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第15章 ママ

鉄の扉から金色の髪、紫の唇のおばさんがのっそのっそと歩いてきた。

「ママ・・・!!死神がね!!変なやつ捕まえてきたのに殺さないの!!」

まるで幼稚園児がママに告げ口するように桃がそう言った。

「俺様は邪魔者は殺すがそれ以外は殺すつもりはねぇよ。鎌が錆びる。」

吐き捨てるように死神が言った。

「はぁん?変な奴?死神、それはどこで拾った?」

ママは死神を睨みつける。

「たまたま見つけたから捕まえただけだ。」

外を指さして死神は言う。

「ふぅん。ボディチェックは?」

「まだだ。」

「それなのに喧嘩なんかしてたのかぃ?」

ママは2人を睨みつける。

「ご、ごめん。すぐにするよ、ママ!」

「了解。」

死神は角田を鎌の柄で背広を引っ掛けると宙吊りにする。

「角田さん!!」

「グッ!!」

片手で首が締まるのをなんとか防ぐが苦しそうな声がした。

死神はポケットや鞄を漁り、身体に仕込んであるナイフやメリケン、連絡用の無線機や携帯を次々に投げ捨てた。

「完了だぜぇ。特になしだ。」

桃は桃で朱夏の身体をペタペタ触り始めた。

「や、やめて!!」

「煩いなぁ。私だって仕事じゃなきゃやらないって!」

抵抗する朱夏の手を片手で押さえながらポケットや鞄を投げ捨てる。

「うーん?スマホくらいかな?後は探検道具みたい。」

朱夏の元を離れようとした瞬間、桃の目に時計が映る。

「あ!!ママ、コイツの時計、時計じゃない!変な機械だ!あっぶない!見落とす所だったわ!」

そう言うと時計を朱夏の腕から外して地面に叩きつけた。

パリンという音とともに時計は割れる。

「ほぉ、これはもしかして仲間が居るのかもしれないねぇ。」

その時計を見てママは顎を摩った。

「芋づる式に殺すとしようか。」

「キャハッ!ママ最高!」

壊れた時計を見て朱夏は青ざめるのだった。

「次はお団子の番ね!」

「お団子!?」

心琴はお団子呼ばわりに眉間にしわを寄せた。

桃はまたペタペタと身体を触る。

「や、やめて!・・・くすぐったい!あはは!くすぐったいって!!」

「あーもう!!ちょっと、動かないでよ。」

笑って身をよじる心琴に桃のボディーチェックが滞る。

「動かないで!!」

「だって!く、くすぐったい!!」

「・・・何やってるんだい?桃?」

ママは低い声で目を光らせた。

「ご・・・ごめん・・・なさい・・・。」

桃の表情が急に恐怖におびえたような目になる。

「あんたのせいで怒られたじゃない!!!」

桃のピンクの髪が逆立った。

さっきまでの表情とは一転必死の形相だ。

心琴はそれを不思議に思った。

「・・・?ママ・・・なんだよね?」

「なによ。ママは桃のママだよ。最高のママ。」

桃はそれだけ言うと、さっさとボディーチェックを終わらせた。

その様子を満足げに見ていたママは今度は死神に命令する。

「死神、男の両腕と足を切りな。暴れられたら厄介だ。」

「・・・ああ。」

角田は鎌の柄から投げ捨てられた。

「ガハッ!!」

上手く受け身が取れず背中から落ちた。

「悪く思うなよ。」

「!!!」

そういうと、赤い鎌に光が帯びる。

鎌が上下にすっと動いたかと思うと、角田の足と両肩に直線の赤い線ができた。

ブシュッっという音と共に血しぶきが舞う。

「ぐあああああああああああ!!!!!」

