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彩る夜に結ぶ  作者: 浅葱 咲愛
三章 青春
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十五話 お泊まり会2


 みんなで大きな机に宿題を並べてそれぞれ解いていく。


 「お兄ちゃん、これなに? 線が曲がってるよ。どうなってるの? 反比例?」


 「あー、これはそういうものだから。計算して一回グラフを作ってみればわかると思う。」


 「うん」


 言われた通りにやってみたら思ったより難しくない。数学は得意だから分かれば簡単に解ける。


 「高校になったらもっと難しくなるから。二次関数っていうのがあって左右対称の曲がった線が上下左右に動くんだよ」


 「秋翔、それ教えて! 通っている座標しかわかってないときの方程式ってどうやったらわかるの?」


 「あー、それはこうしてこうして・・・できた」


 「そんな簡単にわからないから聞いてるの! もー、なんで動くの!」


 「そういう問題だから」


 高校生は大変らしい。私にはよくわからない単語がたくさんある。


 「彩夜ちゃん、私は国語をしてるんだけどね。これ、あ・い・う どれだと思う?」


 「えっと・・・あ」


 「そっか」


 みーちゃんが聞いてきたのは古文の問題だった。私は古文は得意だからある程度わかる。


 「みーちゃん、彩夜ちゃん、英語わかる?」


 「わからない!」


 「私もー」


 「結理ー、わかる?」


 結がわかるはずないのに。


 「どれ?」


 「これ、単語の綴りが分からなくて」


 「これは・・こうだよ」


 「え! わかるの!」


 「覚えた」


 そんな・・・英語というものを知って数ヶ月の結の方がわかるなんて。


 「漢字を覚えるのとあんまり変わらないよ」


 「どこが!? 全然違う!」


 「結理、勉強ができない仲間だと思ってたのに」


 幼馴染の私たち三人では宙が一番勉強ができない。と言っても私とはどんぐりの背比べで宙は全教科でほぼ平均点をとり、私は凸凹した成績だからなんとなく私の方が勉強ができるように見えているだけだ。


 「・・・ある程度はできるけど。やっと文字も読めるようになってきたし」


 「できるようになるのが早いよ!」


 こちらに来てから二ヶ月も経っていないのに!


 「でも数学と理科は意味がわからないよ」


 そんなのわからなくて当然だろう。


 「だってこんなの昔覚えさせられたのに比べたら簡単なんだよ」


 どうせ教えてくれないんだろうけれど、一体どんな所で育ったんだろう?


 でも一度諦めれば疑問を持つくらいで済んでいる気がする。


 あんな、嘘で作ったような顔を向けられるよりは諦めて気にしないほうがずっといい。








 「そろそろ昼食にしようか」


 気づけば十二時になっていた。


 「もう勉強しなくていい?」


 「いいよ。チャチャっと作ってくるからそれまで好きにしてて」


 「やったぁー」


 そのまま畳に横になる。もう疲れた。こんなに真面目に勉強したのはいつぶりだろうか?


 「彩夜、いい年なんだからごろごろするのは・・」


 結がまたお兄ちゃんみたいなことを言ってくる。お兄ちゃんよりうるさいかな?


