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彩る夜に結ぶ  作者: 浅葱 咲愛
四章 消えた過去
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十七話 葵と屋敷7

今日で最初の投稿から2年です。いつも読んでくださってありがとうございます!



「洞窟ってここなの?」


瑠璃は楽しそうにちょっと離れたところから洞窟を覗き込んでいる。


「そう。洞窟っていうほど深く無いけどね」


「こういうとこ初めて来た」


ここは不思議な空気の場所だ。現代とつながる道があるからだろうか?


「中に入ってみる?」


多分、地面に描かれた模様に触れなければ入っても大丈夫だろう。


「涼しいね」


「本当だ・・」


暑くなってから昼間に来たことがなかったから気づかなかった。


「少し休んで行かない? 私、あまり外には出たことがないから外は暑くて・・」


「えっと・・これ、飲んでみる?」


家から梅の蜂蜜漬けの汁を水で割って持って来ていた。暑い夏にはちょうどいい。


梅と蜂蜜ならこの時代でもあるはずだからあげてもいいだろう。


「・・甘くて美味しいね」


「梅の部分も美味しいんだけど今回は飲み物として持ってきてたから無くて・・」


うちには梅の木があるから毎年家で漬けている。これは確か去年なった梅からできていたはずだ。


「やっぱり違うんだね」


「? 何が違うの?」


「ううん。なんでもない。これ、飲んだこと無くて・・とってもおいしいから何が違うんだろうなって思っただけだよ」


疲れてるのかな? 今まで外に出ることがあまりなかったなら早めに帰ったほうがいいかもしれない。


「休憩終わったら帰らない?」


「もう少しだけ・・だめかな?」


「瑠璃が疲れてないならいいけど、帰りも同じ距離を歩かないといけないから疲れる前に言ってね」


「うん」


そうだ。帰りも同じ距離を歩く。やっぱり何か忘れている気がする。でもそれが何か思い出せない。


「瑠璃、流さんに何を言われてたっけ?」


「バラバラで行動しない。あと・・危ないところには行かない、だったかな?」


「そうだよね」


でも何か引っ掛かるのは・・・


「! もしかして、吊り橋って危ない場所に入るかな?」


危ない場所を通ってしまったのが引っかかっていたのかもしれない。他に思い当たることがないからきっとそうだ。


「でも渡ってしまったものは仕方ないでしょう? 次の場所に行きましょう!」


それもそうだ。もしバレて怒られたらその時に謝ろう。


「でも・・この先にはあまり行ったことが無くて」


「そうなの? なら、行ってみましょう。いい場所が見つかるかも」


ここから先は私も行ったことがない。ちょっと怖くもあるけれどそれ以上にワクワクした。








     ・       ・       ・






「落ち着いたか?」


「うん。ごめん。ありがとう」


過去を受け入れられれば思い出す。奏さんはそう言っていた。


「どうして・あんなことを忘れてたのかな?」


「当時の結理様にはとても受け入れられるようなことでは無かったからだと思いますよ」


優理は目の前で連れて行かれた。怖くて何もできなかった。

優斗は目の前で下に落ちていった。手を伸ばしたけれど届かなかった。


そうして二人の兄弟はいなくなっていった。


あれが事実だ。今まで何度かその光景を夢でみた気がする。怖い夢だと思ってそのたびに考えないようにしていた。


「ずっと自分のせいだと言ってたからな」


「そうだね」


受け入れるしかない。もう逃げていたらダメな気がする。思い出したらついでに一つ気づいてしまった。


「悪いことしたんだ。優斗に」


「でも昔のことでしょう? 優斗様にとって結理様はとても良い兄でしたよ」


「違うんだ」


優斗は今でも全く変わっていない。昔と変わらず後ろをついてきていた。間違いなくあれは優斗だ。


妙に慕ってついてくるからなんだろうと思っていたけれど本当の弟だったなんて・・。


「この前、会ったんだよ。優斗は生きてたんだ」


あの日確かに崖の下に落ちていった。下は確か地面だったと思う。その場所を大人に伝えてもちろん捜索が行われたけれど何もなぜか見つからなかった。


「どこで会った!」


「・・遠いところ。なんでそこにいるのかは・・優斗のことをおれが覚えてなかったから聞いてないけれど元気にしてた」


「間違いないんですね?」


「でも、知らないって言っちゃって・・・あんなに小さい時に別れた優斗は覚えててくれたのに」


優斗は当時6歳になっていたかどうかくらいの年だった。それ以来もちろん会うことは無かったのに優斗ははっきりおれのことを覚えてくれていた。


「よかった。結理だけじゃなくて優斗まで生きてくれてたなんて・・本当に」


陸が独り言のように呟いた。陸らしくない。


「主従関係なんて無しに私たちにとって結理様方は大事な存在だったんですよ。それをわかってください」


「ありがとう」


そういえば、勝手に街に出て帰りが遅くなればいつも探しにきてくれた。陸達も勝手に出てきたらしくてみんなで怒られたこともあった。


「今度会ったらちゃんと謝る。優斗は許してくれるかな? また・・一緒にいられるかな」


「きっと大丈夫ですよ」


不思議なものだ。彩夜達双子とおれたち兄弟は別の場所でそれぞれ出会った。時代を超えて。どうして優斗があっちにいるのかはわからない。でもある意味運命なのだろうか?