角田が崩れ落ちた。

「きゃああああああああああああああ!!!」

「ひ・・・ひどい・・・。」

「角田!!角田!!!」

目の前の残虐すぎる光景に3人は悲鳴を上げた。

「死神って相変わらず甘いよねぇ。私だったら腕も足ももぎ取っちゃうのにぃ。」

「命令には背いていないだろぉ・・・。」

死神はいちいち口を出してくる桃にいら立ったがママがいる手前それ以上何も言わなかった。

「はぁん。まぁいい。桃はこいつらを見張りなさい。」

「はぁい!」

桃は可愛く手を上げる。

「死神は侵入者を見つけたらここに連れて来なさい。」

「・・・了解。」

死神は闇に解けるように消えていった。

「私は上に戻るよ。あとは任せたからね。」

「うん!わかったぁ!」

鉄の扉をドスンと開けてママは階段を昇って行った。

それを見送ると桃は心琴と朱夏に振り返った。

恍惚の笑みに二人は鳥肌が止まらなかった。


「さぁて、お楽しみタイム!!」


目を付けられたのは心琴だった。

足が動かない心琴の腕を引っ張って無理やり中央の実験台に乗せる。

「な・・・何する気なの!?」

「さっき、くすぐった時の反応・・・最高だったからさぁ。」

そういうと桃は舌なめずりをする。

桃は小さな静電気ボールを作り出す。

それを心琴の腕に押し当てる。

バチンという大きな音がする。

「痛っ!!!!」

「心琴ちゃん!?」

朱夏とエリからは実験台が良く見えない。

けれどもいい事が起こっていない事だけは解った。

「だ、大丈夫・・・静電気・・・痛かったけど。」

「あはっ・・・いいね。いいね、心琴ちゃんっていうのね!」

朱夏の声を聴いて桃が反応した。

「・・・。あなたは桃ちゃんっていうんだよね?」

冷静に心琴が桃に話しかける。

「そうよ?ママの最高傑作なの。この能力、最高でしょ?」

とても嬉しそうに桃は静電気を光らせる。

「・・・あなたはママが好きなの?」

「もちろん、大好きよ!世界で一番のママだもん!」

その言葉を聞いて心琴は顔をしかめた。

「・・・でも、あなたのママは・・・あなたの事が好きじゃないの?」

「・・・え?」

急な質問に桃は首をかしげる。

質問の真意がわからないようだった。

「だって、ママに怯えてたじゃん。」

「あ・・・!?」

そういわれて桃はドキッとした。

「・・・命令に背くとどうなるの?」

「あ・・・ママはね・・・怒ると・・・ぶつんだ。何回も何回もぼこぼこになるまで・・・。」

思い出したかのように桃の目は恐怖で染まっている。

「・・・ひどい・・・。桃ちゃん・・・可哀そう・・・。」

心琴は桃の手をそっと握った。

桃はびっくりしてその手を振り払う。

「でも!でも!!それはきっと私を思ってくれてるからだもん!ママは世界で一番私の事が好きだもん!」

取り繕ったように、桃は言う。

「っていうか!!そんな話つまんないよ!!せっかくのお楽しみタイムなのに!!」

「!!!」

桃の目はすっかり元に戻っていた。

「ねぇ、心琴ちゃん?私の為に・・・鳴いてよ。」

さっきのとは比べ物にならない静電気ボールが桃の手に現れる。

「い・・・いや・・・!!」

「大丈夫だよ。これは痛いだけだから。あとでいっぱい血まみれにしてあげるからね。」

心琴は三上を見た。

体中小さな切り傷が数えきれないほどある。

「三上も・・・そうやって傷つけたの?」

「きゃはっ!痛がる人の顔・・・最高なんだもん!!!」


ーバチン!!!!


