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彩る夜に結ぶ  作者: 浅葱 咲愛
四章 消えた過去
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一話 双子1

 

 いつもは真っ暗な森が赤くなっている。森が燃えている訳ではないがどこかで燃えている光がここまで届いている。


 「下に落ちたな」


 「助からないだろう。行くぞ」


 たくさんいた人間はどんどん帰っていく。


 「錵鬨螺(かぐら)、結理は?」


 奏が森の中から出てきて静かに訪ねてきた。


 「川に落ちたらしい」


 「そう」


 上着を脱いで奏に投げ、川へ飛び降りる。


 いくら夜目が効くとはいえ夜の川の中に沈んだ子供を見つけるのは難しい。


 早く見つけなければいけないのに・・。


 「奏、どこにいるかわかるか?」


 「・・・もう少し先の岩に引っかかってる」


 「わかった」


 少し進むと大きな岩があった。でも結理は見当たらない。


 「川の中にいるみたい!」


 川の中に潜ると・・岩の下に引っ掛かるように鮮やかな水色の布が揺れていた。それを掴んで引き上げる。


 簡単に抱えられる小さな体は水に濡れて重くなっている着物が何枚もまとわりついていた。


 水に体温が奪われてつめたくなっている。


 「結理、しっかりしろ」


 軽く背を叩くと・・・


 「ごほっ、ごほっ・・あ・・」


 うっすらと目を開けてちゃんと息をしている。


 「結理、大丈夫だから・・おやすみ」


 術をかけて眠らせた。これでしばらく眠ったままでいてくれる。


 本当はもう少し話したかったけれど仕方ない。


 「どう? 無事?」


 「ちゃんと生きてる。 冷えてるが温めれば大丈夫そうだ」


 上へ上がって小さな着物を脱がせていく。濡れたのを着せたままでは体力も体温もどんどん奪われていく。


 「着替えは?」


 「急いで出てきたから持ってきてない」


 全て乾かして着替えさせたかったが無いならしょうがない。


 一枚だけ着せたままにして残りは干す。


 結理の体は炎を操り近づけて温める。


 「小さいな」


 「双子だからかな?」


 「今いくつだ?」


 「今八歳ってことになってるけど今年七歳」


 結理は自分のことを何も本当のことを知らないだろう。


  




      ・        ・        ・






 「ねえ、どうやってひらくの?」


 ほとんど揺れなくて涼しくて快適な新幹線の中・・


 「なんか適当に触ってたらそうなったよ」


 「だから、こうするんだって」


 「宙、変なのになった!」


 宙の引っ越しは無くなった。おじいちゃん家に住むらしい。だからこれからも今まで通りだ。


 「彩夜ちゃん、勝手に触らないで! そのままにしてて!」


 私たちは新しいスマホと格闘していた。


 「無理、わからない。宙、あとはよろしく」


 「私のもお願い。・・難しいけどなんかいいね。自分専用って」


 ドラマに出ることになり、携帯くらい持ってないと困るからとそれぞれ買ってもらった。


 それで連絡先を交換したりしようと思ったけれど初心者ばかりでうまく行かない。


 「彩夜ちゃん、これはもう少しだから・・ここをこうして」


 「こう?」


 「それで・・」


 「! できた!」


 「彩夜、騒いだらだめ」


 なぜか結は電子機器に慣れていないはずなのに簡単にできてしまう。


 「結理、これってそんなに難しかったっけ?」


 「そんなに難しくないけどな」


 「なんでわかるの?」


 「・・なんでと聞かれても・・それより新幹線ってすごい。こんな乗り物が・・」


 携帯で驚かないのになんで新幹線で驚くんだろうか? 


