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彩る夜に結ぶ  作者: 浅葱 咲愛
三章 青春
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十九話 文化祭2


 「あれー、この辺りにいるはずなんだけど・・」


 「成雨、まだ?」


 「しゃべらない約束だったよね?」


 毛を逆立てたうるさい狐を抱えながら学校で働く知り合いを探すが人が多くて見つからない。


 「ここにいるんだけど?」


 後ろから肩をガシッと掴まれ慌てて振り向いた。


 「燈依、痛いから離してくれるかな? ほら、普段と姿が違うから気づかなくて」


 「成雨、遅かったじゃない。・・腕の中のもふもふはなに?」


 「見ればわかるでしょ。遅くなったのもこれが俺に抱えられるのは嫌だってぐずってたからなんだ」


 この狐は大人しくてツンツンしていてわがまま。言うことをほぼ聞かない。


 「・・・夏牙、後でその姿になってもよかったんじゃないの?」


 「ほら、夏牙は化けるのが下手だから」


 「あー、そうだったわね。まだ子供だからうまく化けれないんだったわね」


 「・・・・得意じゃないだけだ」


 だからしゃべらないでと言っているに・・・。


 「それで、どうしたらいいの? そろそろこの狐を投げたくなってきたんだけど?」


 見た目のせいで穏やかな性格と思われがちだがこれでもそれなりに力のあるあやかしで、まだ丸い性格ではなかった若い頃は化け物と呼ばれていたこともある。


 「それはよくわかるわ。私も何度家から追い出そうと思ったことか」


 「・・・ちゃんと手伝ってる」


 夏牙は厳しい弱肉強食の世界をほとんど知らない。だからこんなにわがままなのかもしれないが・・・。


 「夏牙、ここはあの場所じゃないのよ。時代も違う。なんでわざわざ夏牙の面倒まで見てるのかわかりなさい」


 「・・・」


 「燈依、なんか注目されてるみたいだけど?」


 同じ服を着た子供たちがこちらを見てヒソヒソしている。


 「学校って面倒くさいわね。ここだと目立つからこっちで大人しくしてて」


 「どこ?」


 「ついてきて」


 学校というところには初めてきたけれどずいぶん大きな施設らしい。


 「うん、誰もいない。ここでゆっくりしてていいわよ」


 「・・・臭い」


 夏牙がプイッと入り口から顔を背けた。これは・・・消毒液の匂いだろうか? 鼻のよく聞く夏牙には確かに臭いのかもしれない。


 「保健室って言うんだっけ? ペットが入って大丈夫?」


 「普通のペットじゃないから大丈夫でしょう」


 「ペットじゃない」


 中に入ると夏牙はぴょんと腕から飛び降りる。


 「夏牙、ちゃんとあの子達は置いてきたでしょうね」


 「・・・」


 「ちゃんと置いてこさせた。ここでうっかり蓋が解けて出てきちゃったらダメだしね」


 「・・・私もあれ以来二人にはなにも聞いてないのよね。なにをするつもりなのかしら? こっちの事情もあるんだし・・・」


 どれがあの方にとって良いことなのかはわからないけれど、こちらの要望だけで言うなら早く思い出して欲しい。そしてもう一度みんなで・・・。


 「燈依、彩夜芽ちゃんの様子はどう?」


 「楽しそうにしてるのよ。最近は学校も休まずに来てるみたい。結理くんが来てから前より楽しそうなのよ。それ見ちゃうとこっちに引っ張り戻すのは気が引けるの。・・・記憶があれば絶対に戻ってくるでしょう」


 「そうだね」


 「そうなの?」


 「なんなの?」


 左右から子供の声がした。


 「! ・・・君たちも」


 左右からぎゅっと10歳ほどの双子の少年?に抱きしめられる。


 「久しぶり」


 「会いたかった」


 「待ってたよ」


 「遅いよ」


 「露優(ろゆう)玲優(れゆう)・・・離してくれるかな?」


 二人は精霊で露優が黒に近い青緑のような髪と瞳、玲優がとても薄い青緑の髪と瞳。そしていつも無表情。顔はほぼ一緒で髪と瞳の色を同じにされたらどちらがどちらかわからない。


 幼い子供に見えて実は俺より年上だったりする。非力に見えて力もそれなりにある。そんな二人にしっかりぎゅっとされれば潰れそうになるものだ。


 「「なんで?」」


 二人は肩まででぱつんと切った髪を揺らして首を傾げる。


 ぱっと見は可愛いと言われるような容姿をしているのに長生きしている分、夏牙よりもめんどくさい時がある。


 「・・成雨!」


 「あれなに!」


 二人は楽しそうに(顔は無表情)もふもふの夏牙を指差している。


 「触る!」


 「もふる!」


 「ダメー!」


 面倒な二人を止めに行きつつも、よくこうしていたあの頃を懐かしく思った。






 

    ・       ・      ・


 





 「うぅっ・・・こんな怖いなんて聞いてない」


 たくさんの人がいる校庭に用意されている椅子に座り込んだ。そして少しうるんだ目を擦る。


 「そんなに怖かった?」


 「怖いもん。・・・だってあれ本格的すぎるよ。お化け風メイクとか血糊使ってしてたよね」


 まさか学校のお化け屋敷があそこまで本格的だとは思っていなかった。


 「でも・・もうすぐ出てくるよって教えてたと思うんだけど・・」


 「それでも怖いの!」


 お化けらしく手が冷たかったり、振り向いたら居なかったり、とても怖かった。


 「・・・結は平気なの?」


 「あんなの怖くないよ。おれは誰があのお化けやってるかわかってるし・・・森の中の一人の生活よりは怖くないかな」


 「そうだよね」


 横にいる結のことをちらっと見てみた。どこかをぼーっとみていると思ったら目を伏せて小さく笑っている。自嘲するように。


 「結・・・」


 「ん? なに?」


 結の視線の先にいたのは楽しそうにしている家族だ。やっぱり羨ましいのかな? 


