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彩る夜に結ぶ  作者: 浅葱 咲愛
四章 消えた過去
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二十六話 近くて遠い3


「奏さん、今日は何からすれば良いですか?」


「昨日は頑張ったでしょ? 疲れてない? 大丈夫?」


「んー、昨日はよく眠れました。疲れてたのかもしれないけど今日は元気ですよ」


「じゃあ昨日の続きからやってみようか」


どうせ今日も結は陸様達に囲まれて忙しそうにしている。それに今日は星くんも手伝いに連れて行かれてしまった。瑠璃も家の人が来たせいで今までのように遊べない。


「はーい」


結果、奏さんと二人で過ごすのが一番だ。


「いきますよ!」


手を川の方へ向ける。そしてイメージする。水の粒が集まっていってまるくなって・・


「大きくなぁれ!」


「! すごいよ!」


目の前には透明で大きな水の球が浮かんでいる。


「二日目でここまでの大きさの球を作れるのはすごいと思う。一つ言うなら、口に出さずにできるようになるともっといいね」


口に出した方がイメージしやすく、今はこれだけの形にするには言葉に出すしかない。


「じゃあ、次はそれを小さくしてみて」


「小さく? ぎゅっと潰して小さくする感じですか?」


大きいのを小さく・・


「彩夜ちゃん、ちゃんと見ながらだよ!」


「え? あ!」


「これじゃあダメかな?」


綺麗な丸だった水の球が大きくなったり小さくなったり生き物のようにふよふよしている。


「生き物みたい・・」


「確かに」


するとその水の塊に目と口が・・・


「可愛いね」


「余計なこと言わないでください!」


しっかりと生き物を思い浮かべてしまった。すると自然とその形になってしまう。


「彩夜ちゃん、言葉に出して良いから小さくして!」


「え、はい」


小さく小さくまとめて・・透明な小さな球? ビー玉のような感じだろうか? 丸く小さく硬く・・・


「小さくなれ」


キュウっと大きな丸が小さくまとまって・・・コロンと地面に落ちた。


「・・どうですか?」


奏さんがその球に近づいてそれを拾う。陽にかざして眺めている。


「綺麗。硬いね。ここまでできるなんてすごいよ」


触ってみてもツルツルで硬い。ぱっと見、ビー玉そのものだ。でもこれよりもさっきの生き物のような形の方がかわいい。


「わあぁ! 彩夜ちゃん、大きくなってる!」


「えっと・・・ビー玉みたいに小さくなあれ!」


あれ? 大きさが変わらない。 どうして?


「どうしたらいいですか?」


「とにかく小さく!」


バシャーン・・・・


「冷たい・・」


「冷えますね」


水の塊は弾けてしまった。おかげで頭からずぶ濡れだ。今日みたいに天気の良い日には冷たくて気持ちいけれど・・


「今日も失敗しましたね」


「着替えに戻ろうか?」


「そうですね」








「彩夜? どうしたの?」


「!」


後ろから結の声が聞こえた気がした。ちゃんと人がいないのを確認して入ってきたのだからきっと気のせいのはず・・・


「彩夜?」


「結・・今休憩?」


気のせいではなかった。どう言い訳をしよう。


「移動中」


確実に怪しんでいる。声が硬い。怒ってる?


「なんでそんなに濡れてるの?」


「・・奏さんと・・・ちょっとだけ水遊びを。こんなに濡れちゃったから着替えに戻ってきたの」


「へー・・川で?」


怪しまれてる。ここは一度逃げよう。


「うん。床濡れちゃうから・・・着替えてくるね」


「え、彩夜、待って!」


聞こえないふりをして近くの空き部屋に逃げ込んだ。








「・・結、着替え終わるのを部屋の前で待ってるのはどうかと思う」


「ここで待ってないとすれ違ったら困る」


「そうだね」


そうかもしれないがそういう問題ではない。いくらなんでも扉に引っ付いて待ってなくてもいいと思う。


近くの柱と同化して話を聞いている流さんを見てみれば呆れた表情をしている。


「えっと・・・何か用? 奏さんのところに戻ろうと思うんだけど」


「おれも行きたい。陸から許可はとった」


本当だろうか? 色々言って逃げてきただけだったり?


