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彩る夜に結ぶ  作者: 浅葱 咲愛
三章 青春
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二十六話 今年の夏は


 「結理、どうしたらいいかな?」


 「知らないよ」


 いきなり『どうしたらいいかな?』と言われてもなんのことなのかさっぱりわからない。


 こっちは昼休みになぜか宙に彩夜達には見つからないように来てくれと言われてここにいるのに。


 今日は暑いが天気も良い。昼休みは校舎の裏にある林に行こうと思っていたのに。


 「まず、何がどうしてそうなったのか言ってもらわないと」


 「それが・・・」


 あの花火の後に光月ちゃんの機嫌を損ねたらしい。


 また余計なことでも言ったのだろうか?


 「宙が悪いと思うけど」


 「それはわかってる! 怒らせた原因が分からなくて」


 「・・何も知らないおれがわかると思う?」


 「そうだよな・・。あとさ、おれ、振られたかも知れない」


 「? 誰が誰に振られたの?」


 宙の好きな人は光月ちゃんのはずなのに。振られるなんてことがあるだろうか?


 「俺が光月に」


 「何かの勘違いじゃない?」


 振られたと思っているのがバレて怒らせたんじゃないだろうか?


 「でも・・・あんなこと言われて・・」


 「どんなこと?」


 「結婚式には呼んでね。彩夜ちゃんと二人で行くからって・・」


 おれには光月ちゃんの考えなんてわからない。でもあの人がそう簡単に宙を離すだろうか?


 「今からどうにか頑張れば振り向いてもらえるかも知れないんじゃない?」


 よくわからないから適当に言っておく。これは二人の問題なのだからおれは関係ない。


 「そうかな? どうにかなる?」


 「だって・・」


 宙のことが嫌いならここまでずっと一緒にいないだろう。


 「よくわからないけど光月ちゃんって結構大人なんじゃない?」


 「?」


 「おれは遊びに行くから、あとは自分で考えて」


 「え、結理、もう少し話が・・」


 宙に捕まる前にどうにか逃げ切った。






      


     ・     ・     ・








 昼休み・・・日に日に暑さが増している気がする。外は風がなくて、扇風機を強にしていくつも回してもあまり涼しくない。セミがみんみんとちょっと前より大きな合唱になっている。そんな場所でみーちゃんと二人、教室で弁当を食べていた。

 

