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彩る夜に結ぶ  作者: 浅葱 咲愛
四章 消えた過去
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九話 葵と屋敷1


生い茂った葉っぱが濡れてキラキラと輝いている。まだ朝だから暑さはなく涼しい。


「久しぶりだね」


前に通った道からまたこちらにやってきた。なぜか服が濡れていない。


けれど元々時代を行き来できること自体が不思議だから気にしない。


「昨日雨が降ってたみたいだから滑らないように気をつけて」


「うん」


今は家から出るときに履いてきた普通の運動靴だから多分大丈夫だろう。


「荷物持つよ」


「うん。これを・・わあぁっ!」


つるっと滑って体が傾いた。結が手を伸ばしたけれど間に合わず・・・


「・・だから言ったのに」


濡れた落ち葉がこんなに滑るとは思っていなかった。前に来たときも雨の日に歩いたけれどこんなに滑りやすくなかった気がする。


「この辺りすぐぬかるんで危ないんだ」


「汚れたかな・・洗わないと」


地面についた手はしっかり泥で汚れている。これなら服もきっと汚れている。


「・・この先も滑るから気をつけて。荷物は全部持つから」


「ありがとう」


普段なら自分も持つというところだけれど、今は私が荷物を持ったって汚すだけな気がするからやめておく。


「家はどっち?」


「あっち」


結局家にたどり着くまでに三度転ぶことになった。







しばらく歩くとひっそりと建つ小屋のような家にたどり着き・・


「なんかべちゃってしてる?」


肌も服もいつのまにか湿気っていて気持ち悪い。


「多分、麓から見たらこの辺りに雲があるんじゃないかな?」


「えっと・・水蒸気が上がっていってるあれ?」


雨のあとは山の中腹あたりから上は雲の中にあるように見える。


「雲の中って白くないんだね」


「でも遠くを見たら霧がかかってるように見えない?」


「あ・・本当だね」


「布団なんか干せなさそう。下まで降りるしかないかなー」


そんなことを言いつつ結が家の扉を開けると・・


「うわぁ・・ほこり溜まってる」


私から見ればそこまで溜まっていないように見える。


「蜘蛛の巣はってるね」


「こんなにボロかったっけ?」


「ここまでなかった気がする。蜘蛛の巣効果?」


ちゃんと見てみる。蜘蛛の巣のせいじゃない。


「毎日綺麗にしてたから・・雨漏りもしてる。壁も・・はあー」


暗くてわからなかったけれど壁に穴が空いていて、なぜか天井から光が漏れている。


床にはほこりだけではなくて落ち葉や枝もあり、濡れている。


「そろそろだめかな? 直ると思う?」


「古いの?」


「元々古い物置だったのを住ませてもらってるだけ。最初からぼろぼろだったからできるだけ綺麗にして壊れかけたら直してたんだけど・・」


それも難しいかもしれない。


「・・木が倒れたらどうしようもない」


近くに立っていた大きな木が家の上に倒れている。家自体は潰れてはいないけれどいつ潰れてもおかしくないように見える。


「どうする?」


「友梨の家いく。でも荷物はどうにかしないと」


「入って大丈夫かな?」


「この木、退けれるかな? 切ってバラバラにして・・」


「ノコギリとかで?」


「ノコギリなんてないんだよ。どうしようか・・」


「困ってる?」


後ろから聞こえる明るい声。


「困ってる」


「奏さん、おはようございます」


「おはよー。これ、退けたいの?」


「奏さんができるんですか?」


人ではないようだからもしかしたらとても力持ちなのかもしれないけれど・・


「できるよ。ねー、流くん」


「鍛えてはいるのである程度力はありますが、貴方と一緒にしないでください」


ただの人間の流さんが奏さんより力持ちだったらある意味化け物だと思う。


「どこに動かす? 下に転がしたらいいのかな?」


「流、台風でも来たの?」


「大きいものが何度か来たのであちこちで被害が出ています」


「今年は米が高くなるかな・・」


「その可能性が高いです」


「そこの二人! 危ないから退いてね」


家より上に移動する。


「いくよー!」


奏さんはいつの間にか家根の上に乗っていて両手で大きな木を押すとゴロンっと木は簡単に動いた。


「これでいい?」


「ちゃんと下に落ちてます」


「・・でも、この家には住めないと思うよ」


屋根が凹んでいた。もしかしたら凹んでいるというのは間違っているかもしれない。潰れかかっているようにも見える。


「直して住もうなんて絶対にやめてくださいよ」


「どうしようかな・・」


「それよりどうして戻ってきたの?」


「あ・・流、ちょっといい?」


「はい?」


二人は少し離れたところに移動して行った。


「彩夜ちゃん、久しぶり」


代わりに奏さんが私のそばにやってきた。この前とは違うお面をしている。何個持っているんだろう?


「はい」


「どう? 最近楽しい?」


「楽しいですよ。友達も増えました」


「そっか。よかった。・・服、着替えないとね。転んだの?」


「滑りやすくて・・結がどうして転ばずに歩けるのか不思議です」


「この時期に慣れてるんだよ。ちょっと前まではほんの少し出かけるだけで泥だらけになってたりしたんだけどね」


「ちょっと前ってどれくらい前ですか?」


結は14歳だからちょっと前は10歳くらいのことだろうか? 大人のちょっとと子供の考えるちょっとは違うだろう。10歳の結が泥だらけになるのは想像できない。もっと小さいときかな?


