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第1章 幽体離脱

皆さんこんにちはいもねこです。

前作、「デジャヴ・ドリーム【私、最近、同じ夢ばっかり見るんですけど!?】の続編です。

https://ncode.syosetu.com/n1169gh/


今回もなんとか毎日投稿していけたらいいなと思っています。

最後まで頑張るのでどうぞよろしくお願い致します。

また、気に入っていただけたら評価やコメントも宜しくお願い致します。

挿絵(By みてみん)

例の事件から1週間が経過した。

明日、退院予定の鷲一は病院での最後の夜を迎えている・・・はずだった。

「なぁ、海馬?」

「なんだ。鷲一。」

夜中午前2時過ぎ。

隣の個室で寝ているであろう友人に鷲一は声を掛けた。

「俺らさ・・・。」

「言わないでくれ。今一生懸命現実逃避をしているんだ。」

言いたい事を言おうとすると、海馬は早口で遮った。

顔は青ざめ目を瞑り耳を塞いでいる。

そんな情け無い友人にため息を漏らす。

「おぃ。現実逃避してる場合じゃねぇぞ。」

「わ、分かってはいる。分かってはいるんだ!」

海馬は仕方なさそうにゆっくりと目を開けた。

そこには、「病室で寝ている海馬」がいる。

その海馬から光の紐が「天井に浮かんでいる海馬」につながっていた。

鷲一との会話は「天井に浮かんでいる海馬」がしているのだった。

「なんで僕達、宙に浮かんでいるんだよ!」

涙目で海馬は鷲一に叫ぶ。

隣の病室の鷲一は壁を突き抜けて体の半分だけ海馬の病室に出てきている。

「しらねぇよ!本当にどうなってるんだ?でも、コレってやっぱり・・・」

鷲一は冷静にあたりを見回して納得する。


「幽体離脱って奴じゃね!?」


「言わないでくれぇ!!僕は信じない!信じないからなぁぁ!心霊現象なんて非科学的だ!僕は絶対信じない!」

聞きたくない言葉を聞いて海馬は拒否反応を示す。

「あー、分かった。・・・さては怖いんだな?」

鷲一は意外な海馬の弱点を知りニヤリと笑った。

「ち、違う!断じて違うぞ!違うんだぁぁ!」

海馬の叫び声が夜中の病室に響いた。


こうして、私達の新しい事件は突如勃発したのだった。


◇◇

「おっはよう!」

今日も今日とて元気な心琴の声が鷲一の病室に木霊した。

あの事件以来心琴は毎日お見舞いに来ているのだ。

「おぅ。さっき、海馬の母さんが来て退院の手続きが終わったとこだ。」

鷲一も今日は良い笑顔だ。

「よかった!今日は退院祝いしなくちゃね!」

心琴とびっきりの笑みを浮かべている。

「うっしゃ!俺の家来いよ!初めてだろ。」

「本当!行っても良いの!?」

心琴は顔を赤らめる。

(鷲一と初めてのデートだ!)

