表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彩る夜に結ぶ  作者: 浅葱 咲愛
三章 青春
67/111

二十一話 文化祭 裏

 


 「ねえ、彩夜は?」


 「みてないよ」


 着替え終わって彩夜といたはずの光月ちゃんに聞いてみたけれど知らないらしい。


 「探してるの?」


 「・・うん」


 この後も少し時間があるから遊びに行くのに誘おうと思ったけれど・・・。


 「秋翔くんのところは?」


 「聞いたけど見てないって」


 「意外と近くにいるかもよ?」


 確かに体育館のそばは探していない。


 「行ってくる」


 外に出てぐるっと体育館も周りを回ってみる。誰もいないと思っていたけれどちらほら人がいる。


 裏まで回ってくると・・・


 「彩夜?」


 知らない人の横に彩夜の着ていた衣装が見えた。


 「こんにちは、結理くん」


 「え・・・」


 そこにいた緑がかった青の髪に緑の瞳の人が話しかけてきた。優しそうな見た目の二十代くらいの男の人だけれど何か普通ではない。


 「燈依の知人」


 「・・こんにちは」


 「君、大事な子を泣かせたらだめだよ」


 「え?」


 彼の膝で彩夜は眠っていた。彩夜はもふもふな狐を抱きしめている。


 「どうして・・」


 「疲れてるみたいだからもう少し寝かせてあげてね」


 聞きたいことの返事が返ってこない。誰なのか。どうしてこんなことになっているのかを聞きたいのに。


 「・・・あなたは・・」


 「結構、悩んでるみたいだよ。そんな年頃だからなのかもしれないけれど」


 どうしてそんなことまで知っているのだろう?


 この人は彩夜の髪を撫でつつ話す。彩夜をみるこの人の表情はとても優しくて、親が可愛い子供を見るような目をしている気がする。


 「そろそろ帰らないといけないんだ。残念だけど彩夜ちゃんは置いて行かないといけないから見ててくれるかな?」


 「はい」


 「ならよかった」


 優しそうな人に見えてそうではない気がする。彩夜に対してはそうかもしれないがおれに対しては・・何か恐怖を感じる。奏さんを前にした時と同じような感覚だ。


 「あなたは・・・人ではない」


 「それが何?」


 「確認しただけです」


 「彩夜ちゃんは娘のような存在だ。彼女はどう思っているかわからないけれど。・・・この子を泣かせるようなら許さないよ」


 この人は敵に回してはいけない。大きな獣に飲み込まれるような感覚がする。


 「夏牙、帰るよ」


 「クー」


 「よろしく、結理くん」


 ふわっと風が吹き目を瞑る。


 次、目を開けた時にはあの人も狐もいなかった。









 「あれ?」


 目を開けると結がいた。


 「夏牙は? 成雨さんは?」


 「帰った」


 頭が痛い。いっぱい泣いたからかな?


 「どうした? 目が赤いよ」


 「私泣き虫だから」


 幸せな夢をみていた。


 まるであの劇の続きのような夢。二人には子供がいて仲良く暮らしていた。


 とても幸せなのに何故かとても悲しくなった。


 「あの人達と知り合いなの?」


 「公園で迷子になったときに道を教えてくれた人。あの人は平気なの。燈依先生といる時みたいに安心する」


 「あの人は人間じゃない」


 「・・そうかもね」


 それでもいい。結の言いたいこともわかるけれど・・・。


 「今何時?」


 「5時。もう家に帰ろう」


 「うん」


 起き上がって帰ろうとすると・・


 「っ・・・」


 ぎゅっと胸が痛み服を掴んで押さえる。浅くしか息が吸えない。


 「彩夜?」


 深く息を吸おうと思うとさらに痛む。


 「痛いの? 誰か呼んでこようか?」


 「大丈夫」


 ちょっと待てば痛くなくなる。


 「・・・・・はあー。・・もう大丈夫」


 「本当に?」


 「うん」


 「よく・・そうなるの?」


 「たまーにかな? だけどどうもないから心配しないでね」


 「・・うん」









        ・       ・      ・






 広い庭でまだ6歳になったかならないかくらいの男の子が二人話していた。


 「ねえ兄上、今日は何しに行くの?」


 「○○は何がいい?」


 「川に行きたい!」


 弟は楽しそうに言ってくる。


 「いいよ」


 二人でそっと塀を越えて裏にある山へ向かって・・


 「兄上、もう疲れた」


 「もう少しで川に着くから」


 「本当!」


 「うん」


 「あ、見えたよ! 綺麗」


 「お魚もいるよ」


 弟と遊ぶのがとても楽しかった。そしてしばらく遊んで・・・





 「あ、雨だ。○○、もう帰ろう」


 「もう少し遊びたい!」


 「また今度来よう。雨の山は危ないよ」


 「はーい」


 兄であるちょっと大きい方の男の子は遊び疲れてうとうとしている弟の手を引いて山道を戻る。


 雨はどんどんひどくなって服が濡れて重くなっていた。暖かい時期でよかった。


 「もうちょっとで着くから頑張って」


 「んー」


 「・・○○」


 「兄上、見て。あっちに何かあるよ?」


 「え?」


 「ほら!」


 弟は眠くなくなったのか元気よく走っていく。


 「そっちはだめ!」


 慌てて弟の方へ走る。だめだ。その先には・・


 「兄上?」


 弟の体が後ろに傾いた。


 「○○!」


 「あ・・」


 手を伸ばした。何もかもゆっくり動いているように見える。だからちゃんと見えてしまった。


 弟が落ちていく。


 手が届かなかった。掴めなかった。


 小さな弟の体がどんどん小さくなっていく。





 そしてずっと下にある川がバシャンと音を立てた。


 


 


 


 

読んでいただきありがとうございます。

今回は前回のあとのお話でした。成雨さんの立場がなんとなくわかったかなと思います。

次話も読んでいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