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彩る夜に結ぶ  作者: 浅葱 咲愛
三章 青春
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二十三話 文化祭5

遅くなってしまいすみません。


 「どこかな?」


 「んー・・・どこだろう?」


 地図を書きながら進むことでゴールに近づいてはいるはずだけれどどうしてもたどり着けない。


 「こっちは行き止まりでしょ」


 「うん。そしてここも行き止まりで・・ここに道がある気がするんだよね」


 「そろそろ出ないと次のところに行けなくなっちゃう」


 「リタイアする?」


 入り口でリタイアもできると説明された。でもそれは・・・


 「案内の人にリタイアしますって言わないといけないんでしょ」


 「その人を見つけるのも大変だよね」


 何度か案内の人とは会ったけれど、その人達はずっと移動して出れなくなった人を探している。今どこにいるのかわからない。


 「今はここにいるはずだから・・・」


 「・・・遠回りになってたり?」


 「なら・・ここの道かな?」


 「とりあえず行ってみよう」


 「うん」


 この迷路は難しすぎる。何かを目印にして移動しなければ自分がどこにいるのかわからなくなる。


 軽い気持ちで入ってしまったからどこまで迷路があるのか確認しなかった。だから迷路がどこまでなのかわからない。


 






 

 「・・・あれ?」


 コンクリートの灰色の天井だ。ここは・・・


 「やっと起きた。早く昼食食べたら? 彩夜ちゃんが買ってきてくれたよ」


 宙はうどんを食べている。


 ここは体育館倉庫か。劇の後すぐに眠ってしまったらしい。


 「・・・そうなんだ。後でありがとうって言っとかないと」


 「うん。美味しそう」


 「美味しいよ」


 つゆと麺は別になっているから伸びてない。


 「いただきます。・・・とっても美味しい・・けど・・」


 どこかで食べたことのある味だ。こちらで食べたものなんてほとんど家で出てきたものだけれど・・


 「それ秋翔くんが作ったらしい」


 「だから同じ味がするんだ」


 「寝不足はもういいの?」


 「うん。もう十分寝た。・・・なんか嫌な夢見てその後眠れなくて」


 「そうなんだ。たまにあるよな」


 「意外」


 宙は嫌な夢を見ることなんてなさそうに見えるのに。


 「意外って・・いろんな夢見るよ。昔のこととか」


 「昔ねー」


 こうして気になるようなことを言ってくるくせに教えてくれない。でもわざとこんなことを言ってくるということは多分この勘は当たっているんだと思う。


 「・・・あのこと結局二人に言ってないの?」


 「言い出せなくて・・彩夜ちゃんのことは心配してないんだけどさ、みーちゃんがどう思うかなーって考えちゃうんだよ。結構強がりだから・・・」


 「・・・なるほど」


 勘を当てはめて考えれば宙が言い出せないのもわかる気がする。


 「なるほどってなんだよ」


 「宙も大変なんだなって思っただけ。・・・そのうち教えてくれるの?」


 「・・そのうち。でも結理は知らないふりしてて」


 「どうかな」


 宙にも事情があるようにこっちだって事情がある。知らないふりをして彩夜が悩むならおれは話す。


 これはおれだけの話ではないはずだ。ちゃんと手紙にもそう書いてあったから。


 「光月ちゃんも宙も役者だよ。・・・すごいと思う」


 「そんなに演技上手だった?」


 「どこからが演技なのかわからないくらいにね」


 「そう? そんなに褒めてくれるの嬉しいなー」


 わざとらしい。全部演技なのかもしれない。


 「・・二人、楽しんでるかな」


 「楽しんでるんじゃない?」


 「俺たちはどうする? どっかに遊びに行く?」


 「宙と二人で?」


 「他に誰がいるの?」


 宙と二人で遊びに行ったって楽しくなさそうだ。


 「・・・やだ」


 「えー、結理が冷たい!」


 さっきからこの会話はなんなんだろう?


