第12章 探し人
その晩、エリは牢獄で眠りについた。
今宵もエリの悪夢が始まる。
気がつくと森の中に立っていた。
「ここ?どこ!?」
あたりを見渡すと心琴と朱夏と連覇も立ち止まって振り返った。
「エリ!どうしたの!」
「エリちゃん!早く!走って!!」
「車はあっちです!!」
3人が必死で呼びかける。
エリは何がなんだか分からないまま、3人の元へ走り出した。
「待ちなさぁい!」
後ろから桃の声がする。
「・・・。」
何も喋らない死神も走ってくる。
空を見上げると太陽は半分以上隠れていた。
エリは3人の元へ走り抜ける。
体はすでに火照っていて、息も荒い。
ずいぶん走って逃げてきたのだろう。
「あと・・・もう少しです!!」
朱夏が指をさした先に白いワゴン車があった。
しかし、辺りは徐々に暗くなっていく。
「あっ!グッ!」
「きゃぁ!」
突然、朱夏と心琴が倒れる。
「お姉ちゃん達!しっかり!!」
連覇が駆け寄る。
「やっぱり・・・ダメなの!?」
「エリ!!早く逃げよう!!」
連覇はエリの手を引いて走る。
「朱夏お嬢様!!」
「心琴様!!」
車から出てきたのはボディーガードの丸尾と角田だった。
「え!?ここにきて新手なの?もう、ママに怒られちゃうじゃない!」
ももが憤慨する。
「連覇様、エリ様を車へ!」
「わかった!」
連覇に手を引かれて二人は車に乗り込む。
丸尾は朱夏と心琴を抱きかかえ車に走り、角田が桃と死神の相手をする。
角田の拳にはメリケンが装備されている。
「あいつパワータイプみたいじゃなぁい?私殴られるの大っ嫌い!殴るのは好きだけどね!きゃはっ!」
そういうと桃の体からバチバチという音が聞こえてくる。
「な、なんだこれは!?」
桃の髪の毛が逆立つ。
「あなたには・・・これをお見舞いしてあげる!」
桃の目が桃色に光る。
その手には青白い静電気の塊が目に見えるほどのエネルギーとなっている。
「イジェクト・ソウル!!!!!」
電気の塊は角田に向かってすごいスピードで飛んで行った。
角田は避けようとするも間に合わない。
「ぐあああ!!!!」
全身に静電気を浴びたかと思うと、その場に倒れこんだ。
「角田!!!」
車に心琴と朱夏を載せていた丸尾は角田が倒れたのを見て、慌てて駆け寄る。
「あなたにも、プレゼントよぉ!」
駆け寄った丸尾に静電気の塊が投げつけられる。
「う・・・うわあああ!!!」
投げつけられた丸尾も一瞬で倒れてしまった。
そこにゆっくりと歩いてきた死神が静かに能力を発動させる。
「スピリット・リッパー・・・。」
目が赤く光る。
死神の手の釜はぐんぐん空に向かって伸びていく。
質量のない真っ赤な鎌は空のてっぺんまで続いていった。
「間も無く皆既日食よぉ!きゃはっ!」
「・・・死神!!やめて!!」
エリは車の中から叫ぶ。
「わりぃな、D-15。俺様にも・・・守らなきゃいけないものがあるんだ。」
「!!!」
皆既日食が始まった。
街灯も何もない森の中、あたりは暗闇に包まれた。
すると倒れた人の体からわずかな光が見て取れた。
今までは街中だったり、部屋の中だったので光っていることに気がつかなかい僅かな光だ。
「こ・・・これって・・・!?」
エリと連覇は手をつないでいたが、急に泡になって消えていった。
電気を帯びた魂のようなものが空に向かって浮かんでいくのが見えた。
魂は体と紐のようなものでつながっていた。
「これが幽体離脱・・・?ま、まさか!!!」
死神の鎌は町全体を覆い尽くすほどに大きい。
「やめて!!!死神!!!!」
「うりゃあああああああああああ!!!!!」
死神が巨大鎌を振りかざした。
魂と身体をつなぐ糸は綺麗に引き裂かれた。
「ぐあああ!!!!」
「あがっ!!!」
「うぅ!!!!」
「ぅあっ!!!」
倒れているみんなが苦しみ始める。
首をかきむしり泡を吹き白目になって、最終的にはピクリとも動かなくなった。
「そういう・・・事だったの・・・。」
エリは歯を食いしばって2人を睨む。
「どぉ?私たちの連携プレー!最高でしょぉ!?きゃはっ!!」
「わりぃな・・・。恨むならこいつのママを恨めよ。」
こうしてエリの悪夢は覚めていく。
(やっと真相がわかったんだ・・・!絶対に・・・みんなを助ける!!!)