 結はあっち育ちだからなのかこれは予想だけれど良いところ育ちだからなのかこういうことに特にだめだと言ってくる。こっちはもうちょっと緩いのに。


 「みーちゃん、宙、ちょっとごろごろするのくらいいいよね」


 「私もごろごろしようかなー」


 「いいよいいよ。昔はここで並んでお昼寝だってした仲なんだから」


 「そんな時のこと覚えてないって」


 「俺も覚えてないなー。ばーちゃん達からそんなことがあったって言われるだけだもん」


 私たちはいつから仲が良いのかもわからないくらいの仲だ。


 「結もごろごろしたら? 畳って気持ちがいいよ」


 「ごろごろはやめとくよ」


 別に強制するようなことでもないからまあいいか。


 「いぐさのいい香りがするんだよ」


 「そういえばいぐさってそろそろ刈り取る時期だよね」


 そして何故か雨の日にあっていることが多い。


 「そしたら田植えだね」


 「もう夏だね」


 「夏休みは何する?」


 「どうする?」


 「川で遊ぶのは?」


 結が珍しく意見を言ってきた。けれど・・。


 「川は危ないからダメって言われるよ」


 「川って事故が多いらしいから」


 「釣りでもする? それなら中には入らないから安全じゃない?」


 「釣りって面白い? 手掴みで取ったほうが早くない?」


 結は少し感覚がずれている。山の中で何年も暮らしていたせいだろうけれど。


 「結、普通の人は魚を手掴みで捕まえられないから」


 「そうなの?」


 「そうなの」







 お昼ご飯の後・・



 「みーちゃん何して遊ぶ?」


 「何がいいかなー。あ! 宙、室内隠れ鬼してもいい?」


 「いいよ。じーちゃん達には許可取ってあるから」


 「じゃあ、隠れ鬼しよう。誰が鬼する? あ、お兄ちゃんが鬼してよ」


 私は逃げる側がしたい。私は足が遅いから鬼側になってもなかなか捕まえられない。


 「隠れ鬼って・・小学生じゃないんだから」


 「いいじゃん。楽しいよ。ここくらい広くないと室内でなんてできないよ」


 「彩夜、隠れ鬼って何?」


 「かくれんぼと鬼ごっこを合わせた遊びだよ。だから見つかっても捕まらない限り逃げられるの」


 逃げるのが遅い私にはただの鬼ごっこより楽しい遊びだ。


 「結理、子供っぽいと思わない? こんな歳になって隠れ鬼しようなんて」


 「んー、そうかもしれないけど本人達が楽しそうだし」


 結まで子供っぽいって思ってるんだ。


 「でもね、大人が全力で鬼ごっこのような事をするテレビ番組だってあるんだよ」


 「どちらかというとあれはケイドロじゃない?」


 「そうだね」


 だから中学生の私たちがしても問題ないはずだ。


 「だからー、お兄ちゃん。鬼してよ」


 「仕方ないなー。ほら、30秒数えるからな」


 お兄ちゃんはなんだかんだ面倒見が良くて昔からこうして遊んでくれる。


 「早く逃げなきゃ」


 「隠れないとー」






 

 「・・・来ないね」


 建物の奥にある和室でみーちゃんと二人ヒソヒソ話す。


 足音も何もしない。するのは外から聞こえる雨の音だけ。


 「早くどこかに隠れないと・・」


 「そうだね」


 とりあえず鬼から一番遠いここに逃げ込んだけれどこの部屋には隠れるところが何もない。


 「私、違うところに行くね。彩夜ちゃんも早く移動したほうがいいよ」


 「うん」


 みーちゃんは部屋の外に出ていく。どうしようか。私もどこかに隠れないといけないけれど・・


 襖をそっと開けて外の様子をみる。ちょっと薄暗い廊下。どこか不気味。大丈夫。誰も居ない。


 足音を立てないようにそっと移動していく。すると・・・


 「どこにいるんだ?」


 近くからお兄ちゃんの声がする。それとタンッ、タンッと襖の開く音。静かな廊下に音が響く。


 だんだん近づいてくる。どこかに隠れないと!