「私は夕方まで遊んでくるつもりだよ。どうするの?」


「流がついてくるからいい。二時間くらいは空いてる」


どうやってついてこようとするのを止めようか? 嫌と言ったらこないだろうけれどそんな離し方は嫌だ。


考えていると結に手を触れられた。


「こんなに冷えてる。夏なのにここまで冷えるなんて、楽しいのはわかるけどほどほどにして続きは明日にしたら? 昨日だって遊んできたんだろ?」


力を使うと体が冷えるらしい。それで自然と手が冷たくなっている。これは水を操るからこその現象らしいが・・、それを言ってしまうと練習のことがバレてしまう。


結は私を心配しているだけ。雨に濡れて熱を出したこともある。それを心配しているのだろう。


「彩夜」


結はだんだん不機嫌になっていく。


「わかった。一緒に行こう」


「うん」









「どこまで行くの?」


誰かに見られたら困るからとなかなか人の来ないほど奥の場所で練習をしていた。


「もうちょっと奥だよ」


ただ場所が遠いだけで行く道は平らで歩きやすい。


「こんな道があったんですね。知りませんでした」


「奏さんが自分で作った道だったりして・・」


奏さんならありうる。簡単にこれくらいしてしまいそうだ。


「彩夜ちゃーん、あれ? 結理も連れてきちゃったの?」


「結は勝手に、ついてきたんです。連れてきてなんかないです」


「奏さん、連日の水遊びはやめてください。風邪ひいたらどうするんですか。遊ばせるばっかりじゃなくて宿題させるとかしてください」


結が私の保護者みたいだ。たった一歳しか変わらないのに。


「結、宿題は自分でやってるの! 言われなくてもできる!」


「本当に? ただやるだけじゃなくて終わらせられるペースで進めてる?」


「・・それはその日によるけど・・・ちゃんと終わるように逆算してやってるの。お盆前に終わらせる計算だから大丈夫なの。結こそちゃんと終わりそうなの?」


ここ数日勉強をする暇があるようには見えない。ずっとどこかに出かけている。


「おれは終わらなくても問題ない。親からも宿題出されたから学校のは終わらせるつもりもない。だからいいんだ」


「はいはい、二人とも喧嘩しない。せっかくの休憩時間なんでしょ? 楽しく過ごそうよ。彩夜ちゃんだって本当は嬉しいでしょ?」


姿は見てもただすれ違うだけで言葉を交わすこともない昨日だった。それが寂しくないと言えば嘘になる。わざわざ気にかけてくれるのは確かに嬉しい。同時にほんの少しうるさくて面倒。


「・・結はうるさいから好きじゃない」


「はぁー、流くんは結理をどうにかしてね。私と彩夜ちゃんはさっきの続きをするから」


結が落ち込んでいる。流さんに向かって何かぶつぶつ言っている。でも知ったことではない。うるさいのは本当だからもう少し考えて欲しい。


ただうるさいのが嫌と言っただけなのだからそんなに落ち込まなくてもいいのに。


「流さんが居ますけど見せてもいいんですか?」


「流くんなら他には言わないよ。だから見せてあげて」


「結に見せたくない」


「これ以上は流くんが大変だと思うよ。結理って意外と機嫌が斜めになると簡単には直してくれないんだよ」


私の前では大人のように振る舞うくせに中身はしっかり子供じゃないか。


「結」


「? 帰ったほうがいい?」


「褒めてくれるなら・・昨日から頑張った成果を見せてあげる」


「見せて」


見せたのに褒めてくれなかったらしばらく口を聞かないでおこう。それくらいしてもいいはず。


「見ててね」


川のそばまで行く。さっきも上手くできたからきっとできる。


「彩夜ちゃん、今度は自分の好きな形に作ってごらん」


好きな形? 綺麗な何かを作りたい。水で綺麗なもの。なんだろう?

さっきのような生き物の方が上手く形になるだろうか?


