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彩る夜に結ぶ  作者: 浅葱 咲愛
四章 消えた過去
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十六話 葵と屋敷8


「また続きかー」


「あなたが言い出したんですよ」


「やめるか?」


「ううん。ちゃんと見つける」


「なら、もう少しですから頑張りますよ」





     ・      ・      ・






今頃あの少女二人はどうしているだろう。迷子になっていないだろうか?


二人とも抜けているところがあるように見えた。二人で一緒なら大丈夫だろうと行かせたけれど・・今から探しに言ったほうが良いだろうか?


「あれ? 流くん、彩夜ちゃんはどこに行ったの?」


「! 奏様、急に現れるのはやめてください」


「それよりどこにいるの?」


「・・そのことなんですが、奏様達が出ていってから・・・・」


川から少女が流れてきて助けて、二人が仲良くなったことを話した。


「ふーん。それで?」


「遊びに行きたいと言い始めまして・・・なので、二人にちゃんと危ないことはしないように言った上で行かせたのですが・・・」


「そう」


奏様は遠くを見つめて・・・


「今のところ大丈夫みたいだね」


「あの・・結理様は?」


「陸と葉がどうにかしてくれてるから任せてこっちの様子を見にきたの。今日の夜をどこで過ごすか考えないといけないでしょう? 彩夜ちゃん達だけならうちでもよかったんだけど、お客さんがいるならそうは行かないよね」


「そのお客様のことなのですが・・」


あれがごく普通の道に迷った少女である可能性は低い。


「どんな子なの?」


「・・杏様と華鈴様と似た雰囲気をもつ方なのです」


「ふーん、どこから来た子なの? なんとなくわかっているんでしょう?」


「海をみたことがなくて、山の向こうから来たらしいです。そして着ていた服が・・」


干されている羽織を指さした。


「・・・じゃあ、一宮家で泊めてあげたら? みんなまとめて送っていくよ?」


「部屋はありますが」


兄達になんと説明すれば良いのかわからない。彩夜芽さんだけなら結理様のお気に入りと言っておけば良いけれど・・問題は瑠璃だ。


「私からも話はするし、良いでしょ?」


「瑠璃のことはなんと言っておくつもりですか?」


「瑠璃ちゃんって言うんだー。まあ、一宮家に連れて行けば彼女だって隠せなくなって自分から言ってくれるかもよ? そのほうが良いでしょ?」


「勝手に出てきていたんだったらどうしますか? 私達くらいではどうにもできない問題ですよ?」


「そこは結理に任せちゃえば?」


簡単に言わないで欲しい。結理様はやっとのことで家に帰っても良いかなと思ってくれたのに、こんなことを任せたら今度こそ絶対に帰らないと言い出しそうだ。


「それで拗れたら奏様がどうにかしてくださるならいいですよ」


「多分、うまく行くから私の出番はないと思うよ?」


「そうでしょうか?」


「だから、良いでしょう?」


疑問形で返されたってこっちに否定権は無いのに。奏様は結理様よりずっと厄介だ。








      ・        ・        ・






「ここの記録ってどれくらい前のものからあるの?」


まだ、探しているものは見つからない。パラパラと紙めくりつつ聞いた。


「そうですね・・この土地を色葉家が治め始めた頃くらいからでしょうか?」


「何百年も前からだと思うが?」


「・・こんな、紙に一行だけしか残らないような・・記録されて家系図に書かれるだけの存在になりたくない」


陸達に言ってもどうしようもないことなのに。


「なら、なんの存在も記録も残らない存在になるんですか?」


「そっちの方がいいな」


紙に残らなくても自分の思うように進むことができる。縛られてそれから紙に記録が残ったって意味はない。


「そうか」


「考え方次第なんですね」


「だからいらない。なりたくない」


「・・そうか? きっといい当主になると思うが?」


陸がそう言ってくれるのは嬉しい。きっと本心から言っていると思うから。


「どこら辺がそう思うの?」


「いい性格しているからな。うまくやっていけるだろう」


「そうですよ。10歳にもなっていない結理様に散々迷惑をかけられましたからね」


いたずらのことだろう。まだ子供でそこまで迷惑をかけない陸達はいたずらを仕掛けやすく、毎日のように何かしていた気がする。


「それがうまくいくと思う理由なの?」


「そうだ。年上の私達にあんなことをしたんだから、真っ黒の大人相手だってやっていけるだろう」


そう言われればやっていこうと思えばやっていけると思う。でもそれと気持ちの問題は別だから。


「ねえ、見つかりそう?」


「どこにあるんですかね?」


「・・・葉? 何か隠してない?」


「そんなことありませんよ?」


葉が怪しい。じっと見つめるとスーッと目を逸らす。


「なに隠してるの?」


「えっと・・・結理様のことをうちの親に言ってしまいました」


「それだけじゃないよね?」


どうやって聞き出そうか? 口が硬そうだからそう簡単には教えてくれなさそう。


「陸、教えてくれたり・・」


「自分で聞き出せ」


陸もわかっていて知らないふりをしているということだろう。


「結理様、世の中知らない方がいいことだってたくさんありますよ?」


「・・・だから葉は隠してるの?」


「私は、今あなたが気づいていることだけで十分だと思っています」


「おれは知りたい」


「・・あなたはそういう人ですよね。決めたら何を言っても無駄というか」


「だって周りの言う通りにばかりしてたら何も意見が通らない」


陸も葉もここでおれが暮らしていた時から、あれがしたいこれがしたいと言えば大体ダメだと言われてきた。だから何度も言ってみたり勝手に行動したりするようになった気がする。