 気になるけれど聞いたらいけないことだと思う。


 「いつか・・・家に帰ったら家族がいる暮らしができたらいいね」


 家族のところに帰れたらいいねとは言えなかった。家族とは何か複雑な部分があるようだから。帰りたくないようだから。

 言葉を選ぶのも難しい。下手に言ったら傷つける気がする。私は言葉を選ぶのが上手ではない。


 初めて会った幼いあの時は一人が寂しいと言っていた。今はどうなのかな?


 「・・・うん」


 どうかな? 表情からも感情がわからない。難しいなー。









 「いつか・・・家に帰ったら家族がいる暮らしができたらいいね」


 彩夜が突然そんなことを言ってきた。ちょっと悲しそうな顔をして。なんで悲しそうな顔をするんだろうか? どんな意味で言ったんだろうか?


 ちょっとだけ、いいなーと思いながら楽しそうな家族を見てたのがバレたんだろうか?


 そんなことを考えていると彩夜は困ったような顔をする。きっとまた何かの自信を無くしているんだろう。


 「うん」


 そしたら次は微笑んでいる。


 「彩夜」


 「なに?」


 「ごめん」


 彩夜は少し驚いたようだけれどそれを隠すようにぱぁっと笑う。


 「前・・彩夜には相談しないって・・・彩夜だから・・・」


 「そんなの気にしてないよ。私はね・・・別に相談なんかされなくてもいいの。結が嫌ならそれでいいの。ただそれは・・・こっちに来てなれなくて困ってるのかな?って思って言ったの」


 これはなにも隠してない本音な気がする。


 「でもね・・・その時はちょっと悲しいなって思っちゃったけど、今は違うの」


 彩夜はまた困った顔をして笑ってる。


 「結はね、たまに別人みたいな顔をするんだよ。知らない人の前とかで・・急に空気が変わって笑顔が完璧で弱いところを隠してるみたいな。前、話したよね」


 「うん」


 あれだ。幼い頃からの癖で他人に自分を隠そうとしてしまう。


 「それを私にも向けるから・・・知らない人たちと同じなのかなーとか。あとね」


 まだあるらしい。なにをしただろうか?


 「えっと・・・お兄ちゃんが寒天作ってくれて・・二人で部屋で食べた日あったでしょ」


 「あー、うん」


 あの日、彩夜に何かした?


 「あの日から結が変で・・・。今話した三つがちょうど重なってたから・・・ごめんね。私が考えすぎて・・なんて言うのかな? こう・・・」


 時間軸から考えると・・・・あの日彩夜を可愛いと思ってしまったからこうなったらしい。


 「とにかく、・・・気まずいのはもうやだ」


 「おれも。・・・彩夜、話せないことはたくさんあるけど・・いつか話すから」


 それまで待ってほしい。今はおれだって決め切れていない。


 「・・・うん。待ってる」


 「他人と関わるのって難しいな」


 「・・・距離を置いて関わらない方が楽だよね。関わらなかったら最初からなにもないからなにも思わなくて済むもん」


 彩夜は羨ましそうに友達と楽しそうに回っている生徒達を見ている。本人は気づいていないのかもしれないけれど。


 「もういいやって思ったけどね、結は違うんだよ」


 さっきまでよりずっと綺麗な笑顔で言った。少しはその笑顔の効果をわかってほしい。


 「一つだけ・・・わがまま言ってもいい?」


 「なに?」


 「・・・うちにいる間は一緒にいてくれる? ほら、いつもみたいに一緒に勉強したり話したり・・・それだけでいいから」


 おれがそのうち家を継がないといけないことを知っているのか? 『うちにいる間』と言うなんていなくなることがわかっているから言うんだろう。手紙をもしかして読んだとか? ならあのよくわからない役目のことも知ってる? 考えないといけないことが沢山だ。


 彩夜はどんな未来を思い描いているのかな? いつか終わりが来てこうして二人で話すことなんてない未来が待っていると思っているのかな?


 奏さんは彩夜とずっといられる方法を探せばいいのような事を言っていた。もう種は箱の中に閉じ込めたはずなのに・・探してみようかと思ってしまう。


 「秋翔くんは手強そうだな・・・」


 「?」


 やってみるだけやってみるのもいいかもしれない。どうせ残っている時間は二年もない。


 最後に全て決めるのは彩夜。


 「どうしたの?」


 




 「結?」


 結は私をじっと見たまま黙ってしまっている。どうしたんだろう?


 「そんなのわがままならいくらでも聞くよ」


 「ほんと?」


 「本当」


 嬉しいなー。これで後のことなんか考えないで今を楽しめる。結がいいって言ったんだから遠慮なんかしないでおこう。


 「劇の変わったところ覚えないとね」


 「・・・そうだった。せっかく楽しんでたのに」


 「ねえ、次は高校生のお店に行こうよ」


 「え? 劇のはいいの?」


 「どうにかなるでしょ!」


 来年も結と文化祭を楽しめるとは限らないから。後悔しないように沢山遊ぼう。


 「ならないから!」


 「劇の途中で忘れちゃったら結が助けてね」


 


 


 


 






 


 


 


 

 

読んでいただきありがとうございます。

今回は新しく二人登場しました。そして久しぶりに夏牙と成雨も出てきました。文化祭のお話の間は何度か出てくると思います。

そして〜〜の間をどう変えるかはしっくりくるものが見つからないのでもう少し決めるのに時間がかかりそうです。

これからどんどん展開が待っています。次話も読んでいただけると嬉しいです

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