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彩る夜に結ぶ  作者: 浅葱 咲愛
三章 青春
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十七話 文化祭の始まり


 朝


 「おはよー」


 まだぼーっとしている状態でお兄ちゃんのところに行く。


 「おはよう。遅くまで起きてたのか?」


 「ちゃんと早く寝たんだよ。本当はもうすこしお話ししようと思ってたけど眠くて・・」


 「顔洗った?」


 「うん。お兄ちゃん、朝ごはんなに?」


 「味噌汁とご飯、卵焼き。あとおかか」


 普通だけれど美味しい朝ごはんのメニューだ。


 「あれ彩夜、もう起きてきたの?」


 「うん。昨日いっぱい遊んだからかな? 結はぐっすり眠れた?」


 「昨日走り回ったおかげでぐっすり眠れたよ」


 「あー、そんなこともあったね」


 あの時結はどんな景色を見せてくれようとしていたんだろうか? そのうち聞いてみよう。


 「お腹すいたなー、秋翔くんまだ?」


 結も早くから起きてお兄ちゃんと一緒に朝ごはんを作っていたんだろう。


 「早く食べたいなら手伝う」


 「はーい。・・でもさっきまで手伝ってたじゃん」


 「彩夜、葉月達起こしてきて」


 「うん」


 部屋に戻ってみーちゃんと葉月ちゃんに声をかける。


 「朝だよー。おーきーてー」


 「もうちょっと・・・」


 「あと30分・・・いや・・一時間」


 あと十分と言う気持ちはわかるけれど一時間は長すぎないだろうか?


 「ここ家じゃないんだよー」


 「・・え?」


 「ん? 彩夜ちゃん!」


 二人とも驚いて私をみる。誰だと思って返事をしていたんだろう?


 「おはよう。みーちゃん、葉月ちゃん」






 文化祭 本番当日


 梅雨も終わりいい天気が続いている。


 「うわぁー、沢山お客さん来てるよー!」


 「ほんとだ・・緊張してきた」


 みーちゃんと体育館のステージ横の扉からそっと客席を覗くと、すでに沢山のお客さんがいるのが見えた。


 「でも、まだ開演30分前だよね?」


 「毎年人気でほとんどの人が見に来るんだよ。彩夜ちゃんも見たことあるでしょ」


 「小さい頃は見てたような気がするんだけど・・・ここ数年見てなかった気がするんだよねー」


 「秋翔くんが自分が出てる舞台を見せないようにしてたんじゃないの?」


 「そうかもね」


 お兄ちゃんとアリス部長の奇妙な関係を私が知ってからはお兄ちゃんは放課後には部室に入り浸るようになった。だからなかなか聞ける機会はなかったけれど昨日の練習の合間に中学時代のお兄ちゃんのことを聞いてみたら隠そうとする理由もわかった気がした。


 お兄ちゃんは三年間、主人公なのにカッコ悪い役ばかりやっていたらしい。一年生の時は先輩に強制されて、二、三年生の時はアリス部長に捕まえられて。


 「そろそろ着替えたほうがいいんじゃない?」


 「そうだね。みーちゃんは着替えなくていいの?」


 「着替えないといけないの。しかも何役もするから衣装は重ね着だよ。なんでこんな暑い時期に・・」


 「それで扇風機だけなんて」


 衣装は着物風のものだから着ているととても暑い。中に保冷剤は入れるらしいけれどどこまで効果があるのかわからない。


 「宙と結は?」


 「役者なのに荷物運びさせられてるみたいだよ。うちの部って男子が少ないから」


 「あー、セリフ間違えたらどうしよう!」


 開演時間が近ずくに連れてどんどん緊張が増していく。


 「どこかに台本を隠して持っとくのは?」


 「隠すところがないよー」


 「えっと・・・小道具の裏に貼っておくとか?」


 「二人とも、そんなところにいないで衣装着てね」


 気づけば後ろに部長と部長に使われているお兄ちゃんがいた。


 「セリフが飛んだらどうしたらいいですか?」


 「秋翔先輩だって間違えたり舞台の上で派手に転んだこともあったんだからリラックスしていいよ」


 「それは言わない約束だろ!」


 「えー、他のを言ったほうがよかったですか?こっちにはまだまだ情報があるんですよー」


 「・・・わかったから」


 「じゃああれを運ぶのをお願いします」


 「はい」


 これではどちらが先輩なのかわからない。


 「先輩って面白いなー。でも・・あ、光月ちゃん達は紗羅ちゃんのいるところに行って準備してもらってきてね」


 何だろう? 先輩を見ていて何か引っかかったけれど・・・まあいいか。


 「はーい」


 「着替えてきますねー」


 





