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彩る夜に結ぶ  作者: 浅葱 咲愛
三章 青春
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十四話 お泊まり会1



 朝


 今日も雨が降っている。だから廊下は薄暗い。でも昨日よりは雨が降っていないのかな?


 部屋を出ると結もちょうど部屋から出てきたところだった。


 「彩夜、おはよう」


 「おはよう」


 結は寝起きらしい気配もなくて、きっといつも通り早くから起きていたのだろう。


 お昼寝をしたからか、私もお兄ちゃんに起こされる前に起きることができた。


 「なんでこんなに騒がしいの?」


 雨の音に負けずにどこからか小さい子の声が聞こえる。


 「昨日同居人が増えたじゃん」


 結が呆れたように言う。


 「そうだった。忘れてた。・・・はぁぁー」


 昨日の夕食の時はとにかく疲れた。向こうからはよく知っているように話されるし、やっぱりお兄ちゃんの機嫌は悪い。そしてそれをよくわかっているおじいちゃんとおばあちゃんはどうにかしようと色々な話を振っていた。けれどお兄ちゃんは無反応だから私たちが代わりに答えたりなんたりと・・。


 「お姉ちゃん、おはよう」


 増えた同居人の子供達の中で一番大きい小学六年生の女の子だ。名前はまだ覚えれていない。


 「おはよう」


 挨拶をすればその子はそのまま通り過ぎていく。 


 お姉ちゃんと言ってくれるが、この子はクラスの中心にいるような明るくて元気いっぱいのようなタイプで流行にも乗るような子だ。私とは違いすぎてどうしたらいいかわからない。


 「彩夜より大人っぽい子だよね」


 「うん。だって昨日なんかおしゃれな雑誌みたいなの読んでたよ。今日の服も流行のだし・・・都会の子って違うね」


 友達が少ないから都会と田舎の差なのかはわからないけどみーちゃんはそんなのを読むタイプではない。ついでに流行にも興味がない。服も自分が好きなものを着ている。


 「そうだね。昨日、ヤモリに驚いてたよ」


 「うわぁー。ヤモちゃんなんてそこらへんにいっぱいいるのに。可愛いのに」


 そんな私とは違いすぎる子と仲良くなれるかな?


 「可愛いのはわからないなー」


 「ヤモちゃんは可愛いの!」


 「蛇は苦手じゃん」


 結が蛇の話を出してきたけれど聞かなかったことにする。


 「彩夜、結理、おはよう」


 「おはよう」


 「え!」


 お兄ちゃんが今寝起きですと言った感じで部屋から出てきた。


 「やったぁー! お兄ちゃんより早く起きれたよ!」


 「やっぱり彩夜が一番可愛いよ」


 「・・お兄ちゃん、大丈夫?」


 お兄ちゃんはよくこんなことを言うけれどいつもと何か違う気がする。ぼーっとしている気がするしいつもより元気がない?


 「彩夜、今日の放課後に部室に遊びに行ってもいい?」


 「多分いいけど・・・暑いよ。部長達の熱気がすごくて」


 お兄ちゃんのことだからいつかくるとは思っていた。


 「それでもいいよ。あ、葉月も誘っていこうかな」


 「葉月ちゃんって誘ったら来るの?」


 いくら幼馴染とはいえ同性じゃない高校生の二人は学校でも仲良くしているのだろうか?


 宙だって年齢が上がるにつれて一緒にいることが減っている。


 「荷物を持てば文句を言いながら着いてきてくれる」


 「秋翔くんは葉月ちゃんの下にいるんだ」


 「みーちゃんと宙みたいな感じだと思うよ」


 お兄ちゃんはなんでもできるすごいお兄ちゃんだけれど葉月ちゃんには勝っているところを見たことがない。


 「あー、そうなんだ。なんかわかる気がする」


 「はあぁー、今日も学校かー。やだぁー」


 「金曜日なんだから今日行けば明日から休みだよ。それに明日は光月ちゃんと遊ぶんでしょ」


 「うん。色々決めないと行けないから行かないと!」


 お泊まりだから一日中遊べる! 何をしようか考えるだけでも楽しい。


 「なんの話?」


 結と二人で話しているところにお兄ちゃんが入ってくる。


 「あれ? 言ってなかったっけ?」


 「聞いてない」


 「宙とみーちゃんと結と私の四人で宙のおじいちゃん家に泊まって一日遊ぼうっていう話があって」


 そういえば昨日は帰ってきたら色々あって言い忘れたのかもしれない。


 「いいよね、お兄ちゃん!」


 「え・・・」


 お兄ちゃんは嫌そうな顔をする。これはもうちょっと言わないといいと言ってもらえなさそうだ。


 「結がいるから危ないことはしないよ!」


 「それは心配してないけど」


 「そうなの? 結には危なっかしいって言われるけどなー」


 環境の差なのかな?