「彩夜、これが?」


気づけば光を反射してキラキラと輝く水が宙に浮いていた。空にたくさん浮かんでいる。


「いい感じだよ」


言葉に出さなくてもできた! ここからは形を変えていけばいいだけだ。


「綺麗・・」


結も浮かぶ水を見つめている。


「見てて、もっと綺麗なもの見せるから」


水族館のようにしてみよう。暗い水族館の中と木々に囲まれたこの場所はよく似ている。


水族館はどんな場所だっただろう? お魚がいっぱいで、水と光を・・


「ね、綺麗でしょう!」


ドームのように空を覆っている水の中で透明のお魚さんたちが生き生きと動いている。お魚だけじゃない。大きなサメやイルカ、ペンギンだって自由に泳ぎまわっている。


「彩夜ちゃん、こんなの初めて見たよ。何も言わないでここまでできるなんてすごいよ。これ以上は疲れるだろうから小さくしてみようか」


「もう終わりですか?」


せっかくここまでできたのだから崩したくない。


「また今度、もっと綺麗なものを作ろう? 今作ったのはここにいるみんなが覚えてるからね。彩夜ちゃんが疲れちゃったら意味がないの」


「はーい」


ぎゅっと丸くして固めて小さくする。それを川の中にポトンと落とす。


弾けさせることなく最後まで上手くできた。


「こんなに早く成長するなんて、早すぎるよー。どう?大丈夫? 体調悪くない?」


奏さんに顔をペタペタ触られる。


「大丈夫です。いい感じに体が冷えてちょうどいいです」


「彩夜! 今のなに?」


私のそばまでやってきた結に肩を掴まれる。


「何って・・・結が火を出せるのと一緒だよ」


「それでこんなに冷えてるの? それってあんまり良くないんじゃない? 隠そうとしてたのもこれが理由?」


「褒めてくれるなら見せるって言ったじゃん! 怒ると思ったから嫌だったの」


「怒ってない。さっきのはすごかった。おれにはとても真似できない」


褒めてくれてるのだろうか?


「結理だって素質はあるんだよ。扱う練習さえすれば彩夜ちゃんよりもすごいことができるようになる」


今は私の方が上手く扱えるのだからこれからも練習さえすればずっと私の方が上手でいられるだろうか? なんだか負けたくない。


「二人は真逆なの。扱う力は炎と水、そして破壊と癒し。逆だからこそある意味近くて相性がいいと思うの」


真逆なのに近い? よくわからないが奏さんがいうならそうなのだろう。


「結理も満足したでしょ? 彩夜ちゃんも今日は終わりにしようか。また明日ね。昨日も言ったけど一人で練習するのは禁止だよ」


「はーい。結、帰ろう」


帰る間くらいは話す時間があるかもしれない。ゆっくり歩けば屋敷まで30分はかかる。何を話そうか? 瑠璃と遊んだ話とかどうだろう?


「彩夜、昨日もここに来てたの?」


私が話し始める前に結が話しかけてきた。


「・・他に行くところ無いじゃん。部屋に一人で留守番しててもつまらない」


「ごめん。もうすぐ片付くから」


そんな顔をしなくてもいいのに。


「私が勝手についてきてるだけだから。奏さんはたくさん教えてくれるから楽しいよ」


どうして隠してしまうのだろう? 笑顔と言葉で繕って後ろに見えないようにしてしまう。そんな時の方が素直に言える時よりも本当は・・・・


「それにね、私はいつ帰ってくるかわからなくてもう来れないかもなんて考えながら結を待ってるよりこっちの方が良い」


「そっか。・・あー、また秋翔くんに怒られるかも」


ここ最近は仲が良さそうに見えていたのに。


「なんで? 何かしたの? お兄ちゃんのお菓子を勝手に食べちゃったとか?」


「秋翔くん、そんなことで怒るの?!」


一緒に暮らすようになって数ヶ月、結もまだ知らないことがあったらしい。


「お兄ちゃんはね、普段はお菓子くらい勝手に食べても怒らないけど一つだけ勝手に食べたらとーっても怒るお菓子があってーーーーー」


「誕生日はそれあげようかな」


「きっと喜ぶよ。それよりいちかちゃんの誕生日が近いの。あげないわけにはいかないでしょ? どうする?」


距離を置いているとはいえ、そういうところは大事だろう。


「光月ちゃんに聞いてみたら? それか彩夜乃ちゃんは? もうすぐ来るんでしょ?」


学校が始まる前、お盆が終わった頃に来ると言っていた。


「なら優斗くんも来るね。よかったね」


「そうだったー、どうしたらいいと思う? 冷たく扱ってはなかったと思うけど弟にあれは酷かったよな・・。いきなり態度変えるのも・・んー、忘れてたってのも言いづらい」


そんなに考えなくても大丈夫だと思うけどなー。


「優斗様は優しいですから大丈夫だと思いますよ」


「流さんもそう思いますよね。優斗くん、お兄ちゃん大好きって感じするよ?」


「そうかな?」


夏休みが終われば結も撮影があるからこちらには来にくくなるはず。何よりみーちゃんや彩夜乃ちゃんとの生活が始まる。きっと楽しくなるだろう。


ちょっとだけ二学期が近づくのが嫌ではなくなった気がした。

読んでいただきありがとうございます。

今回は彩夜が大きく能力を使う回でした。これからどんどん力を使って活躍してくれる予定です。

水が浮かぶ描写はできるだけ頑張ってみましたが伝わってるでしょうか?自由に動く様子が伝わっていたら嬉しいです。

次話も読んでいただけると嬉しいです。

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