十九話 葵と屋敷9
投稿が遅くなってしまいました。
「どう? 触れそう?」
黒い犬に手を伸ばす瑠璃に聞いてみる。私にはこの犬の仕草は可愛いけれど大きくてちょっと怖い。
「・・思ったよりふわふわしてない」
瑠璃にフサフサと触られているのに真っ黒の犬は大人しく触られている。
「彩夜も触ってみる? この子大人しいよ」
「ちょっとだけ」
一歩近づいて、手を伸ばした。
「ふさふさ?」
『がうー!』
「!!」
急に真っ黒の犬が動いた。飛び跳ねて立ち上がって、威嚇するようにこっちを睨んでいる。
「私の触り方が悪かったのかな?」
「優しく触ってたよね? 私の時とあんまり変わらないように見えたけど? そんなに威嚇しないで、嫌だったならごめんね」
『があぁーう!』
怒らせたらしい。
「どうしよう?」
また襲ってきそうな雰囲気がある。逃げたほうがいいのかな? でも怒らせたのは私だから・・
「瑠璃、きっと精霊さんたちが困っているのってあれのせいだよね?」
「多分」
「そんなに悪い犬に見える?」
「私にはとっても可愛く見える」
・ ・ ・
「結理くん!」
いつもの突然する声。どうして奏さんは普通に出て来れないのだろう?
「奏様、結理様がいつもすみません」
陸達が奏さんに対して低く出ているところを実際に見ると奏様の立場がとても上なのを実感する。
「私が勝手に面倒見てるんだから気にしないで」
「奏さん、明日も送ってもらえますか?」
「そのことなんだけど、一ノ宮家って部屋余ってるよね?」
この流れはもしかして・・・
「そうですね。結理だって屋敷に泊まりたくなくてもうちならいいだろう」
「陸、嫌だ! 泊まりたくない。帰る!」
ここに長居してしまったらそのまま陸達に流されてあれこれ継ぐための勉強をさせられる気がする。
「結理、ちゃんと彩夜ちゃん達も連れてくるからどう? どうせあの家壊れちゃったし、村長の娘の・・なんとかちゃんの家行くしかないでしょ?」
それならいいかな? 明日もここにくるのは奏さんにも迷惑がかかる。
「あと、お客さんが来てるからその子も一緒に泊めてあげてくれない?」
「客? 流に?」
「お客さんといっても拾って来た感じで、彩夜ちゃんと仲良くなってるの。だからどうかなって」
奏さんの説明はいつものようにざっくりで・・
「客って具体的には・・」
「迷子だね。もしくは家出してきた女の子だよ。でもそんなこと気にしない彩夜ちゃんと仲良くなって今は二人で遊びに行ってる。そんな子までいるならこっちの方がいいでしょう?」
「家出ですか・・・奏様、そのお客様のことを詳しく教えていただいてもいいでしょうか?」
葉が難しい顔をしている。何かあるんだろうか?
「私は何も知らないから実際にその子と会ってから話してみて。あと・・彩夜ちゃん達が萎縮するといけないから一ノ宮家の立場は隠して伝えるよ?」
「わかりました」
「準備お願いね。結理のことも。私は三人を連れてくるから」
「はい。奏様、よろしくお願いします」
・ ・ ・
「瑠璃、私もう少し近づいてみる! だからここで待ってて」
もう日が傾いてきている。そろそろ帰らないといけない。この犬にも近づいてみたら何かわかるかもしれない。
「私も!」
「瑠璃が怪我とかしたら私が困るもん」
「彩夜は?」
「大丈夫だって。さっきだって何かが周りを覆ってなんともなかったでしょ?」
「うん」
黒い犬に目を向ける。なぜかさっきよりももやの状態に近づいている気がする。
「どうして襲ってくるの?」
『ガァー!』
「言葉は通じてるのかな?」
少しずつ近づいていく。でも何かされそうな気配はない。
「嫌だったならごめんね。でも・・どうしてそんなに黒いの?」
『ガァーウ!』
またもやに近づいていく。もう犬の形には見えない。
「あなたは誰?」
「彩夜!」
遠くから瑠璃のさけぶ声が聞こえる。なんだろう?