 「あのさ、一応おれが年上なんだけど?」


 「でもさ、色々考えれば俺の方が年上だし」


 これは自分からばらしにいっているんだろうか?


 「どこが? とても子供っぽく見えるんだけど」


 これでも突然一人になってそれから周りの助けは借りたものの一人で生きてきた。そのせいなのか同年代と話が合わない。考えも合わない。


 「結理は年齢の割に若さがない。俺の方が気持ちは若いと思う」


 「・・・それをそのまま宙に返していいかな? この前、青春系の物語見て『若いっていいな』みたいなこと言ってた気がするんだけど?」


 「・・・なんのことだろう?」


 「自分の方が年上だって言うくせに気持ちは若いってどういうこと? 年上なら気持ちはもうおじいちゃんなんじゃない? 年上だって言う割に言ってることが見た目通りだと思うなー」


 「・・・」


 今は二人だけだ。普段は言えないようなことも言っていいだろう。


 「ねえ、光月ちゃんによく使われてるよね。それでいいの?」


 「・・・もう諦めたんだよ。でもたまに勝てる時もあるし」


 「色々あったらしいね。あの人はたまに来ると愚痴を話していくこともあってさ・・知ってるのに知らないふりをしてるんだって。誰かとこっそり会ってる事とか隠れて何かしている事とか」


 「!!」


 驚いているということはバレていることを知らなかったのだろう。


 この後宙がどう動くのか楽しみだ。


 「結理、性格悪くなったか?」


 「どうかな? 元からこんなだと思うけど?」


 「いや、昔はこんな性格じゃなかった」


 そんな、どうでもいい会話は彩夜達が戻ってくるまで気づいた。


 


 


 



 「みーちゃん・・・あれ、道があるよ」


 「本当だ! あ! 出口だ!」


 「やっと出れた・・・」


 「出れないかと思ったよー」


 久しぶりの壁に囲まれていない空間だ。迷路の中は風が吹かなくて暑かった。外は涼しい。


 「脱出おめでとうございます。コンパスを返してもらってもいいですか?」


 「はい」


 「えっと・・・九番ですね。おめでとうございます! 最短記録ですよ!」


 「・・そうですか」


 「彩夜ちゃん、嬉しくないの?」


 「嬉しいことなの?」


 ふーん、そうなんだーくらいにしか思わなかった。


 「そうなんじゃない?」


 「そっか」


 「学年と名前を教えてください。記録が更新されなければ景品を後日差し上げます」


 「一年の藤光月と椿彩夜芽です。あ、中学生ですよ」


 「ありがとうございました。ぜひまた来て下さいね」


 「彩夜ちゃん、次はどこに行く?」


 「みーちゃんが行きたいところあるんでしょ?」


 「うん!」


 



 「綺麗だね」


 目の前には刺繍が入ったハンカチや綺麗なアクセサリーが並んでいる。


 「でしょ。高校の手芸部だって」


 「すごいなー。手作りって事でしょ?」


 「うん。こんなの男子とは来れないし、彩夜ちゃんと見に来ようと思って」


 「ありがとう」


 「何か買おうよ。どれにする?」


 種類が多くて迷ってしまう。


 「ハンカチの方が使うかな? でもこのネックレス綺麗だね」


 「綺麗だけど・・・使う機会ってあんまりないよね」


 「そうなんだよね・・。どうしよう? みーちゃんは?」


 「私は・・・ハンカチなら・・ひまわりの刺繍のが好き」


 「私はこれが好き」


 なんの花なのかわからないけれどふわふわしていて黄色で可愛い。


 「どうしようかなー。アクセサリーもそのうち使う時が来るかな?」


 「どうかな?」


 あまり使う機会が無いとはわかっているけれどやっぱり綺麗で買う理由を探してしまう。

 