 本番十分前


 着替えも終わりすることがなくなって幕の間から顔をのぞかせていた。


 「こんなにお客さんがいるー・・・どうしよう」


 さっきよりさらに人数が増えている。


 「彩夜芽ちゃん、光月ちゃん、お客さんなんてかぼちゃだと思えばいいんじゃない?」


 「紗羅さんは出なくていいからいいですね」


 「でも作った衣装がどう思われてるのかな?って緊張するよ」


 「お客さんがかぼちゃになんてどう頑張っても見えないんですよ!」


 見れば見るほどお客さんの顔がしっかりと見えてしまう。


 「あー、そういえば本番中は体育館を真っ暗にするからあんまりお客さんの顔なんて見えないと思うよ。お客さんからはステージだけがライトに当たってるからしっかり見えるんだけどね」


 「最後の一言が余計です!」


 「・・・他の出演者とおしゃべりでもしてくるのはどうでしょう? 楽しくお話ししてそのノリのまま舞台に立てば緊張しないかもしれません」


 「・・・試してみます」


 ステージを挟んで反対側にある場所にいく。普段は倉庫になっていて今は男子更衣室になっていたから二人ともこっちにいるはずだ。もう着替えているだろうし遊びに行っても平気だろう。


 「みーちゃん、衣装って重いね」


 「重いし暑い。本番中はこれに加えてライトの暑さだよ」


 「うわぁー」


 それで公演は30分もある。その間私もみーちゃんもほとんどの時間舞台に立っていないといけなくて・・。


 「そんなに持つかな?」


 「お兄ちゃんに冷たいジュースを用意してもらおうかな」


 「私もお姉ちゃんに頼んで・・・聞いてくれないかも」


 「お兄ちゃんにまとめて頼もうよ。たぶん聞いてくれるはず」


 見つけ次第、上目遣いで頼もうと決めた。


 「ねえ、宙、結理くんいる?入っていい?」


 ステージを通ってそこに入るには襖を開けないといけない。でも一応更衣室になっているはずだからいきなり開けて入るわけにはいかない。


 「いいよー。忘れ物でもした?」


 「どうしたの?」


 倉庫は暗い。窓が一つしかないから。


 中に入ると窓からほんの少しの明かりがくる場所で二人とも和服っぽい衣装を着て置いたままにされている大きなマットに座っていた。結はもちろんだけれど宙もとても似合っている。


 その姿があまりにも絵になっていて・・


 「おーい、二人ともなに固まってるの?」


 「だって・・・ね、みーちゃん」


 「うん。びっくり。二人ともモテちゃうね」


 「うん。また女子に捕まるようになるかも」


 最近は女子に囲まれることが少なくなったと言っていたけれどそれは今日までの話かもしれない。


 前に一度見ているのにまた固まるほど驚いてしまう。


 「自分たちの姿は鏡で見た?」


 「・・・衣装合わせの時は見たけど」


 「あの時もだけど体育館って鏡ないから」


 今日は髪型もちゃんとしてあって、うっすら化粧もしてある。らしいけれど自分の姿がどうなっているのか自分ではわからない。


 「彩夜ちゃんもみーちゃんもいつもより大人っぽくてかわいいよ」


 「とっても似合ってるよ」


 「ありがとう」


 お世辞が入っているのもわかっているけれど褒められるのは嬉しい。


 「結理も彩夜ちゃんにかわいいって言えばいいのに」


 「・・思うけど言ったら秋翔くんに怒られる」


 「お兄ちゃんはいっつもかわいいって言うのにね」


 「・・・妹に言うのとはちょっと違うから。ね、宙」


 「結理はしっかり秋翔くんに警戒されてるんだー。本人もすこしはわかってくれたらいいのにねー」


 なんの警戒だろう?


 「いや、わかってくれなくていいから。わかられたら困る!」


 宙は楽しそうに笑っていて結はどこか焦っている。


 「みーちゃん、二人は何の話をしてるの?」


 「・・・彩夜ちゃんにはまだ早いよ。うん。まだ知らなくていい」


 「何で? みーちゃんはわかるのに私はダメなの?」


 「ダメ。彩夜ちゃんだって結理くんが秋翔くんに怒られるのを見たくないでしょ」


 「うん」


 なら仕方がない。


 「ゆいー、緊張しない?」


 「あんまりしないかな。彩夜もそんなに考えすぎないでかるーくすればいいんだよ」

 

 「お客さんの人数見た?」


 「見た。・・セリフ忘れてもどうにか繋ぐから練習通りに演技しよう」


 「・・うん。そうだね」


 演劇部の人たちはみんないい人でセリフを間違えたくらいではなにも言われないから大丈夫!