 「梅雨なのに? できる遊びって少なくない? 花火とかできないし」


 「だって夏休みは宿題があるし、お盆もあるから遊ぶ暇ってあんまりないんだよ。宙は今年も旅行に行くって言ってたし、みーちゃんもおばあちゃん家に遊びに行くって言ってたの」


 そうなると三人で遊べる日はなんだかんだでとても少なくなる。


 「だから、だめ?」


 「・・・考えとく」


 お兄ちゃんはそれだけ言ってリビングの方へ行ってしまった。


 「・・・こうなったらあの手を使わないと!」


 今の状況ではいいと言ってもらえる確率が低い。


 「何するの?」


 「結も協力して!」








 そして放課後


 朝言っていた通りお兄ちゃんは葉月ちゃんをつれて部室にやってきた。


 「久しぶりにここ来たなー」


 「秋翔は毎年駆り出されてたもんね」


 結局二人は仲が良さそうにやってくる。お兄ちゃんはどこか懐かしそうだ。


 ちゃんと葉月ちゃんの荷物もお兄ちゃんが持っている。


 「あ、秋翔先輩! 私に会いに来てくれたんですか!」


 部室の奥にいたはずのアリス部長がいつの間にかお兄ちゃんのところに飛んできていた。


 「アリス、違うよ。なんでアリスに会いに来ないといけないんだ? 俺はただ彩夜の様子を見にきただけだ」


 お兄ちゃんはアリス部長にとても冷たいらしい。私と話す時の声のトーンと真逆だ。


 「秋翔先輩は相変わらずですね。葉月先輩は?」


 「秋翔が荷物を持ってくれるって言うからついてきたの。私は妹のことなんか見にこないし」


 「なーんだ。付き合い始めた報告かと思ったのに」


 アリス部長はサラッとそんなことを言った。


 アリス部長とお兄ちゃん達はそれなりに親しい仲らしい。お兄ちゃんにこんなことを言うのだから。


 「あ、アリス。 そ、そんなわけないだろ!」


 「アリスちゃん、お願いだから妹の前でそんな話をしないで! 光月、違うからね。秋翔とはそんなんじゃなくて・・」


 二人ともとても動揺していて真っ赤になっている。慌てて違う!と言っている。見ててとても面白い。


 「お姉ちゃん、私ちゃんとわかってるから。違うんだよね」


 「そう!」


 きっとみーちゃんの『違うんだよね』はそんなんじゃないというのが違うんだよねと言う意味だろう。


 「ね、彩夜ちゃん」


 「うん。わかってる!」


 二人が誰を好きなのかちゃんとわかっている。


 「結理、あの二人見てよ。兄と姉の恋バナを楽しそうに見てるよ」


 「見てるよ。でもそんなこと、秋翔くんはわかってないんだろうな」


 後ろで宙と結がヒソヒソ言っている。兄の恋バナを楽しんで何が悪いんだろうか?


 するとアリス部長がお兄ちゃんに音も立てず滑るように近づいて・・。


 「秋翔先輩、私知ってるんですよ。あれとかこれとか」


 「? なんのことだ?」


 「えっとですね・・・・ーーーーーーーー」


 アリス部長はお兄ちゃんに他の人には聞こえないように伝えて・・・お兄ちゃんは青くなったり赤くなったり。一体何を言っているんだろうか?


 「どうですか? 今年は裏方として手伝ってくれませんか? ついでに可愛くて大好きな妹さんをとても近くで見ることができますよ!」


 「手伝おう」


 「ありがとうございます!」


 お兄ちゃんが返事をした途端、部長はパァッと笑顔になった。


 「彩夜ちゃん、とても返事が早かったね」


 「みーちゃん、返事が早かったのって弱みを握られてるからだよね。私を近くで見たいからじゃないよね?」


 もしそうだったら引く。流石にシスコンが行きすぎてると思う。


 「秋翔、妹に引かれてるよ」


 「え! なんで!」


 「・・・お兄ちゃん、手伝う理由って弱みを握られてるからだよね?」


 恐る恐る聞いてみる。


 「違うけど」


 「え!」


 じゃあまさか本当に?


 「秋翔のことだから家に居たくないから手伝うって言ったんじゃない? そうでしょ」


 葉月ちゃん、そうなの?


 「そうです」


 お兄ちゃん、なんで葉月ちゃんに敬語なの? そんなに小さくなっているの?


 「え?なに?何かあったの?」


 そうだった。みーちゃん達には言ってなかった。


 「色々と」


 「ざっくり言うと昨日突然彩夜達の両親と兄弟が家に来た」


 結が簡単にわかりやすく説明してくれる。


 「え! 居たの!」


 「そうみたい」


 「どう?」


 どう?と言われても・・


 「私的には同居人が増えたなーくらいにしか思ってないから」


 けれどお兄ちゃんは違う。この話もあまり長引かせない方がいいだろう。


 「葉月ちゃん、お兄ちゃんがお泊まり会をだめって言うの!」


 「あー・・・秋翔も着いていけば?」


 葉月ちゃん、友達と遊ぶのにお兄ちゃんはいらないよ。妹としては邪魔だよ。


 「いや、でも」


 「あ、いいよ」


 宙がとんでもないことを言い出した。この年にもなってお兄ちゃん同伴なんて嫌なのに。


 「なんで!」


 「だって明日うちの兄ちゃんもそこにいて・・・絡んできそうだから秋翔くんが兄ちゃんの相手をしてくれるなら」


 それならいいかな? 邪魔しないかな?