 「ねえ、ドラマ、どうするの?」


 「・・・どうしよう」


 家に帰ってから色々あったせいでそのことをすっかり忘れていた。


 「ねえ、ドラマに出たら・・・ここじゃないところに行かないといけないよね」


 「アリス部長からざっくり説明されたんだけどね、主な撮影場所はここなんだって。一部違うらしいんだけど・・・これ、まだ秘密だよ」


 「・・そうなんだ」


 なら出たって変わらない。


 「この学校って私立だし、空いてる教室も多いからちょうどよかったのかな?」


 「こんな田舎なのにね」


 「撮影期間が長いから出演者はみんな寮みたいなところで生活させるらしいよ。だから・・せっかくなら彩夜ちゃんも一緒がいいなって思ったの」


 「私たちもそこに入れるの?」


 「うん」


 撮影期間はそれなりに長いだろう。なら・・


 「出る」


 「! 無理してない? 嬉しいけど・・」


 「・・しばらく家から離れたい。だから出る。この街で撮影するならお兄ちゃんも良いって言ってくれると思うから」


 「何かあったの?」


 「いちかちゃん・・・6年生の妹となんか・・嫌われちゃったみたい・・だから・」


 「・・帰った後? 休みの間とか? 何かあったの?」


 「うん。その・・ーーーーーーーーーーということがあって」


 あったことを説明した。説明している間みーちゃんはただ聞いてくれた。


 「末っ子くんは結局大丈夫だったの?」


 「大怪我してたみたい。今はまだお母さん達の病院にいるの。春樹くんはまだ小さいから・・丈夫さだって大人とは違うでしょう?」


 「・・・そうなんだ」


 「うん。・・やっぱり何も思わないから・・・おばあちゃん達にもなんか・・」


 気持ちを説明するのは難しい。言葉にならない。


 「私はそれが彩夜ちゃんだから何も思わないよ」


 みーちゃんがそばにいてくれてよかった。


 「みーちゃん、ありがとう」


 「どういたしまして」


 「結はどうするのかな? あとで聞いてみよう。・・宙も結もどこに行ったんだろうね?」


 「さあ?」


 いつもは必ずどちらかは昼休みに顔を見るのに今日は見ていない。


 「彩夜ちゃん、嫌なら良いんだよ。家で色々あるなら私でもよければ相談に乗るし・・」


 「宙とみーちゃんと一緒だし大丈夫」


 「・・なら結理くんもしっかり誘おうか。そのほうが彩夜ちゃんは安心でしょ」


 「うん」







 放課後


 「だから・・どう?」


 人の少ない部室で結に話していた。みーちゃんと宙もそこにいておやつを食べつつ聞いている。


 「いいよ。元々彩夜が出るって言うなら出るつもりだったから」


 「じゃあ四人とも出るってことでいいかな?」


 いつの間にかそばに部長が立っていた。


 「アリス部長、お願いします」


 「うん。任せて。部長としてちゃんと話はしておくから」


 「ありがとうございます」


 「私も台本に関われるかもしれないの。書いたのを一回見せて・・それから使われるかは決まるらしいんだけど、お互い頑張ろうね」


 部長はすごい人だ。役者が良くても話が悪ければいい話にはならない。


 全部決まるの部長一人でやっている。


 「アリス部長、頑張ってください」


 「私、せっかくなら部長の話を演技したいです」


 「ありがとう」


 「あ、文化祭の部長おすすめのお店、楽しかったです」


 「でしょう。毎年あっちこっちから役者を探すからその知り合いがいい店教えてくれるんだよ」


 「来年も教えてくださいね」










 家の中は外より涼しい。夕方になったからか蝉の声も段々と止んできている。電気を付けなくても少し明るい。障子を開ければもっと明るいかもしれない。リビングの隣の和室でおばあちゃんとお兄ちゃんに向き合っていた。


 「・・ーーーーーで、誘われてるんだけど・・・おばあちゃん、お兄ちゃん。出てもいい?」


 「佐藤から聞いてる。・・俺はいいと思うけど」


 「おばあちゃんは?」


 「彩夜ちゃんの好きなようにして。・・・でも、無理しないでね。前に出るのって得意じゃないでしょう」


 「ありがとう。でも・・大丈夫。みーちゃんと宙と結もいるから」







      ・      ・       ・

 


 



 「・・ーーーー麗華様、報告は以上です」


 そう言って部屋の奥にいらっしゃる方に頭を下げた。いつも通り鮮やかな衣を纏っていらっしゃる。この方はもう40くらいの歳のはずだがとてもそうは見えない。


 「やっぱりあの方が結理を隠していたのね」


 「そのようです。証拠も見つかりました」


 「流、ありがとう」


 「いえ。私が見つけたのではありません」


 見つかったのは誰からか暗号文の手紙が届いたからだった。


 その暗号文はほんの一部の者しか読めない物で確かめるためにも確認しに行けばあっさり見つかった。


 その後どうして今まで見つからなかったのか調べるのと一緒に手紙を出した者も探したけれどそちらは全くわからない。おかしいほどに何も掴めなかった。


 「教えてくれた人は・・・自分の存在を知られたくないのかしら?」


 「そうかもしれません」


 「なら・・見つけてくれた恩があるわ。そっとしておきましょう」


 「はい」


 「それと・・結理様は一部記憶が欠けているようです」


 まだ伝えていなかったことを話した。


 「そう。でも・・・あんなに幼い時のことなんてもう忘れてしまって覚えていないでしょう」


 「それがそう言うわけではなくて・・結理様本人が記憶を・・」


 「・・・様子は?」


 「元気に成長されていました。幼い頃は村の者に助けられていたようですが今はお一人でしっかり暮らしておられます」


 「よかった」


 この方はやはり結理様を嫌っているわけではない。


 「戻って来てくれそう?」


 「しっかりした方ですからいずれ自分で戻って来られるかと思います」


 「そうね。・・あちらに手紙を出すわ。届けてくれる?」


 「はい」


 誰になのかはわからないけれどたまにこうして届けにいくことがある。余計なことは詮索してはいけない。


 「誰にも見つからないように、いい?」


 「わかっております」


 





      ・     ・      ・






 庭に面した場所に一人女性が座っていた。綺麗な衣を着ている。ここは特殊な作りの建物で建物の中に大きな庭がいくつもある。建物の外からは中の様子は一切見えない。


 「結愛」


 いつもの優しい声がして振り向く。


 お休みでもなく普通の日の多忙な昼間は私の元へ来ることはほとんどないのに珍しい。


 「手紙が来ていた」


 「ありがとうございます」


 いつもの手紙。それにしては少し紙が多い気がする。


 「・・・見つかったそうです。あの子が・・見つかったと・・」


 「生きてたのか・・。よかった」


 「はい・・・本当によかった」


 


 


 

読んでいただきありがとうございます。

今回のお話で彩夜ちゃんの次のすることが決まりました。次章は変化の多い彩夜ちゃんが特に成長していく内容になる予定です。今回でこの章は終わりになります。

ドラマのお話もありますが、今までのような雰囲気のお話にしたいと思っています。もちろんドラマメインにはしないつもりです。

次章も読んでいただけると嬉しいです。


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