「っ!」
突然、体に強い衝撃がきた。急なことで息が詰まる。
「はあー・・・遊んで欲しいの?」
思いっきりもやの手に潰されたらしい。しっかり倒れてしまったから打ってしまった背中が痛い。
『くうー』
なんかさっきまでよりも可愛い声を出している。もしかして当たってる? よく見れば見えなくなっていた三角の耳が見えるようになっている。
「重いな・・」
潰すのはやめてくれないらしい。本当に潰すつもりはないのか私が感じているのは重いな・・くらいだ。
「ねえ、どうして真っ黒になってるの? 元はそんな色でないんでしょう?」
近所にいる目に見えない者達がいっていた。黒いのは危ない。良くない暗い感情から変わってしまったものが黒い生物らしい。
実際に見たのはこれが初めて。どこがそんなに危ないのだろう?
「元に戻れる? 悪さするのはやめてくれる?」
私を押さえている黒い手に触れる。
『クーン』
頭の中にたくさんの映像が流れ込んできた。このこの記憶なのかな?
ふわふわの子犬。丸っこい。日本の犬には見えない。こんな犬をテレビで見たことがある。確か、ポメラニアン?
でもポメラニアンは外国の犬のはずだ。なんで日本に? 船に乗ってきたのかな? この時代って貿易してたっけ?
「あなたはまる。よろしくね」
次に出てきたのは幼い女の子。鮮やかな服を着ていてちゃんとした庭のある場所に立っている。お姫様に飼われていたのかな?
「まる、こっちよ」
花のように笑う少女をその少女にかけていくポメラニアン。
季節が移り変わっていく。それと同時にだんだん少女も成長していく。
「まる・・」
まるを抱えられるくらいに大きくなった少女はまる抱えてどこかを歩いていた。
「じゃあね」
まるを置いて来た道を戻っていく。
「クー」
まるは追いかけて・・
「来ないで! ・・あなたなんかいらないの!」
そうして置いて行かれた。これがまるの記憶。
「・・あなた、まるって言うんだね」
『クー』
「まる、まだ生きてるの?」
生きていれば元に戻って欲しい。すでになくなっているなら成仏してほしい。
『クーん』
「んー、犬語はわからないなー」
でもさっきよりも大きさが小さくなっていて姿もはっきりポメラニアンになっている。
「彩夜、何したの? ぱあーってなってギュッてなったんだよ!」
「わかんない。ねえ、この犬、まるっていうみたいなんだけどどうしたらいいかな?」
「どうするって?」
とりあえず、まるの下から這い出て・・
「彩夜、まるに小さくなってもらうのは? 犬ならある程度言ったらできるでしょ? お座りとか待てみたいにして」
「ねえ・・瑠璃、まるに触ってみて」
まるの大きな足に抱きつくようにくっつく。
「トクトクって聞こえない?」
「・・聞こえる。それにあったかいね」
幽霊は冷たくてトクトクと音もしないはずだからきっと生きてるんだ。
「飼い主に捨てられて黒くなちゃったの?」
「クー」
「でも・・事情があったのかもね。あの女の子、まるの事大事にしているように見えたよ」
捨てるのはダメなことだけれど、まるの飼い主は子供だった。子供にはどうにもできないこともある。
「・・私もね、置いてきちゃったんだ・・」
「瑠璃?」
「私が飼っているのは犬じゃないけどね。旅には連れて来れないから置いてきたの。連れてきてもご飯をあげられないから。誰かお世話してくれてるといいけれど」
「クーん」
「だから・・・あなたのためを思って置いていったのかもね」
真っ黒だったまるはゆっくりと灰色から白へ、そして小さくなっていった。
読んでいただきありがとうございます。
今回は彩夜と瑠璃とまるのお話です。まるは突然湧いて出てきたので書くのが難しく遅くなってしまいました。
でも出てきたことで元の案よりいいものになりそうなのでよかったです。
しばらく投稿が遅くなりそうです。
次話も読んでいただけると嬉しいです。