 「あとどれくらいで着く?」


 「一時間くらい」


 「楽しみだね」


 今回は四人だけで遠い都会まで行かないといけない。本州に行くのも初めてだ。


 「東京ってどんなとこかな?」


 「ビルがいっぱいで人がいっぱい?」


 東京なんでテレビで見るようなイメージしかない。


 「いきなりそんな都会に行って迷子にならないかな?」


 とても楽しみだけれど同じくらい不安もある。


 実際どうなのかは知らないけれど見上げてもちょっとしか空が見えないような場所には山の中以外行ったことがない。


 「彩夜ちゃん、私と手繋いどこうよ。そしたら迷子にならない!」


 「みーちゃん、彩夜ちゃんと二人揃って迷子になるかも? そしたらどうする?」


 「宙と結理くんから離れないから大丈夫! もしものときは電話すればいいんだよね?」


 「宙、四人揃って迷子になったらどうする? 本当の迷子って自分がどこにいるのかもわからないけど? それって電話してどうにかなるかな?」


 「結、そんなこと言うのやめてよ」


 結の言ったことは正しいけれどまだ着いてもいないのだからより不安にするのはやめてほしい。


 「駅に地図って置いてある? 駅って大きいんだよね?」


 「らしいよ」


 「テレビでもやってたりするよね」


 中にお店がたくさんあるとかなんとか新幹線の降りる場所と出口が近ければいいけれど・・。


 「案内の人は出口にいるんだっけ?」


 「駅の人に聞けば出れるかな?」


 「文化祭の巨大迷路より難しいかな?」


 「そんなのだったら出れるわけないよ」


 「巨大迷路ってなに?」


 「ゴールは北ですって教えられてコンパスだけを持って進むの。来年やってみて」


 毎年高校のどこかのクラスがやっているらしい。きっと来年もあるだろう。


 「リタイアも簡単にはできない恐ろしい迷路だよ」


 「お化け屋敷よりも怖いかも」


 ふと窓の外を見るとちょうどトンネルだったらしく自分の顔が写っていた。


 「はあー、他の学校の人もたくさんいるんだよね」


 「顔合わせと説明会だっけ?」


 「また何か言われるかな?」


 髪は一つにまとめて結んでいるけれどそれでも普通に目立ってしまう。


 「結理くんの方が目立つけど・・彩夜ちゃんは暗いところになると余計目立つもんね」


 「髪は黒くできたらいいのに。そしたらあとは目だけ」


 目は濃い青だから髪よりは目立たないはず。


 「あ、お土産何買うか決めた?」


 「決めてない」


 「小学生って何が喜ぶんだろう? やっぱりお菓子かな?」


 「妹ちゃんたちに買うの?」


 「これ以上空気が悪くなるのは嫌だし、お兄ちゃんとおじいちゃん達にだけってダメでしょ?」


 でも都会から引っ越してきたんだっけ? どこから来たのかよく知らない。無難なクッキーとかがいいのかな?


 「俺は兄ちゃんにあれこれ買ってこいって言われた。そもそも売り場を見つけられるかな?」


 「彩夜ちゃん、こそっとお姉ちゃんと秋翔くんにお揃いの何か買って帰らない?」


 「うん! そうしよう」


 

 


 





 「広いね」


 「人多い」


 「どこにいけばいいの?」


 「ここどこ?」


 駅について十分後、早速迷子になっていた。


 「地図はここにあるけど?」


 地図は先生から持たされている。これはドラマの話と一緒に届けられたものらしい。どこで案内の人が待っているかも書いてある。けれど・・


 「ここは何階?」


 「このお店・・・どれのこと?」


 周りと地図を見ながらここがどこなのか考えるけれどわからない。


 「四人がバラバラになったら終わりだな」


 「都会って怖い」


 「中学生にもなって迷子のお知らせされるのやだよー」


 「光月ちゃん、お知らせがあったって迎えに来てくれる人は誰もいないよ」


 移動したいけれどさらに迷ってしまいそうでここから動けない。


 誰に聞けばいいのかもわからない。ずっとここにいてキョロキョロしているのなんて私たちだけだ。


 駅の人は見当たらない。


 「ねえ」


 「あのー」

 

 「「?」」


 後ろから声がして振り向くと中学生らしき人たちが三人そこにいた。


 「新幹線で一緒だったよね?」


 「その・・私たちもどこに行けばいいのかわからなくなってて・・」


 「よかったら一緒に行きませんか?」


 女子二人と男子一人、女子二人の方が強そうだ。


 「多分・・行き先同じですよね?」


 四人で見ていたものと同じ地図を見せられる。


 「本当だ!」


 「よかったー、こんなところ初めてで困っていたんです」


 私たちと同じ状況だったらしい。


 「みなさんはどこから来たんですか?」


 「九州から」


 「私たちは中国地方です」


 「そうなんですか」


 なんかどうにかなる気がしてきた。


 「あの・・この地図読めたんだけど・・」


 ずっと地図とにらめっこしていた結が顔を上げて言った。


 「どうしてわかるの!」


 「昔、もっと複雑な地図を持って探検したことがあって。何度か出られなくなったけど」


 一体どんなところを探検したのだろう? 山の中とかだろうか?