エリは心に強い決意を抱くのだった。
◇◇
土曜日の朝。
朱夏は探索の準備に追われていた。
動きやすいズボンに、虫除けから懐中電灯まで。
もちろん飲料水や非常食をベストに詰める。
そうこうしている内に朱夏の家のチャイムが鳴った。
「おはよう!朱夏ちゃん!」
「レンパも来たよ!」
そこにいたのは連覇と心琴だった。
二人ともジャージや水筒など普段の格好とは違う。
「え!?どうして!?今日、学校じゃ?」
「あはは、病人多すぎて休校だって!」
この町全体を包む幽体離脱事件により学校も商店街も機能していない。
「エリちゃんと三上さん、行方不明なんでしょ?」
「ええ・・・。」
昨晩、事の顛末はみんなのLIVEに書き込んだ。
それを見て心琴も連覇も朱夏の家を訪ねたのだろう。
「エリも三上も無事かしら?」
朱夏は不安な顔をする。
「大丈夫!レンパ、一緒に探すよ!」
元気な小学生に二人は笑顔になった。
「そうですね。ありがとうございます、連覇くん。」
「頑張って探そうね!」
3人は頷きあった。
「・・・心琴ちゃんは大丈夫ですか?」
「うん。なんとか、ね。」
やはり具合は完全に良くなる事はなさそうだった。
両腕に静電気除去のブレスレットをはめている。
「朱夏ちゃんは?大丈夫なの?」
「ええ・・・。多分心琴さんよりは全然楽だと思います。」
昨日静電気を受け取ってしまった朱夏も幽体離脱を経験してしまっていた。
「あんなにたくさんの人が幽体離脱しているなんて思っても見ませんでした。」
「もはや、町全体だよ。早く何とかしなくちゃ・・・!」
自分たちも徐々に体力が削れている。
焦りや不安も募っていた。
「朱夏様!」
突然家の中から丸尾が出てくる。
「これを。」
丸尾が差し出したのは腕時計のような形をした機械だった。
「これは?」
「これは強化GPSです。森や山などあまり電波の飛びにくい場所でも機能します。」
「私の位置がこれでわかるのね?」
「はい。リアルタイムでどこにいるか把握できます。エリ様を見つけた際にはこのボタンを押してください。スマホのアプリから詳細が分かりますのでご確認ください。」
横に小さなボタンがついている。
「わかりました。」
「今回は、敵の陣地に乗り込んだりせず居場所がわかったら帰ってきてくださいね。」
丸尾はしっかりと朱夏の目を見る。
「え、ええ。もちろんです。」
「あなたにまで何かあったら・・・僕ら間違いなく首なんで!」
丸尾の顔は真剣そのものだ。
「あ・・・あはは。大丈夫ですよ。」
はぐらかすように朱夏は少し目をそらした。
「じゃぁ、角田。後はよろしくね。」
「ああ。帰り、遅すぎるようなら支援頼むぞ。」
角田は無愛想にそういった。
「わかってるって。」
丸尾は朗らかに笑うのだった。
「さ、車に乗りな。」
「はい!よろしくお願いします!」
いつものリムジンとは違う、白いワゴン車にみんなで乗り込んだ。
エンジンがかかる。
「いってまいります!」
「はい!お気をつけて!」
朱夏は丸尾に手を振った。




