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彩る夜に結ぶ  作者: 浅葱 咲愛
四章 消えた過去
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十二話 葵と屋敷4


「陸兄上!」


一宮兄弟の次男である葉について行くとそこには懐かしい顔があった。


「葉? 騒ぐな」


うわあー、やっぱり陸は怖い。しっかり大人になっているから怖さが増している。


一宮兄弟の長男である陸は確か俺より8歳くらい上だったはず。


昔から大きいなと思っていたけれどあれからさらに成長したらしい。


「とあるお方を連れてきましたよ!」


「?」


「ほら」


葉に押されて陸の前に立たされる。


「・・・陸、久しぶりですね。・・元気でしたか?」


「!」


昔、よく怒られていた。言葉遣いや態度、うるさいなどなど。


気をつけて言ったつもりだったけれどダメなところがあっただろうか?


すると陸はおれのそばにやってきて・・


「陸! そういうのはやめて!」


おれの前で膝をつこうとするのを慌てて止める。


人生の半分を底辺の身分で生きてきたのだからそんなことをされると居心地が悪い。どうしたらいいかわからない。


「よくぞご無事で」


「・・・ここまでなんとか大きくなったから心配しないで。・・ずいぶん大きくなったでしょ」


「いくつになられましたか?」


そんなこと聞かなくても知ってるだろうに。


「・・・14歳かな? でも生まれた月が来てないなら13歳」


きっと陸は本当のことを知っている。


「14歳ですね」


「そうなんだ」


陸はこんなに丁寧な話し方をしていただろうか?


「何月生まれか知ってる?」


「・・・夏だったと思います」


生まれた月は変えられてた。なら他がそのままの確率はとても低い気がする。


残っているのは名前だけ・・・もしかしたらそれすら違うかもしれない。


「何をしに来たのか聞かないの?」


「流から少し聞いています。なので聞くつもりはありません。正直、私もあの方達のしたことはどうかと思っていますので」


「知ってるんだ」


「そうですね。でも、葉はなんとなく覚えているだけで、流は聞いて知っているだけです」


すでにある程度の年だった陸だけ当時の記憶もちゃんとあるということだろうか?


「・・おれは知らないふりをする。だからそれに合わせて欲しい」


「立派になられましたね」


「そうかな?」


陸達が求めるであろうそっちの面は全く成長していない。なのにどこが立派になっているんだろう?


「ねえ、あの・・・母様のそばに居た方で・・おれのそばにいて面倒を見てくれてた、音のする髪飾りをつけてる方。わかる?」


「・・・」


陸と葉は顔を見合わせて眉を顰める。


「覚えてるね? 会いたい」


あの人が一番おれを大事にしてくれた。


「・・今、ここにはいらっしゃいません」


「・・・そっか」


あれから何年も経っている。居ないのだって予想していた。


せめて、どこにいるかわかるだろうか? 覚えてくれているだろうか?


「じゃあ・・あの人達に会わせて」


「はい」








人がたくさんいる場所のはずなのにとても静か。ちゃんとした建物の中だからか昼間なのにあまり明るくない。

周りに陸や他にも人がいるのに、森で一人で居るよりもずっと孤独を感じる。


広い畳の部屋の中心に正座して頭を下げる。


「帰るのが遅くなってしまい申し訳ありませんでした」


声がとても響く。


7年ぶりの再会のはずなのに特に何も思わない。さっき、陸達と再会した時の方が嬉しかった。


昔からこの人たちのことをどう思っていたのか今やっとわかった気がする。


「よく帰った」


「はい」


幼い頃に叩き込まれた礼儀作法を思い出しながら顔を上げる。


高そうな服を着て座っているのは40代くらいのおじさん。多分この人が結理様のお父様。


「それで、話はなんだ?」


嘘でももうちょっと何か言ってくれてもいいのに。


「私には、これからどうして欲しいと思われていますか?」


「継いで欲しい」


真っ直ぐでわかりやすい。


「幼い頃以来教育なんて受けていません。当時教えられていたことでさえうる覚えですが」


「優秀な補佐がいる。それにこれからでも十分間に合う」


陸がいればなんとななるのはわかる。一宮兄弟さえいればきっとおれはお飾りでいいと思う。


「では・・継ぐとすればいつ頃が希望ですか? 私はまだ16歳ですよ」


おれはまだ、背も低くて顔だって大人っぽくは無い。どう見ても16歳には見えないだろう。


今よりもっと体格の差のある幼い頃はどうやって誤魔化していたんだろう? 


2歳も違えば身長はかなり違うはずだから。


「再来年の春には」


中学を卒業する年だ。タイミング的にはちょうどいいと思うけれど・・


「もし、継ぎたくないと言ったら・・」


「言ってもいいが・・・そしたらどうなるかわかっているだろう?」


「はい」


いっそ、また行方不明になってしまおうか?