 「私も行っていい? 秋翔と食事は作るよ」


 「葉月は料理下手だろ。居たら作れない」


 「それは昔の話でしょ。盛り付けるくらいできるよ!」


 「それ、料理って言わないから」


 「秋翔先輩、葉月先輩、結婚式には呼んでくださいね!」


 しばらくおとなしくしていたのにまたアリス部長がからかって遊び始めた。


 「アリスは絶対に呼ばない!」


 「お兄ちゃん、私は呼んでくれる?」


 私は一度も結婚式に行ったことがない。お兄ちゃんの時は行ってみたいけれど・・。


 「彩夜ちゃんは妹だから出れるよ。私もお姉ちゃんの妹だから出れるし・・宙と結理くんも呼んでくれる?」


 「うん。それくらいいいけど」

 

 「先輩、認めましたね。葉月先輩との結婚式」


 「いや、あ、ほら、知り合いだから誰と結婚したって呼ぶかなって思っただけだし。葉月は関係ない」


 「そうだよ。私だってずっと見てきた妹の友達は呼んでいいと思うよ」


 誤魔化そうと頑張っているようだけれど誤魔化せていない。見ているのは面白いけれどでもこれくらいで終わらせてあげよう。


 「お兄ちゃん、明日はいいんだよね」


 「・・いいよ」


 「やったぁー! みーちゃん、いっぱい遊べるよ!」


 「うん! どうする? なにする?」


 「なんか楽しそうでいいなー。そうだ! 紗羅ちゃん、私たちも遊ぼうよ」


 「えー、部長とは遊びたくないですね」


 「紗羅ちゃん冷たい!」


 「そうですか」


 雨がたくさん降って外は暗いけれどこの場はとても明るかった。







 翌日


 「おはようー!」


 「おはよう。みーちゃんはもう来てるよ。早く入って」


 宙のおじいちゃん家の玄関で傘を畳む。今日も雨がたくさん降っていてカエルがたくさん鳴いている。


 「うん。みーちゃんどこにいるの?」


 荷物はお兄ちゃんが持ってくれてるから私は手ぶらでここまで来た。


 「奥のいつもの部屋」


 「わかった。お邪魔します」


 お兄ちゃんが荷物を運んでとか傘畳んでとか言っていたような気もするが聞かなかったことにしてみーちゃんのところに行く。早く遊びたい。


 「みーちゃんおはよう」


 「彩夜ちゃんおはよう。二人は?」


 「荷物を部屋に運んでる」


 「持たせたの?」


 「持ってくれたの」


 持たせた訳じゃない。頼んでないけれど持ってくれた。


 「なにする? ここってボードゲームとかあったよね」


 「どうする? あの小説の新刊も持ってきたよ!」


 したいことがたくさんある。どうしようかなー。


 「二人とも楽しそうなのはいいけれど・・」


 「まずは宿題とテスト勉強」


 お兄ちゃんと葉月ちゃんに笑顔で言われる。私にはその笑顔が黒く見える。


 「せっかく遊びにきたのに?」


 「宿題はいつするつもりなの?」


 「うっ・・」


 「テストはもう少し先だよ」


 「うん。文化祭が終わったら次の週から始まるけど?」


 なんで中学校のテストの日まで把握してるの?


 「でもー!」


 「あ、私持ってきて無いよ!」


 バックに勉強道具を入れた覚えはない。これで勉強はできない!


 「結理」


 「はい」


 お兄ちゃんが呼ぶと結がやってきて、その手には・・なぜか私の勉強道具。


 「お兄ちゃん、勝手に部屋に入ったの?」


 「結理の部屋に置き忘れてたのを持ってきただけだ」


 そうだった。結局全くしてないけれど宿題をしようとして持っていってそのままだった。


 「結、お兄ちゃんに渡すなんて・・」


 裏切りだ。遊びに来たのに・・・。


 「終わったら遊んでいいからね」


 「わからないことがあったら教えるから」


 「ノートを広げて」


 「遊びたかったら早く解いて」


 しっかりお兄ちゃんと葉月ちゃんに監視されながらのお勉強がはじまった。


 

 


 


 


 



 


 


 


 

読んでいただきありがとうございます。

このお話で六十話目のようです。全体のお話の半分も来ていないので終わるときには何話になっているのでしょうか?

お泊まり会の話は短めにして早く文化祭を始めたいと思います。

次話も読んで頂けると嬉しいです。

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