「きゃぁ!!!!!」

静電気が流れた瞬間ハンマーで殴られたかの衝撃が心琴の体を駆け巡った。

「心琴ちゃん!!!」

「心琴お姉ちゃん!!!」

心琴もエリも名前を呼ぶが、返事はない。

「あぐっ!!!ああああ!!」

木霊してくるのは心琴の悲痛な叫び声と

「きゃはっ!!いいねぇ!!心琴ちゃん最高!!」

桃の喜びに満ちる声。

「や、やめてっ!!ああぁぁ!!!!」

「やめなぁい。今度はこういうのどうかな?」

「いやあああああああああああああ!!!!!」

見えない位置心琴のから聞こえてくる悲鳴にエリと朱夏は肩を震わすことしかできなかった。


◇◇


時刻は夜7時。

朱夏のSOSからもう3時間が経過していた。

最初の2時間は返事を待った。

けれども本格的に心配になり二人は意を決して病院を抜け出したのだ。

病院から朱夏の家までは普段なら30分前後で到着する。

飛び出したのは良いけど車などはなく、幽体離脱事件のせいでタクシーなどもいなかった。

仕方がなく体がボロボロの二人組は1時間かけて朱夏の家まで歩いたのだった。

「やばい。最早つらいよ。」

倦怠感に加え腹の傷も痛んできていた。

「弱音吐いてんじゃねぇよ!あれから一回も返事が来てない。真面目な話、命に関わるんだぞ?」

「わ・・・わかってるよ・・・。」

心琴の事が心配で心配でしょうがない鷲一に海馬は気圧される。

「も、もし心琴になにかあったら・・・俺どうすればいいんだ!?」

「落ち着けって!まずは状況確認だ。」

玄関に到着した二人はインターホンを鳴らす。


ピンポンピンポンピンポン!!


騒音並みの呼び出し音が朱夏の豪邸に鳴り響いた。

「な、なんですか!!」

あまりの煩さに丸尾が飛び出してきた。

「あんたは、確か?」

鷲一は首を傾げる。

「丸尾です。」

ボディガードの丸い方の丸尾は少し怒りながら自己紹介をする。

「丸尾さん。朱夏からこんなメッセージが届いたんだ。」

「へ?」

見るとエリの場所を知らせる信号が海馬に届いていた。

「あれ?何で僕じゃなくて海馬坊ちゃんに?」

「ぼ、坊ちゃん!?ぶふっ!」

海馬とは昔からの知り合いだ。

丸尾からしたら海馬は未だに坊ちゃんなのだろう。

「馬鹿いちは黙っててくれないか?」

じとっとした目で鷲一を見る。

「こ、これ。いつ来ました?」

落ち着かない様子で海馬に話を聞く。

「昼の4時頃です。」

丸尾はそれを聞くと言いにくい事を打ち明けるようにこう言った。

「朱夏様のGPS反応が急に途絶えたのと同じ頃だ。」

「なんだって!?」

鷲一と海馬は顔を見合わせた。

「やっぱり何かあったんだ。」

「そこに連れて行って下さい!!お願いします!」

二人は頭を下げた。

「参ったなぁ。」

丸尾は2人の様子にタジタジだったが、流石に一般人を巻き込むのは躊躇われる。

「流石に、松葉杖を着いてる怪我人2人を守れるほど僕は強くない。角田ならまだしも僕は戦闘要因では無いからね。」

そう言われて鷲一は思いっきり松葉杖を投げ捨てた。

「えぇ!?」

「あんたの世話にはならねぇ。俺は俺の事は自分で守る。」

それを見て海馬も松葉杖を投げ捨てた。

「右に同じく。」

「い、いや!松葉杖が無ければ連れて行くってわけじゃ無いよ!?」

丸尾は慌てて手を横に振るが2人が詰め寄る。

「お願いします!!!」

「あんたしか頼れる人がいないんだよ!!」

あまりの切迫感に丸尾は折れた。

「わ、分かった!わかりましたよ、もう!」

丸尾は押しに弱かった。

「ありがとうございます!!」

「恩に切ります!!」

2人はもう一度頭を下げた。

「で、でも条件もある!」

「!?」

丸尾は2人をよく見てこう言う。

「まず、僕は連れて行くだけだ。君たちを下ろしたら一度帰る。全滅したら助けを呼べないし、旦那様に全てを報告する義務がある。」

「分かった。」

「2つ。」

「まだあるのかよ。」

鷲一が文句を垂れる。

「絶対に無理はしないで。君たちに何かあっても朱夏様は悲しむ。」

「あ・・・はい。」

丸尾は優しいおじさんだった。

「さ。行こうか。もう日が暮れそうだ。」

「丸尾さん、ありがとうございます。無理を言って本当ごめんなさい。」

海馬が改めて頭を下げた。

「いいや。君たちが来なければ居場所も分からないままだった。朱夏様を頼んだよ。」

「はい!!」

丸尾は白い軽自動車に乗って戻ってきた。

「僕の車さ。ほら、早く乗って!」

「はい!!」

「あざっす!」

山路に向けて暮れなずむ夕日の中を車は出発するのだった。



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