二十一話 葵と屋敷13
作者名を変更したいと思います。
詳しくは後書きに書いています。
「結理様、おはようございます」
葉の声がする。もう朝か・・
「おはよう」
とても眠い。外はもう明るい。こんなに遅くまで寝ていたのはいつぶりだろう?
「立ってください」
「んー」
起き上がって葉に言われるがまま動く。頭がぼーっとする。昨日遅くまで考え事をしていたせいだろうか・・。
「! 葉!」
「どうかしましたか?」
葉の手はしっかりとおれの着ている服を掴んでいる。ちょうど服が肩から外されるところで・・
「自分で着替えられるから!」
ぼーっとしていてうっかり幼い頃のようにされるがままになるところだった。
「そうですか」
「おれの服はどこ?」
「あー、洗濯しておきました。ですから着替えはこちらに」
「ありがとう」
誰かのお下がりらしき服。おれにはこれくらいがちょうどいい。
「葉?」
着替え終わって廊下に出ると葉は居らず、代わりに流がいた。
「流、おはよう」
「おはようございます。葉兄様なら別のことをしていますよ。彩夜芽さんのところに行かれますか?」
「うん。もう起きてるんだ」
「一人で部屋を出て早速迷子になったようです。星が見つけてくれたからよかったですが・・」
また迷子になったなんて。あとでもう一度気をつけるように言っておこう。
「彩夜には全部同じ建物に見えるか・・。星って一番下の?」
「はい。星は一番の暇人ですから気づいたのでしょうね」
「彩夜はどこにいる?」
「・・・本当にお気に入りとしか言えませんよね・・。こちらですよ」
おれには葉の独り言は聞こえなかった。
「呼び方は彩夜芽さん・・でいいですか?」
「・・なんでもいいですけど流さん達からはそう呼ばれてます。私はなんと呼べばいいですか? 星様?ですか?」
まだ誰も来ないから二人で話していた。
「様は入りませんよ」
「じゃあ・・星くん?」
「それでいいです」
話し方も柔らかく、顔も小さくて女の子にしか見えない。手だって結みたいに少しゴツゴツした感じはなく私に近い。
「よく女の子と間違えられませんか?」
「残念ながら間違えられます。・・兄達はあんな感じなのに何故か僕だけこんな顔なんですよ。一人だけ気も弱いので兄達からは仕事を任されることもなくて・・」
そんな話をしているとスーッと扉が開いた。
「おはよう」
そこにいたのは結と葉様。
「おはよう。結の方が遅いのって珍しいね」
「また迷子になったって聞いたけど?」
「んー、気のせいだよ」
誤魔化せないのはわかっているけれど言ってみる。隠すよりはこっちの方が怒られずに済むのは経験上わかっている。
「今日もあっちにいくつもりだし・・・」
「結理様、星を彩夜芽さんにつけておきましょうよ」
「いいの? 星だって忙しいんじゃないの?」
「星はこんななのでまだあちらの仕事はできていなくて・・練習にちょうどいいかと思います。いずれ星にも私たちと同じ仕事をやってもらう予定です」
「僕が・・ですか?」
慌てる星くんとそんな星くんをじっと見つめる結。
「・・・え? これが星? 彩夜と身長変わらないような・・弟だったよな?」
星くんはビクッとしたあと逃げるように葉様の後ろに隠れた。
「僕が星です。こんな見た目ですが男です」
「変わらないな・・。相変わらず小さい」
「・・小さい・・・」
結を止めた方が良いだろうか? 星くんが気にしているであろうことをズバズバついている。
「陸達の後ろに隠れなかったらまだ大きく見えるのに」
「・・そうですか? あ、初めまして。僕が星です」
「知ってる。初めましてじゃないし、昔会ったことある。・・覚えてないだろうけど」
あれ? 結は思い出したのかな?
「結理、遅かったな。これからどうする?」
「午前中で残ってることを終わらせたい」
「私も暇ではない。今から外せない用事がある。午後からでいいか?」
「別に陸がいなくてもいける」
今日はどうしようか? 午前中は結と何かしたとして・・午後はどうしよう? 瑠璃ちゃんと外へ行くのは止められるだろう。
「・・・ダメだ。勝手に行くな。あまり眠れなかったのだろう? 部屋でゆっくりしていろ」
「あ、待って。陸ー」
結は陸様を追いかけて外へ行ってしまった。
「彩夜芽さん、結理様って怖いですね」
やっと葉様の影から出てきた星くんがそういった。
「そうかな・・・。結って優しいですよ? さっきの言い方はちょっときつかったと思いますけど、普段はあんな感じではないですよね? 葉様」
どこか星くんに対してよく思っていないところがあるのかもしれない。
「そうですね。偉そうな様子もきつい性格でもありませんから・・こちらのことを考えてくださる良い人ですよ。結理様は今まであまり周りに頼られることなく生きてきたようですから、きっと私たちにすぐに頼る星にイラッとしたのでしょう」
「私だって周りに頼ってばかりですよ?」
「彩夜芽さんは特別でしょうね。・・・星もそのうちわかるようになりますよ。あの方なら仕えてもいいと思えます」
つかえる? 使える? どの字だろう?