 「彩夜、劇が終わったらお店回ろうよ」


 「行く! 気になってる店があってね、そこに行きたいの」


 「おれもさっきアリス部長にクラスの店にも遊びに来てねって言われたからそこにも行こう」


 今日は文化祭二日目。一日目は劇のリハーサルと準備でちょっとしか見れなかったから今日こそ楽しみたい!


 「劇なんか早く終わらないかなー」


 「何で一日二回も同じ劇をしないといけないの?」


 「そういう伝統なんだって」


 「それだけ人気ってことなんじゃない?」


 出演者だって楽しみたいのに。


 「あ、ここに居たんだ」


 「紗羅さん、何かありました?」


 「もう始まるよ。スタンバイしてね」


 いよいよ始まる。


 電気が消された暗いステージに行き・・・


 「あれ? 最初の立つ場所どの印だっけ? 結、わかる?」


 「これ、この黄色の印のとこ」


 「どれ? 見えないよ」


 「もう少し右、ちょっと前。そこ」


 「ありがとう」


 やっぱり結の目は便利だ。


 『次は演劇部の発表です。ーーーーー』


 アナウンスが流れ・・・幕が上がった。







 おまけ その頃お兄ちゃん


 かわいい妹の彩夜に暑いから飲み物を買ってきてと頼まれてそしたら光月ちゃん達にまで頼まれた買い物から体育館に戻って来た頃・・・・


 「先輩!なにしてるんですか?」


 「うわあ! 佐藤、いきなり声かけて・・これ落としたらどうするんだ」


 「使いっ走りにされてるんですか?」


 演劇部部長の佐藤アリスはとにかくめんどくさい後輩だ。さっきも過去の秘密を妹にばらされそうになった。


 「違う。買ってきてって頼まれたんだ」


 「妹さんに?」


 「そう。外に出れないから代わりにって」


 「そうですか。彩夜芽ちゃんならそこの倉庫にいますよ。光月ちゃん達と楽しくお話ししてるみたいです。演技用の衣装だって着てるんですよ」


 佐藤が悪魔の囁きをしてくる。


 「それがいつもより大人っぽくて可愛くて」


 「・・・それで」


 あー、だめだ。手が自然と扉の方に伸びていく。どうせ楽しく彩夜と話している中には結理だっているんだろう。お兄ちゃんだって妹が可愛くしている姿を見たいのに。


 「いいんですか? 邪魔しないで、お兄ちゃん! お兄ちゃんなんか嫌い! なんて言われちゃうかもしれませんよ」


 「それは嫌だ! でも・・」


 「秋翔、普通に見せてって言えばいいじゃん」


 「葉月、いつからそこにいたんだ?」


 葉月はひっそりと後ろに立っていつ声をかけて驚かそうかと企んでいることがよくある。


 「二人がいつも通りの会話を始めたところから」


 「・・・彩夜には言わないで」


 「わかってるって。理解のある幼馴染だからね」


 「それで?」


 葉月が簡単に言うことを聞いてくれるわけがない。


 「ねえ文化祭・・私と一緒に回ってよ」


 「それだけでいいの?」


 表面はいつも通りにしつつも本当はとても嬉しい。ずっと誘おうか誘わないでおこうか迷っていたから。


 「うん! 連れ回すし荷物持ちにだってするんだから」


 「・・うん」


 葉月は俺のことなんかをどうして誘ってくれたんだろうか? とても聞けないけれど。


 「せんぱーい、なんかいい感じですね」


 「アリスちゃん、違うからね! 荷物持ってくれる人なんて秋翔くらいしかいないからだからね!」


 やっぱりそうなのかな? ただの幼馴染・・・。


 「そう! 俺は昔から葉月専用の荷物持ちだからな」


 「ねー」


 でも、自分から誘えたらよかったのに・・


 「葉月」


 「なに?」


 「・・一緒に劇・・みよう」


 「・・うん! いいよ!」


 そのまま二人で観客席に移動した。


 かわいい妹に飲み物を渡すことをすっかり忘れて・・


 それに気付くのは劇が終わって彩夜に何で持ってきてくれなかったの!と怒られる時だが、この時の俺は浮かれていてそんなことになるなんて思いもしなかった。


 


 


 


 


 



 


 


 

読んで頂きありがとうございます。

彩夜ちゃんメインのお話しではちょっと短かったのでお兄ちゃん目線のお話を足してみたら意外と面白いことになったかな?と思います。

次回は文化祭なお話になる予定ですが、文化祭でのドキドキはあるんでしょうか?

次話も読んでいただけると嬉しいです。

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