「そうだね・・結理が8歳とか」


「それってちょっとなんですか?」


「私からしたら一年なんて1ヶ月なんて一瞬で、十年くらいちょっとなんだよ」


「・・奏さん、家って簡単に建つものではないですよね?」


「うん」


現代の家に比べてこんなに作りの簡単な家でもノコギリの釘も無い状態では簡単に作れない。


結には外に頼れるのは友梨ちゃんのところくらいだ。でも結はそこに頼るのも嫌がるだろう。


「どうするんだろう・・」


「うちに来る?」


そんな友達の家に来る?みたいに言われても・・・


「近いですか?」


「私が連れていくからすぐに着くよ」


距離のことを聞いたのに移動時間を言われてしまった。


「大きいですか?」


「どうかな? 普通?」


普通がどれくらいかわからないけれど綺麗な着物を着ていて、近づくといい香りのする奏さんが普通の家に住んでいる確率は低い気がする。


「じゃあ・・人ではない人たちがたくさん居たりしますか?」


「たくさんいるよ!」


「・・」


奏さんの家はお化け屋敷かもしれない。きっとぼろぼろでないだけで妖やもしかしたら幽霊もいるかもしれないからきっとそうだ。


「結次第です」


「結理が良いって言ったら来てくれる?」


「・・怖くないところなら」


「怖くないよ?」


もしかして家が潰れたからここに泊まらなくて良い? でも・・


「今日・・ずっとここに居てくれますか?」


「そのつもりだよ。でも、どうして?」


「結が泊まりで出かけるらしくて、私は・・どこに泊まるかはわからないですけど・・・一人の夜は特に怖いので。結には言わないでください」


「そうだよね。ちゃんとそばにいるよ」


ふわっと奏さんが動いた。いつもの香りと違う気がする。でもどこかで知っているような・・


「どうしたんですか!」


「!」


突然、流さんの驚いた声が聞こえた。どうしたのだろう?


「いや・・だから・・・ーーーーーーで・・」


「それはーーーましたけど・・」


「行かせたくない?」


「そうではあーーーーーー。ただ・・ここでの生活をーーーーいるでしょう?」


ところどころしか会話は聞き取れない。


「いくつのーーーーーーにーーで欲しいの?」


「遅くてーーーくらいでしょうか?」


「ちょっと話してーーーつもりだからその間彩夜を見てて」


「ですが、距離もありますし・・」


「なら私が連れて行こうか?」


こそこそ話していた二人がビクッとして振り返った。


「さすが奏様」


「私が連れて行けば一瞬だと思うよ。彩夜ちゃんを置いていくのも心配でしょう?」


「移動方法は?」


「秘密! でも安全だよ」


奏さんは目がいいのは知っていたけれど耳までいいのかな?


「流、行ったら入れてくれると思う?」


聞かれたらだめな会話は終わったのか普通に話し始めた。


「兄達に会えるように書きましょう。それと・・これを持っていってください」


流さんが大きな持っていた荷物を結に渡す。風呂敷に包まれた何か・・に見える。


「これ、良さそうなものに見えるけどいいの?」


「私が昔着ていたものなので気にしないでください。これくらいのものでないと受け取ってくださらないでしょう?」


「連れていくつもりだったのか?」


結の声が冷たい。今日はちょっと寒いからそのせいだろうか?


「気が変わることもあるかもしれないと持ってきていただけです」


「・・わかった」


「ねえ、奏さん。私は流さんとお留守番ってことですか?」


「・・そうなるかな?」


「そうですか」


流さんと居るのも慣れてきたけれどちょっと久しぶりだからどうしたらいいのかわからない。


「数日結理と会えないのと半日くらい流くんとお留守番するのはどっちがいい?」


「半日のお留守番です」


「じゃあ、すぐ帰ってくるから待っててね」


「はーい」


「流、危ないことはしないように見てて」


いつも思うけれどそんなに危ないことはしないのに。


「今日だってもう何回も滑って転けてるし、この時期は動物だって出るかもしれないし、外にも・・」


「ちゃんと見ておきますから」


「もう行くの?」


「早く帰って来たいから」


夕方くらいには帰ってくるんだろうか? ならすることは、家の中をどうにかして、友梨さんのところに行って・・


「じゃあ、移動しようか。着替えるのは後でね」


「はーい。行ってきます」


「行ってらっしゃい」


手を振って見送った。森の奥に行ったようだけれどどうやって移動するんだろう?


「あの・・彩夜芽さん」


「はい?」


流さんはちょっと目を逸らして何かいいたそうにしている。


「早く着替えることはできますか?」


「えっと・・どこで着替えましょうか? 家の中の物を片付けたいのでもう少し後でもいいですか?」


どうせ掃除をしていたら服が汚れそうだから終わってから着替えたい。


「その・・・彩夜芽さんの故郷ではその服は普通なんですか?」


半袖のTシャツにショートパンツ。涼しくて動きやすく、汚してもいいものを選んで着てきた。


「普通だと思いますよ」


「腕も足もそんなに出しているものなんですか?」


そうだった。この時代の服は腕も足もほとんど隠れている。


「この時期ならもっと布面積が少ない格好の人もいますね」


肩が出ていたり、丈が短くお腹が見えている服もある。


「・・そういうものなんですけど・・・着替えた方がいいですか?」


正直、着物は動きにくい。村に行くときは着替えようと思うけれどここにいるのは流さんだけだ。


「・・早く片付けを終わらせましょう」


「はい」









読んでいただきありがとうございます。

今回は久しぶりに奏さんや流さんがでてきました。次のお話は初登場の人たちも何人か出る予定です。

彩夜はまた見る世界を広げて、結もやっと進みはじめます。「葵と屋敷」はそんなお話になっています。これから二人はどこにすすんでいくのでしょうか?

次話も読んでいただけるとうれしいです。


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