「お願いします。もう少し考えさせてください。次の春まで」


「・・字は読めるか?」


「はい」


「なら・・・」









「これからどうする?」


廊下を歩いていると陸が懐かしい口調で話してきた。


「今までの話し方は?」


「なんとなく言ってみていただけだ」


「そっちの方が落ち着く」


目的の一つは終わった。でもまだすることはある。


「ねえ、記録庫に入りたいんだけど」


「・・・」


「おれには入る権利、あったよね?」


確かおれが勝手に入ることのできない場所はここの屋敷の中で一箇所だけだ。


「はい」


陸が止めてくるようでも言い返せないくらいに言いくるめて通してもらおう。


「手伝ってくれない? 調べるだけだから、もし知っても言わないから」


「好きにすればいい」


「ありがとう!」


あの陸がこんなにすんなり許してくれるとは思っていなかった。


「あのさ」


「なんですか?」


「どうした?」


「おれっていくつに見える?」


気になっていたことを聞いてみた。やっぱりどうやって誤魔化していたのかだけがわからない。


「・・小さく生まれたと言っておけば納得したんですよ」


「そもそも疑うわけがないだろう」


そんなものなんだろうか?


「まあ、結理様は大人びていらっしゃいましたから」


当時の自分はどんなだっただろう? もう当時のことはあまり覚えていない。


「そうかな?」


考えても知らないことだから答えは出ない。なんとなく道を思い出しつつ記録庫までの道を進んだ。










「うわ・・ここって掃除してる?」


記録を保管する場所だからか中は暗い。夏なのにとても涼しくてついでにからっとしている。


服の袖で口と鼻を覆う。


床から何から埃をかぶっていて開けてちょっと入っただけで埃が舞っている。


「普通は年に一度しか開けませんから」


たくさんの棚にぎっしり並んでいる本。その上にはもちろん埃が溜まっている。


「マスク持ってくればよかった」


「? どうかされましたか?」


「いや、なんでもない」


何百年も未来のことなんて話したらいけない。あるものでどうにかしてから記録を探そう。


「先に掃除させましょうか?」


「頼むくらいなら自分で掃除する。陸達だって外で待ってていい」


「みない間に曲がったな」


「あの頃は素直すぎた」


石がゴロゴロあるような場所で育つ植物は石を避けてどんどん成長していく。ついでにちょっと踏まれたくらいでは枯れたりしない。


「着替えてもいい? こんな上等な服で掃除なんかできない」


「・・それはお下がりだろう」


「そうだけど、十分綺麗」


「下手な格好をされるとこっちが困る。どう思う? この下っ端は絶対入れない場所を薄っぺらく安っぽい服を着た少年がうろついてたら」


怪しい。そして目立つ。


「わかった」


着替えにと持って来ていたおれの服を見たんだろうか?


あれは作ったばかりだし、あの辺の村の基準なら普通かそれよりちょっと上の布なのに。


「20年前から最近までの記録を見たい。どのあたりにあるかわかる?」


教室くらいの広さがある物置だ。全部掃除なんてやってられない。その辺りだけ綺麗にしよう。


「右端の棚だと思う」


「結理様がそんなことをされなくても・・」


「葉、結理様とおれは別だから。その扱い方しないで」


「・・わかりましたよ」


本当は陸のようにタメ口で上から言ってくれてもいいのに葉も流も聞いてくれない。


「早く片付けよう」


袖で口を覆いつつ箒を持って中に入った。






「これくらいでいいかな?」


そのまま居れて床に座れる程度に綺麗になった。


「で、どこにあるの? お母様がここに来た頃の記録」


あの人達のことはあまり知らないからどれくらい前に来たのか知らない。


「それで20年前か?」


「だって・・おれのことなんてしっかり隠されてるだろうから」


周りのことから調べるしかないと思った。


「その辺りだと思います」


「もしかして・・いくつもある?」


よく見れば葉が指を指した本は書かれた年が書いてある。横には同じ数字の書かれたものがいくつか・・


「そのようだな」


一年ずつ確認していくとどれだけの量を見なければいけないか・・


「手伝ってくれる? ほら・・ちゃんと読めるかわからないし・・」


背表紙に書いてある文字だけでもたまにわからないのが混ざっている。


文章になればもっと読めない字があるだろう。


「教えてるのは平仮名片仮名とよく使う漢字だけだ。読めるはずがない」


知らなかった。授業での知らない字は忘れているか、この時代には無い字だと思っていた。


「記録ですから専門的な言葉が多いですよ」


「うっ、・・陸・・葉・・」


やっぱりもう少し勉強は必要かもしれない。


二人とも苦笑して・・


「しょうがないですね」


「全く昔からそうやってすぐに頼ってくる。それだけ自信満々に動くなら最後まで一人でやり遂げたらどうだ?」


「そうだっけ?」


陸は怖いけれどちゃんと聞いてくれる。葉達もそんなかんじだから頼っていた自覚はあるけれどそんなに何か任せていただろうか?


「覚えていないならそのうち聞かせてやる」


「遠慮しておきます」


宙達が言っていた。幼い頃のことは今聞けば恥ずかしいことがたくさんだと。


「いいから探そうよ」


20年前のものは一番上の棚にある。背伸びをすればどうにか届くくらいの棚。


一冊取ってパラパラ眺めてみるけれど・・


「えっと・・表?みたいなのは違うよね?」


「どうでしょうか? なんでも混ぜて閉じてありますからね」


「ちゃんと見ないとダメってこと?」


「そういうことだ」


「え・・」


確認するのには思ったより時間がかかりそうだった。










読んで頂きありがとうございます。

今回は結視点のお話でした。結は目的のためにどんどん動くようです。

結の探しているものは見つかるのでしょうか? これからどうなっていくのでしょうか?

次は彩夜ちゃん視点のお話です。

次話も読んでいただけると嬉しいです。

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