内心わくわくが止まらない。

けれど、そんな心琴の期待をあっけなくこの男は裏切る。

「ああ!みんなも誘おう。」

「あ、そ・・・そうだよね!」

いつも通り過ぎる鈍い彼氏に心からガッカリするしかなかった。

「ん?どうした?」

「なんでもないですよーだ。」

明らかにすねた様子に鷲一はようやく気付く。

「・・・もしかして・・・二人きりが良かったのか?そっか。俺ら付き合い始めたんだもんな。」

照れながら鷲一は頭をぼりぼり掻いた。

「・・・ふふっ!実感ないよね!」

心琴も照れながら笑う。

「あのさ、今度・・・ちゃんとデートってのしよう?私も正直詳しくないんだけど、あこがれてるんだよねそういうの。」

変にすねたりしないで今度は素直に鷲一に打ち明ける。

「おぅ!もちろんだ。あー・・・でも何をすればいいんだろうな・・・?」

「さぁ?」

ふたりは首をかしげる。

「ぶぁーっはっはは!!!」

ウブな二人組のとんちんかんな会話がどこかの坊主にはウケたらしい。

部屋の入り口で松葉杖を片手に笑い転げている。

「おいてめぇ。盗み聞きすんなくそ坊主。」

怒って振り向くとそこには先日両親に坊主頭にされたばかりの海馬がいた。

「坊主っていうな!!気にしてるんだから!!」

言われたくないことを言われて少しむくれて言い返す。

「てか、坊主の時くらいピアスやめろよ。マジで怖い人だと思われるぞ?」

坊主でピアスでサングラスでアロハシャツ。

何も知らない人からすれば、チンピラのような風貌だ。

「せめてものファッションなんだよ!・・・もう我慢ならない!今度ウィッグ買って来る!!」

「ウィッグ!?ってズラか!!!あっはっはは!!その年でカツラ!!!あっはっは!!!」

「くっそー!今度笑ったらただじゃおかないからな!!!」

相変わらずこの二人が揃うとうるさい。

こういうのを犬猿の仲というのかもしれないと心琴は思った。

呆れた顔で見守る心琴はそっちのけで二人の会話はエスカレートしていく。

「おぅおぅ、言っとけ言っとけ。今度、幽体離脱した時は声かけねぇからな?」

「ひぃ!あの状況ひとりで耐えろってか!?鬼か!!鬼一だ!!」

「はい?」

心琴は思わず聞き返したが、言い合いは続いた。

「はっはーん。海馬はやっぱりは怪談話とか苦手なんだな。」

「誰だって幽体離脱を経験したら怖くなるだろ普通!!!」

「ちょっと!!ちょっと、まって!?・・・さっきからなんて?」

心琴はいつもの二人のやり取りの間に割って入る。

「幽体離脱?って言った?」

心琴は眉を顰める。

日常会話で「幽体離脱した時」という言葉は聞いたことがない。

「あー・・・ああ。そうなんだ。なんか昨晩、俺と海馬、幽体離脱したんだ。」

「ぼ、僕は信じないぞ。はっきりと体が浮いていたし、変な光る紐で体とつながっていたなんて・・・信じてないんだからな!!!!」

二人はそれぞれの視点から幽体離脱を語ってくる。

「え、ええええええええええ?!?!?!」

もう、驚くしかなった。

「な、なんで?」

冷静に聞き返すが

「さぁ?」

2人は肩をすくめるばかりだった。

「なんだか、いやな予感がするのは私だけかなぁ?」

こういう時の心琴の勘はよく当たる自負がある。

(何も起こらなければいいんだけど・・・。)


-コンコンッ


その時、入口から音がする。

既に空いている扉にノックをしたのは、お嬢様の朱夏と、前回の事件で朱夏の家に保護されたエリだった。

「ふふっ、盛り上がっている所申し訳ありませんが部屋に入ってもいいですか?」

「朱夏ちゃん!!」

いつもながら礼儀正しく美しいふるまいで部屋に入ってきた。

「2人とも来てくれたんだな。ありがとう。」

鷲一はエリの頭をなでる。

「はい。今日退院ですもの。鷲一さん元気になったようで何よりですわ。」

「海馬、鷲一、元気!よかった!」

前回叔父に足をナイフで刺された鷲一の傷口はだいぶ良くなっていた。

思ったよりナイフは深く刺さっていなかった為後遺症もなさそうだった。

「三上に車を手配させましたの。荷物などの移動、大変でしょう?」

「本当か!とても助かる。」

1週間近くの病院生活で、着替えやバスタオル、食器の類などで結構な大荷物になっていた。

「そうだ。これから鷲一の退院祝いでもしようって言ってたの。時間ある?」

心琴はみんなの顔を見た。

「退院いわい!エリいきたい!連覇さそってもいい?」

連覇はエリと同じくらいの年の男の子。

五芒星レンジャーが大好きな元気で明るい子だ。

前回の事件ではエリを最後まで守る勇気ある小さなナイト君でもあった。

「ああ、もちろんだ。」

鷲一も優しく笑った。

そうと決まれば、やることはたくさんあった。

「よし!そしたら、荷物まとめるよ!」

「エリ、連覇に電話してくる。」

「僕は外出許可を取ってくる。」

「私は三上に車を用意していただきますわ。」

「おお!助かる!ありがとう、みんな!」

そういうと各々は一斉に動き出した。

こうして、鷲一の退院祝いパーティーであの時のメンバーが再び集まり始めたのだった。




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