「優理にも会いたいな」


「そのことなんだが・・・優理は・・生きている可能性が高い」


「本当!」


良い話のはずなのに陸は難しい顔をしている。


「ただ、あくまで可能性の話だ」


「どうしてそう思ったの?」


陸が適当なことをいうはずがない。おれに希望を持たせるためにそんなことをいうはずもない。


「ここだけの話だ。誘拐事件の少し前から優理の様子はおかしかった。怖がっていたはずの私にまでわざわざ会いにきて、結理と優斗をよろしくと・・どうしたのか聞いてみたら二人が危なっかしいからと誤魔化された」


聞いたことの無かった話だ。


「私のところにも来ましたね。そして・・居なくなった後、異様に探すのに派遣された人数が少なかったんです。当時はそんなものかと思いましたが今思えばおかしいと思います」


「それと、すぐに捜索が終わったな。父にも聞いてみたことはあったが誤魔化された。だから、絶対に他に聞くな」


「わかった」


おれとしては可能性があるならそれでいい。元から大人に頼るつもりはない。


「最初に書いてあった双子っておれと優理のこと?」


「そうだ」


「・・優理とは本当の双子だと思ってる」


「優理様と結理様、杏様と華鈴様、続けて双子なんて普通あり得ませんからね」


確か同じように変わった容姿をしていたと思う。おれ達が他所の子なのは確かだろうから居たはずの色葉家の子はどこにいったのだろう?


「大人って秘密が多いですよねー。そんな大人にはなりたくない」


「陸、葉、その・・優斗と会いたい?」


「まあ、それはもちろん」


「できるだけここには連れてきたくないけれど、二人になら会わせる。今度会ったときに話してみるから」


優斗を守ってと遠い昔に言われた。優斗は本人が望まない限りこの時代には関わらせないでおこう。


「ありがとうございます」


見つけた事実はまだ一つだ。次に探すのは本当の親は誰なのか。


「次はどうしたら見つけられるかな?」


「そろそろ夕方ですよ。明日にしては?」


「彩夜に帰るからって言ってるから」


「彩夜・・というのは誰だ? 言いたくないなら別に良いが・・」


陸に隠していたってすぐにバレる気がする。


「おれの大事な人」


「女性・・ですよね?」


「・・うん」


大事な人、それが一番合っている説明だと思う。


「後の結理様の奥方でしょうか?」


葉がからかうように言ってくる。


「それはない」


まだこの歳だし、そんなことを考えたことも無かったけれど・・・ちょっと想像してみても無いなと思った。


「一方的なんだ。これからもし受け入れてくれたってここに連れてくるつもりはない。そもそもおれは継ぐ気なんてないから!」


「そうだったな。でもどうして?」


継ぐ気はなくても逃げられない。足掻いたって手のひらの上で転がされる気がする。


「彩夜にこんな場所はつまらないと思う」


彩夜が自由と楽しいを好んでいるのはよくわかる。好きなことはとても集中しているけれど嫌いなことは全くと言って良いほどできない。そんな彩夜にはここは鳥籠と一緒だろう。


「今日は帰ってまた明日来るつもりですか?」


「うん」


「ここまで来るのは大変だろう?」


「大丈夫。奏さんが送ってくれるから」


「「!!!」」


二人に腕をぐいっと掴まれた。


「今なんと言った? まさか奏様を移動手段に使っているのか?」


「冗談ですよね? そんな怖いことは言いませんよね?」


奏さんの立場がわかっていないからどうしてそんなに陸達が怖い顔をしているのかわからない。


「だめ・・だった? 奏さんが連れていくよって言ってくれたんだけど」


「普通断るでしょう」


「だって、昔からお世話になってて・・・できないこととか頼んでたし」


さっきより二人の目が怖い。


「良いですか。あの人には逆らったらダメという方々の代表的な人ですよ」


「明日は奏様の説明からだな」











    ・      ・      ・








「あっちはどう?」


隣を歩く瑠璃に聞いてみる。少し進んだところの分かれ道でふとそう思った。


「うん。行ってみよう!」


勘は大事だ。何かあるかもしれない。


「! 彩夜、みて!」


「わあぁ!」


目の前にある一際大きな木の周りに蛍のような光がふわふわと飛んでいる。


「綺麗だね」


「うん。あれって森の神様じゃないかな? 私が育ったところではまれに見られるの」


瑠璃はそう言っているけれどあれは精霊だと思う。なんとなく声も聞こえる。でもこんなにたくさんいるのは見たことがない。


「森を大切にしていれば姿を見せてくださるって言われてるの。・・この時期に見たのは初めて」


目に見えない者達のことを教えてくれた人たちもそんなことを言っていた。綺麗な森で大事にされていないと見れない。ある意味森の神様と言っても間違いは無いのかもしれない。


「見れたらその年一年は何も起きないって言われてるの。よかったね」


「何も起きないって?」


「ほら、雨が降らなかったり台風で大変なことになったり自然災害って色々あるでしょう? そんなことになると作物が育たなくて食べ物が減ったりするから」


現代とは違う。無いならどこかから持ってくるなんて簡単にできない。


「そうだね」


「・・見られたらよかったのに」


「見れてるよ?」


「違うの。ここで見れても意味がない。ただ綺麗なだけ」


やっぱり瑠璃は離れた場所から来たのかな?


『だれかな?』

『めずらしいね』

『なにしにきたの?』


ふわふわと光が私達のそばに寄ってくる。


「遊びに来たの。とっても綺麗だね」


「どうしてここにはたくさんいるのですか?」


『ここは居心地がいいの』


『二人ともここの人じゃないね』


ふと瑠璃を見てみればとても悲しそうな顔をしていた。


























いつも読んでいただきありがとうございます。

今回は彩夜と結のお話、どちらも書くことができました。結のお話に区切りがついたので次は瑠璃のお話になっていきます。

今日は二周年なのでできればもう一話投稿する予定です。

これからも読んでくださると嬉しいです。

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