 「ねえ、夜の花火で付けとくってどう? その時は浴衣でしょ」


 「そうだね。そうしよう」


 「これ可愛い」


 「これとかどう? みーちゃん好きそう」


 「それいい! どれにしよう。迷うなー」


 「これかな? いや・・こっちかな?」


 なかなか決まらなくて長い時間悩んでいたけれど後で思えばみーちゃんとの楽しい時間は一瞬のようだった。








 「楽しかったー」


 「みーちゃん、来年も一緒に行こうね」


 「迷路も行く? 来年もする予定らしいよ」


 「時間があったら行く」


 舞台横の扉から裏へ入る。


 「あ、やっと帰ってきた」


 「何か買ってきたの?」


 「宙と結理くんはずっとここにいたの?」


 「俺は二人で遊びに行こうって言ったのに結理は俺とは行きたく無いって言うんだ」


 「ゆっくりしたかったからだよ。彩夜、うどんありがとう。おいしかったよ」


 「お兄ちゃんの料理はいつも美味しいよね」


 そのうちまた作ってもらおう。


 「花火はみんなで見にいく? 私は彩夜ちゃんと見にいくよ」


 「行く!」


 「行く」


 「あ、お兄ちゃんがついてくるかも」


 「大丈夫、お姉ちゃんを連れてくるから。秋翔くんにしっかりお姉ちゃんの可愛い浴衣姿を見せて二人をくっつけよう!」


 「うん!」


 これがうまくいけばお兄ちゃんが心配して私につきまとうことも減るかもしれない。


 「ねえ結理、これはいいことなのかな?」


 「どうなんだろう? あの二人って両思いだしいいんじゃない?」


 「でもさ・・妹にこんな計画をされてるなんて」


 また男子二人がヒソヒソと話している。


 「宙、ダメだって言うの?」


 「違う違う。みーちゃん、睨まないで」


 「睨んでるつもりはないんだけど?」


 「そうですか」


 「彩夜ちゃん、私ね、お姉ちゃんから浴衣のお下がり貰ったんだー。ちょっと大人っぽい柄のやつ」


 「私は去年と一緒だよ。来年は小さくなってるかもしれないけどまだ入るから。でもね、この前片付けてたら帯が出てきてそれ使っていいんだって」

 

 「あの・・そろそろ準備の時間だよ」


 「えー、早いよー」


 「そんなこと言われても・・・」


 「最後なんだから」


 最後だ。みんなで演技するならまた一年後。


 「はあー、セリフ覚えた?」


 「覚えてない」


 「本番大丈夫?」


 「どうかな?」


 終わりまでの時間を延ばすようにどうでもいいような話を続けた。










 「裏音様、あなたはどうしていますか?」


 一つだけのスポットライトの下で斜め上を見上げながら独り言のように呟く。


 「もう私のことなど忘れてしまったのかしら?」


 きっと寂しいのだろう。そんな時・・


 「雪」


 後ろから大好きな声がする。


 「声がするはずがないのに・・」


 「雪」


 「・・裏音様」


 ゆっくりと振り向くと少し離れたところに私と同じような白い光のスポットライトに照らされた結が立っている。


 結は私の方に手を伸ばしていて・・


 「りぉ・・・」


 ぎゅっと胸が痛んでまた息が浅くしか吸えなくなる。痛い。こんな状態で声なんて出せない。続きを言わないといけないのに。


 片手で襟をぎゅっと掴む。早く痛く無くなって欲しいのに・・


 「・・・あ・・雪」


 どうにかしないと。動かないといけないのに・・・


 「雪!」


 何かにふわっと包まれて・・


 「「きゃあぁぁー!」」


 観客席から黄色い悲鳴が上がる。どうして・・


 「彩夜、平気になったら教えて。それまで隠すから。」


 すぐそこで小さく結の声がする。


 抱きしめているように見せているんだ。私は袖にちょうど隠れている。


 「雪、ずっと会いたかった」


 


 

 


 


 


 


 


 

 

読んでいただきありがとうございます。

今回はふわふわしたようなお話だったかなと思います。そしてやっと次で劇の内容は書き終わる予定です。

サブタイトルはまだ決まりません。どんなものがピッタリなんでしょうか?

次は早く投稿できるように頑張りたいと思います。

次話も読んでいただけると嬉しいです

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