 「早く行こう!」


 「どっちですか?」


 「とりあえず突き当たりまでまっすぐ進んで」


 曲がって進んで下に降りて進んで曲がって次は登って曲がって進んで・・・


 「居たよ! 黄色の旗を持った人!」


 「やったね!」


 みんなで協力しながら進んだおかげで名前も知らない人たちと打ち解けた。


 「すみません、地図みて来たんですけど合ってますか?」


 しっかりしているみーちゃんが旗を持ってる人に聞きに行ってくれた。


 「合ってますよ。よくぞいらっしゃいました。大変だったでしょう?」


 とても迷いました。


 「念のために聞きますけど怪しい人では無いですよね?」


 「各学校からの返信文と各学校の校長先生ののサインです」


 「あ、校長先生の字だ」


 「本当だ」


 字がわかりやすい校長先生でよかった。


 「え、わかるの?」


 「これが校長先生の字?」


 うちの学校の校長先生の字は女子高生が書いたような丸くてかわいい字をしている。


 見た目は雪だるま体型で60近いおじいちゃんだけれど。


 「お土産は帰りに売り場へ案内します。次は移動です」


 大きな車に乗せられて・・・


 「わあぁー、ビル大きい!」


 「何階建てかな?」


 「空がちょっとしか見えないね」


 「車、進まないね」


 「街の中で高速が走ってる!」


 しばらく車に揺られていると大きなホテルの前で止まった。








 「学校ごとにかたまって席についていてください」


 ホテルに着くと広い部屋に案内された。まだ誰も来ていない。机がいくつも並んでいて席が20以上ある。


 「せっかくだし近くに座りませんか?」


 「そうですね」


 奥の端っこにかたまって座る。


 「自己紹介しませんか? まだ誰も来ないみたいだし」


 「じゃあ、私から、二年生の(ひいらぎ) ほのかです。趣味は釣りです」


 髪はショートカットで日に焼けている。しっかりした感じでちょっとみーちゃんに似ているかな?


 「ほのちゃんとは家が近所で、誘われて・・・三崎(みさき) あおい、一年生です」


 長い髪をふたつ結びにしている。ほのかさんと一緒で運動会の後のように日に焼けている。


 「俺は一年、山中 祥吾(しょうご)。よろしく」


 賑やかそうな人だ。そして運動が得意そう。


 「私は一年生の藤 光月。この二人とは幼馴染です」


 「その幼馴染の一年、白崎 宙」


 「私も二人の幼馴染で・・・椿 彩夜芽です。一年生です」


 「二年、色葉 結理」


 ほのかさんとあおいちゃん?苗字を覚えた方がいいのかな?


 「えっと・・幼馴染三人と・・一人だけ違うの?」


 「この二人は同じ家で住んでて・・・彩夜ちゃんの家に結理くんがっていう感じ」


 「どういうこと?」


 それは私もどうなっているのかわからない。


 「居候?」


 「家庭の事情みたいな感じ」


 こう説明しておけば誰も深くは聞いてこない。


 「光月ちゃん、このゲーム知ってる?」


 「知ってる! 楽しいよね!」


 みーちゃんはほのかさんと早速楽しそうに話している。


 さすがみーちゃん。


 「彩夜、することないなら宿題しようか」


 「えー、ここに来ても宿題するの?」


 「帰ってからしたくないから」


 「・・はーい」


 一度部屋に宿題を取りに行く。結はちゃんと持って来ていたらしく私だけ。


 「はあー、・・!」


 何かとぶつかって後ろにこけた。窓の方だけみて歩いていたのがいけなかった。


 「ごめんなさい」


 「こちらこそごめんなさい。・・・あやの?」


 「え・・結?」


 顔を上げると結と同じような雰囲気の男子がそこにいた。でも髪と目は黒で・・・よく見たら・・似てるような似てないような・・。


 「すみません。人違いですね」


 「私も・・そうみたいです」


 年は私とあまり変わらないように見える。


 この人もドラマに出る人なのかな?









 一時間も経てば椅子はほぼ埋まっていた。学校ごとで固まってバラバラに話している。他の学校と話しているところなんてここだけだ。


 もう空いている椅子は何個かだけで・・・また二人入ってきた。一人はさっきぶつかった人だ。


 もう一人は女の子。その子は私を見て何故かニコッと笑い私の元までやって来て・・・


 「初めまして、お姉ちゃん」


 


 


 


読んでいただきありがとうございます。

四章が始まりました。この章は新しくたくさんの人物が出てきます。今回も五人新しく出てきました。

小さな町でずっと同じ人たちの中で育ってきた彩夜が初めて違う場所の人達の中に入っていくような章です。

これからどうなっていくのでしょうか?

次話も読んでいただけると嬉しいです。


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