 とりあえず近くの部屋に入ってそこの押し入れに入り込んで扉を閉める。


 ちゃんと入っても良いと言われてるから大丈夫だ。


 「ふう・・」


 体の向きを変えようと動くと・・腕に暖かくて柔らかいものがふれて・・・顔を上げると・・


 「! きゃ」


 思わず驚いて悲鳴をあげようとしたところをばっと口を塞がれて声にはならなかった。


 「静かに」


 わかったから!ととりあえず頷く。早く口から手を離してほしい。


 「結も・・・ここに居たんだ」


 「彩夜もくるなんて思わなかったよ」


 押し入れの中は真っ暗だ。でも結の瞳は輝いている。結は暗くてもある程度見えるらしいから今も私の姿がはっきり見えているのだろう。


 「やっぱりその瞳、便利だね」


 「そう? いきなりどうしたの?」


 「真っ暗でも真っ暗にはならないから怖くないのかな?って思ったの」


 「・・この眼が見えるのってそれだけじゃないんだよ。余計なものまで感じられる」


 「?」


 私からは結の姿ははっきりとは見えない。めんどくさそうにちょっと遠くを見ながら困った笑みを浮かべている気がする。


 「見てみる?」


 「見れるの?」


 「多分。やってみようか。彩夜、動かないで」


 「うん」


 顔を手で包まれて結が近づく。だんだんあったかくなってきて・・一気に明るくなった。


 「すごい。明るいよ」


 「・・・・うん。だって扉が開いてるからね」


 結がそっと私から離れていく。明るいから表情までしっかりわかる。なぜか余裕のない笑みを浮かべている。無理矢理笑っているような感じだ。


 「ゆーいーりー!」


 「あ、お兄ちゃん」


 扉はお兄ちゃんが開けたらしい。しっかり押し入れにはまっているから逃げられなさそうだ。


 「あ、秋翔くん・・・誤解しないでね。違うから」


 「彩夜にふれてそんなに近づいておいて何が違うって? 誤解しないでとか言う時点でそんなことをしようとしていたんじゃないのか?」


 またお兄ちゃんが怖い鬼モードに入ってしまっている。


 「違う、ちょっと・・・その・・・実験をしてただけで・・・」


 結はそっと押し入れから這い出て・・・


 「結理! 待てー!」


 「わあぁー! 鬼が来るー!」


 さすが結。うまくお兄ちゃんに捕まらずに押し入れから出ていった。お兄ちゃんはそんな結を追いかけて行ってしまう。


 私は運よく捕まらなかった。


 「誰かー、助けてー!」


 そうしてしばらくお兄ちゃんと結の鬼ごっこが続いた。


 結曰く、お兄ちゃんは本当に鬼だったらしい。


 


 


 


 

 夜

 

 「歯磨きしたの?」


 みーちゃん達とのんびりしながらトランプで遊んでいると葉月ちゃんがそんなことを言ってくる。


 「まだー」


 「もう9時だからね」


 なんだかお母さんみたいだ。


 「もう9時なの?」


 「早いー」


 「もっと遊びたいよー」


 楽しい時間は早くすぎるもので気づけば夜になっていた。


 もうちょっとダメ?と葉月ちゃんを見上げる。


 「そんな顔をしてもダメだから。そんな顔が通用するのは男子が相手の時だけだからね」


 お兄ちゃんならこれでちょっとは聞いてくれるのに。


 「もうお風呂も入ってるし、もう少しだけー」


 そうだ。することなんてあとは歯磨きくらいしか残っていない。


 「葉月ちゃん、ちょっとくらいー」


 幼い子供みたいに言ってみる。


 「ダメ!」


 「あー」


 しっかりトランプを取り上げられてしまう。


 「もう寝る時間だからね」


 「・・はーい」


 「結理くんと宙の方が良い子じゃない。二人はすぐに歯磨きもしにいったんだから」


 そんなことを言われても・・・


 「ほら、早くしなさい」


 「お姉ちゃん、そんなに言わなくてもわかってる!」


 言われると何か言い返したくなるものだ。


 



 十分後


 「歯磨きしたよ」


 「葉月ちゃん、トランプ返してよー」


 「ダメ。もう寝る時間でしょ」


 「えー」


 「遊ぶなら明日にしなさい」


 まだ9時だからもう少し起きていられるのに。葉月ちゃんは返してくれる気は無いらしい。


 「・・・あれ? お兄ちゃん達は?」


 さっきまでその辺にいたはずなのに居なくなっている。


 「もう部屋に行ったけど?」


 「・・・そうなんだ」


 お兄ちゃん達が部屋に行ったならこれ以上粘るのは難しそうだ。


 「どうせ部屋でもまだしゃべるんだから早く布団に入って」


 「みーちゃんと同じ部屋なの?」


 「私も一緒だけどね」


 葉月ちゃんも話が合うから居ても問題はない。


 「やったぁー、彩夜ちゃん寝るまで話そうね!」


 「あ、今月の新刊の話はしてなかったからその事を話そうよ」


 「そうだった。あれの続きとってもよかったよ。ぜひ読んで!」


 「うん!」


 「早く部屋に行きなさい」


 「「はーい」」


 部屋に入って布団を敷く。みーちゃんが真ん中で私がその右、葉月ちゃんはその左だ。


 「お布団ふかふか・・」


 「眠い・・・」


 「おやすみ・・・」


 遊んで疲れていたのかすぐに眠ってしまっていた。


 


 


 


 


 


 


 


 


 

 

読んでいただきありがとうございます。

投稿が遅くなってしまいすみません。少し忙しいのともう少し一話一話丁寧に書きたいと思ったのでこれから投稿が遅くなることがありそうです。

内容をどうしようかと悩んでいるときに前に頂いた感想を読み返していたらとてもやる気が出ました。ありがとうございます。

お泊まり会はあと一話分続きます。そしたらいよいよ文化祭のお話です。

次話も読んでいただけると嬉しいです

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