「そういえば・・兄上、昨日からうちにいるあの犬はなんですか?」
「あれは彩夜芽さんが連れてきたんですよ。そうです、星。もう一人お客様がいらっしゃるんです。彩夜芽さんと同い年の瑠璃さん。その方のことも見ていてくださいね」
「え? 僕が一人でですか?」
「瑠璃は私よりしっかりしてるから大丈夫だと思いますよ」
私は迷惑をかける自信があるけれど。
「彩夜ー、まるのところに行かない? 馬もいるよ?」
「いく」
馬はあまり近くで見たことがない。犬よりも馬の方が私には可愛く見える。
「あとね、結、私・・・建物見たい。こんな古くてちゃんとした建物見る機会ないから」
「あー、そういうの好きだったね。ならあとでもっと豪華な建物も見にいく? 色々細かいところまで飾りがあるよ?」
「行きたい!」
テレビでそういうのを紹介している番組は好きでよく見ている。けれど実物は近くにないから見たことがない。2年生になったらある修学旅行は歴史的な場所を回るはず。だからそういうものを見るのを楽しみにしている。
「星もついてくるか?」
「はい」
「ねえ結、瑠璃のこと知らない?」
「部屋にいるんじゃない? 呼びに行く? あ・・瑠璃さんはそんなタイプじゃないか」
そうだ。瑠璃はお姫様のような子だからきっと建物を見たって楽しくないだろう。瑠璃って何が好きなんだろう? 昨日は山で楽しそうにしていたけれど・・。
「でも動物は好きそうだったよ。でもこっちの人って馬は見慣れてるのかな・・。そしたら瑠璃はつまらないだろうし・・」
「あとで街にでも遊びに行こうか」
「街? 目立たないかな?」
「いつもみたいにしていけば大丈夫だよ」
街はどんな場所だろう? 時代劇のような感じだろうか? でもあれは江戸時代設定のものが多いような・・
「あの・・結理様が街に行くなんて・・・」
困ってオロオロしている星くん。
「昔からよく勝手に抜け出して街には行ってたから大丈夫だって。陸には怒られ慣れてるんだ」
「それってそんな自信たっぷりに言う事?」
「怒った陸はとにかく怖いんだって。何度泣かされたことか・・」
結が怒られて泣くなんて想像できない。その頃の結はとても可愛かっただろう。
「え・・・でも・・」
「陸に星はおれが連れ出したって言うから。星もいくだろ? 街なんてあんまり行ったことなさそうだし」
「い・・行きます」
「星は瑠璃さんに伝えておいて。瑠璃さんの準備ができるまでおれたちはその辺りをフラフラしてくるから」
手を引かれて外に出る。まだ朝だけれど日差しは暑い。
「良い天気だね」
「うん」
・ ・ ・
「陸兄様」
早足で廊下を歩いていく兄達に声をかけた。ずいぶん前から探していたけれどなかなか見つからずやっと見つけた。
「流・・、なんだ?」
「どこへ行かれるんですか? 結理様は?」
「先に仕事を片付ける。あれのことなら・・午前中は自由にさせることにした」
「陸兄様って弟よりも結理様の方が可愛がっていますよね?」
怖い目で睨まれてスーッと顔を逸らす。
「葉兄様だって・・、仕事だからってだけではないですよね?」
自分が物心ついた頃には兄達はこうだった。
「最初はなんで自分があんな子供のご機嫌取りをしなきゃいけないんだと思った。でも・・実際会ってみたら成り代わっている別人でそれに2歳も上を演じていた」
「そうですね」
その事は最近知ったばかりだ。当時はなんの疑問も持たなかった。
「ある時ついつい怒ってしまってな・・、作った表情しか見せなかった結理が初めてそのままの顔を見せてくれたんだ。それからは甘えてくるは悪戯するはで大変だったが、色々と思ってこの方になら仕えて良いと思えた」
それはなんとなくわかる気がする。結理様なら良い主になるだろうと思ってしまう
「それに、あんなに頑張っている方を見たら手を貸さずにはいられないでしょう。結理様は不器用ですから手助けしないと空回りしてしまいます」
「三人兄弟の中でも一人違ったからな」
「できればこのまま戻ってきてほしいですね。他の方になんて仕えたくありません」
「私もそう思う」
まさか兄達が結理様を引き戻そうとしているのが個人的な理由だったとは。
「そしてお気に入りがあの少女だろう。あれは将来が楽しみだ」
「大物になりそうですよね。結理様の隣に堂々と並ぶくらいに」
彩夜芽さんは見た目こそ変わっているが中身は普通の少女だ。気も弱そうに見えるけれどどのあたりが大物になりそうなのだろう?
「うまくいって欲しいですよね」
「誰も邪魔しなければ二人は結ばれるだろう」
「少し探ってみましょうか」
「恋愛相談なんてしてくれるか?」
「あの結理様なら他に頼れず聞いてくるかもしれませんよ」
楽しそうに話しながら兄達は渡り廊下を渡っていってしまう。
「兄様ー! 星はどうするんですか?」
「放っておいて良いですよー」
「なんとなく見ておいてくれたらそれでいい」
「えー・・」
そんな適当なことを言われても。
兄達に逆らえず、結理様の勢いも止められない。そんな私は今日も振り回されるのだった。
読んでいただきありがとうございます。
今回のお話は書くのが速く進みました。動きのある回になったと思います。次のお話も早く投稿できそうです。
作者名の変更の件ですが浅葱咲愛にしたいと思います。
次の投稿の時に変える予定です。
次話も読んでいただけると嬉しいです。




