「どうした?」

鷲一がポツリと不安に思っていることを口にする。

「三上も一緒にいなくなったんだよな?」

「・・・ああ。」

それだけでもなんとなく言いたいことはわかる。

「まさかとは思うが、また・・・三上がエリをなんてこと無いよな?」

前回の事件の時、真っ先にエリを殺そうとしていたのは三上だった。

そして、海馬も鷲一も一度、夢とはいえ彼女の手で殺されている。

「まっさか!あなたたちは三上さんをなんだと思ってるんですか?」

丸尾がそれを聞いて驚く。

「・・・だって怖いもんね・・・。」

海馬まで本音が出てしまう。

「そっか、海馬坊ちゃんも三上さんの事あまり知らないんだね?」

「そうですね。丁度朱夏ちゃんと会わなくなった頃に雇われたんですよね?」

海馬の高校入学を境に朱夏とはあまりあっていない時期があった。

「そうそう。あれは忘れもしない。朱夏ちゃんのお世話に僕ら男2人だと不自由していた時の事。旦那様が女性のボディーガードを雇うといい始めたんだ。」

丸尾はそっと話始めた。


◇◇


「今度、朱夏を護衛する女性のボディーガードを雇おうと思っています。」

この町の町長であり江戸から代々伝わる大地主で大富豪の朱夏の父親は唐突にそういい始めた。

「え?!女性のボディーガードですか?!」

丸尾は驚く。

「女にボディーガードなんて務まるんですかね?」

角田は不満そうだった。

「ふぉっふぉっふぉ。まだだれを雇うかは決めていなくてね。今度採用試験を実施しようと思います。」

「採用・・・試験ですか?」

丸尾は目を丸くした。

「書類選考、筆記試験の後、実力を図るための実技試験を行いたい。」

「大事ですね。足手まといが増えるのはごめんですから。」

角田は吐き捨てるようにそう言った。

「ふぉっふぉっふぉ。そこでな、角田、君に実技試験の係官になって欲しいんだ。」

「と・・・言いますと?」

角田はより詳しい説明を町長に促す。

「君と戦ってもらうのさ。実戦形式でね。」

「え!?相手は女でしょ!?」

角田は女性相手に暴力は振るいたくなかった。

怪我をさせてしまう可能性もある。

何より角田が知っている女性とは守るべき存在だった。

「だからこそだ。この先、男性と戦えないボディーガードはきっと朱夏を守れない。」

「・・・。」

「男の君に果敢に挑んでいける、そんな女性が僕は雇いたいんです。」

優しく、そしてまっすぐに町長はそういう。

「・・・わかりました。」

角田は町長の思いを受けて試験の係官を引き受けた。


そして、試験当日。

「おい、丸尾。」

「なに?」

角田はタブレットを片手に情報収集する丸尾を呼び止めた。

「今日来る女性はどんな人だ?」

丸尾は角谷タブレットを見せてくれる。

「えっとね、色々いるよ?格闘家の人・・・筆記は低かったけどね。それに、警察学校を首席で卒業した人、この人は成績優秀だよ!実技も期待できるね。あとね・・・夢を研究していた研究者・・・?筆記試験はほぼ満点でトップだけど、実技・・・大丈夫かな?研究者だよね?」

タブレットを一瞥するとそこには黒い髪の毛の女性がいた。

「・・・舐めてやがるな。ボディーガードの仕事を。」

「そうかもね。じゃぁ、実技試験の監督、頑張ってね!」

体育館を貸し切って実技試験は執り行われた。

実技の内容は簡単。

制限時間内に何発、角田に攻撃を入れれるかだった。

「14番!木下 巴瑞季!!格闘家です!!よろしくっす!!」

「こいやぁ!!!!」

角田の怒号に負けないように格闘家も雄たけびを上げながら突っ込んでくる。

「うりゃああああ!!!」

角田の腰に手を回す。

そして、バックドロップを仕掛けようとするが、角田はびくともしなかった。

「・・・。よわいな。」

「え!?」

「歯を食いしばんな。」

ばきぃ!!!!