「・・当時自分が何を言ってたのか覚えてるか?」


「覚えてない」


「この建物の一番上に登ってみたい。雨の日に外に遊びに行きたい、街に行きたい、あと裏山に遊びに行きたい・・だったか?」


子供だったんだからそれくらい許してほしい。


「他にも勉強は嫌、書庫を燃やせばいいんじゃないか、それでもダメならなんとかなんて危ないことまで言ってましたね」


全く覚えてない。書庫を燃やしたくらいでは勉強がなくならないのはわからなかったんだろうか?


「もしかして、記録を隠してたりする?」


「・・・どうでしょうか?」


そういえばこの年の記録が何冊あるのか確認していなかった。


辺りに散らばっている記録の背表紙にはちゃんとその年号だけでなくもう一つ数字が書かれていた。


一つ一つ集めて番号を見る。


「1・・6・・・3・5・・8・・2・・7・・」


棚にも床にもないからこれで全部だ。でも4がない。


「四冊目はどこに隠したの?」


「それも探してください」


葉が先に何かの記録を見つけて隠したんだ。だからいくら探しても見つからないはず。


「葉、ちょっといい?」


「?」


葉をペタペタ触ってみる。着物は意外とものを入れれるところがたくさんあって隠しやすい。


「袖は・・何これ?」


紐と針と糸が出てきた。他にも木の実が一つ。


「何に使うの?」


「木の実はちょうど熟れていたので採ってきました。針と糸がほつれた時に使います。紐は・・便利ですよ?」


ここは危ない人だっている場所だ。そんな人を捕まえた時に使うのかもしれない。


「葉、何をそんなに入れてるの?」


懐を上から触っただけでガチャガチャしている。


「一日中動き回っていることが多いので必要なものは大体ここにしまっていますよ」


でも本らしきものの感覚はない。


「確認しますか?」


「入ってないのはわかるけど、どれだけ入ってるのか見てみたいですです」


「いいですよ」


葉は得意げに次々と物を出して並べてくれる。


筆、紙、短刀、通行書、鍵、


「どうやってそんなに入れてるの!?」


「コツがあるんですよ」


すごい。パッと見ていただけではたくさん入っているのなんてわからない。


「おい、何を遊んでる?」


「陸も何か入れてたりするの?」


「入ってるが・・まだまだ子供だな」


陸が何を入れているのかも見てみたいけれどやめておこう。陸にそんなことを聞いたら怒られそう。


「どこに隠してるの?」


「・・結理様には見つけられないところでしょうか?」


そうやってヒントをくれるところが葉は優しい。


おれには見つけられないけれど葉には隠せるところ。違いは・・・


「! どこに行く気だ!」


ちょっと外に出ようとしているだけだからそんなに慌てなくてもいいのに。


「取ってくるだけだから」


「私達が取ってきますからここにいてください」


「それくらい自分で」


「ダメです。いいですか? 一人で外を歩いてはいけません。ここは外ですからね?」


「それくらいわかるだろう。7年前のあの事件がいい例だ。あんなことはもう無いと思いたいが・・巻き込まれたく無ければ勝手に外に出るな」


おれはここの子じゃないのに。でも外からはそう思われているから仕方ない。


「この格好でもわかる?」


今は陸達とあまり変わらないような格好だ。こんな服を着てる人はここにはたくさんいる。


「結理様くらいの歳の人はこの奥の辺りにはあまりいませんから・・・誰がどこで噂を立てるか分かりません」


「わかった。言うこと聞く」


「それでいい」


「じゃあ、棚の上に隠しているものを取って?」


この部屋でおれが見つけられなくて葉には隠せる場所なんて棚の上しかない。


「・・わかっているなら仕方ないですね。これでいいですか?」


探していた4巻を渡してくれた。やっぱり隠していたらしい。


「ありがとう」


一枚一枚捲りながら見ていく。


「やはり、やめませんか? 結理様のことを思って言っているのですよ?」


「っ・・・」


手から本が落ちる。震えて力が入らない。


「落ち着いてください」


目に手が被せられて真っ暗になる。咄嗟に近くにあった陸の腕を掴んだ。


「ゆっくり息をするんだ。・・だから知らない方がいいと言ったのに」


支えられて言われた通りにする。


「結理は悪くない。あれは事故だ。あの時十分できることをしてくれた」


そうだ。あの後もずっとそうして言い聞かせられた。でも。


「そうです」


記録にはほんの一行ずつだけ、短く書かれていた。


『春、長男 優理(ゆうり) 誘拐される。行方不明。

 秋、三男 優斗 崖から落下。見つからず』


そしておれだけがここに残された。









読んでいただきありがとうございます。

今回は結の話が大半になってしまいましたがやっと区切りのいいところまでいったかと思います。

結の過去に何があったのかは大体想像がついていたかもしれませんが、ようやくはっきりしたと思います。

結の過去探しはもう少し続きそうです。次は彩夜ちゃんの話を多めに書こうと思います。

次話も読んでいただけると嬉しいです。

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