格闘家の女性は吹っ飛んだ。

「い・・・痛い!!何すんのよ!!!これでも一応女よ女!!!」

「お前、殺し屋にも同じこと言えんのか?」

「え!?」

「そんなんじゃ一瞬で殺されるぞ。・・・失格!!!」

「・・・・!!!!」

格闘家の女性は泣きながら外へ飛び出していった。

「・・・次!!!」

「は!!わたくし、警察学校を首席で卒業いたしました!!!高橋 鈴です!!!」

「こいやあああ!!」

「はい!!!!」

角田に向かって蹴りを放つが簡単に足を掴まれてしまう。

「やっ!!やめて!!!」

「やめてだぁ!?」

角田はそのまま足を持ち上げ、ぶん投げた。

「うっ!!!」

「・・・失格だ。」

「そんな・・・!!」

女性はがっくりと膝を落とす。

「筋は悪くないが・・・まだ現場で働いたことねぇって感じだな。出直してこい!!!」

警察学校を首席で卒業した女性もあっけなく失格を言い渡された。


「ね、ねぇ角田?厳しすぎない?」

丸尾がおずおずと口を挟む。

「・・・朱夏様を守る人だ。しっかり選ばなきゃダメだろ?」

「だけど・・・試験を受ける人、次で最後だよ?」

目の前の華奢な体の黒髪の女性には見覚えがあった。

「・・・研究者か。今回で決めんのは無理そうだな・・・。」

「あら?聞き捨てなりませんね。」

研究者は一歩前へ出てきた。

「三上 玲央。夢の研究者ですが・・・負けませんよ?」

「ほぉ・・・!威勢のいい奴は嫌いじゃないぜ?」

そういうと、角田が先陣を切ってこぶしを振り上げた。

「一発で沈めてやるよ!」

「はっ!!」

三上は角田のこぶしを蹴りで受け流した。

勢いあまって角田が転ぶ。

「なっ!?」

「力任せじゃ私には勝てませんよ?」

気が付くと三上は角田の真上にいた。

「はぁぁぁぁぁ!!!!!」

かかとが垂直に振り下ろされる。

「ガッ!!!!!!」

そのかかとは角田の脳天を直撃した。

「ふぅ・・・私の事、少しは認めてもらえたかしら?」

そう振り向きざまに三上が声をかけると、角田はすでに気絶していた。

「え!?あ!!やば!!やりすぎちゃった!?」

「わわっ!!角田!!!!」

角田は救護室へ運ばれるのだった。


「ご、ごめんなさい!!!」

しばらくして角田が目を覚ますとさっきの研究者がいた。

「ああ・・・試験管を気絶させちゃうなんて・・・私、不合格ですか?」

上目遣いで三上が角田に聞いた。

(や・・・やばい。か・・・かわいい!!!)

この時、角田は三上に惚れたのだった。

「あんた・・・強いじゃねぇか!!気に入った!!合格だ。」

「え、ええ!?角田、勝手に決めちゃっていいの?!」

丸尾は慌てたが、角田は良い笑顔だった。

「俺の方から町長には頼んでみる!ぜったい仲間になってくれ!」

「本当ですか!?ありがとうございます!!!」


こうして、三上はボディーガードの一員になったのだ。


◇◇


丸尾はここまで話し終わってハッとした。

後ろの二人に三上さんのいい所を伝えようと思い出話を始めたはずなのに、これでは最強エピソードだ。

「へ・・・へぇ・・・やっぱり怖いじゃねぇか。」

「最強過ぎるよね・・・。」

案の定後ろの二人は怖がっていた。

「違うんだよ!えっとー・・・三上さんの可愛いとこ・・・可愛いところ?・・・えっとぉ。そうだ!パフェが大好物なんだよ?」

しかし、二人の興味はこの一言で大きくそれる。

「パフェ・・・?」

このワードに反応した男が一人と。

「だから、デートにすごく良いパフェが美味しい店、角田に紹介してあげたんだ!」

「デートにすごく良い店・・・?」

このワードに反応した男が一人いた。

結果、三上の可愛さなんてどうでも良くなった二人は声をそろえてこう言った。

「「丸尾さん!その店!!教えてください!!!!」」

「なんでそうなるかなぁ!!!!」

丸尾は車を運転しながら若い二人に翻弄され続けるのだった。



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