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彩る夜に結ぶ  作者: 浅葱 咲愛
三章 青春
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十一話 そして本番へ2


 その頃、保健室


 保健室は涼しくて結構快適だ。ただ電気を付けていてもやっぱり暗いから少し不気味で、それに加えてジメジメしていて壁の結露がすごい。


 梅雨の学校の壁はあちこちこうなっている。


 「彩夜ちゃん、それでどうしたの? お兄ちゃんの愚痴なんかを言いにきたんじゃないんでしょう」


 やっぱり燈依先生にはバレてる。そうじゃないかとは思っていたけれど・・。


 「喧嘩した訳では無いんですけど・・・結とずっと微妙な空気になっててどうしたらいいですか?」


 「いつからそうなってるの?」


 「えっと・・・一ヶ月前くらいです」


 「そんなに? ずっと微妙な感じなの?」


 先生は私が幼い頃のこともよく知っているし私が長く喧嘩したままなんてことが無いことを知っているからどうして?といった感じで見ている。


 「普通に話す時もあるんですけど、やっぱり気まずくなる時があって」


 「結理くんが何か言ったの?」


 「いや、私が悪いような・・つい・・・結が何か悩んでるみたいだからどうしたのって聞いたんです。でも無理矢理聞き出すのも良くないと思って・・・何かあったら相談してねって言ったんです。そしたら彩夜には言わないって・・」


 「それが悲しかったの?」


 そうかもしれない。この気持ちがなんと言うのかはっきりわからなかったけれど言われてピッタリはまった気がする。


 「多分。私は結と居たら安心するし・・お兄ちゃんとかみーちゃんたちみたいな大事な人なんだと思うから・・・それは一方的なのかな?って思っちゃって」


 私は知らない場所、向こうに行ったばかりの時分からないことばかりで不安だった。それで結とずっと頼った。でも結はそうでもないのかな? 迷惑だったのかな?


 あの時はこっちに結が来て一ヶ月も経っていなかったから他に相談する人も少ないと思って言った。相談しないならそれはそれでよかった。


 「どうして結理くんにそう言ったの?」


 「話した方が解決することもあるかな?って思ったんです。もっと前にも結が色々悩んでたことがあって、だから私は相談とかどうでもよくて結が変にならなかったらいいなって思っただけなんですよ」


 「なんとなくわかったけど・・・すれ違ってるんじゃない?」


 「そうなんですか?」


 どこら辺がすれ違っているんだろうか?


 「私から見たら結理くんは十分彩夜ちゃんを頼ってるのよ。私は本人じゃないから分からないけれど・・例えば相談しないって言ったのは心配させないため・・とかかもしれないわよ」


 そっか。そういうこともあるんだ。


 「でも、結は少し私を避けてるように見えます」


 「彩夜ちゃんが避けてるんじゃないの? それで結理くんも避けてるとか?」


 「そうなんですか?」


 「あくまで私の勝手な想像だからね」


 私は結を避けてるの? そんなつもりなかったのに・・でもどこか嫌で避けているのかもしれない。


 「それでどうしたいの?」


 「前みたいに・・仲良くしたいです。何も気にしないで楽しくしたい」


 「・・・そう言ってみたら? きっと二人とも悪気なんて一つも無かったと思うの。だから思ってることを言えばすぐに仲直りできると思うわよ」


 「お兄ちゃんとは喧嘩しても次の日には忘れてるし、みーちゃんたちとはほとんど喧嘩したことがなくて・・・仲直りの方法がわかりません」


 「・・・簡単に思ってることを言ってみたら? 私に言ってくれたみたいに」


 簡単だけどとても難しい。なんでこんなに・・・。


 「彩夜ちゃん、おやつでも食べて行かない?」


 「いいんですか? ここ学校ですよ」


 高校はおやつを持って行っていいけれど中学校までは禁止だ。


 「私たちの秘密ね」


 「はい」


 先生が冷蔵庫からカップケーキを出してくれる。


 「美味しそうですね」


 「家から持ってきたの。私が食べようと思ってね。彩夜ちゃんにはおすそ分け」


 「ありがとうございます」


 手作り感のあるカップケーキで何種類か味があるらしい。


 「ちょっと待ってね。お茶も用意するから」


 「そういえば冷蔵庫使えるようになったんですね」


 ちょっと前は壊れていて使えないと言っていたはずだ。


 「やっと新しいものを買ってもらえたのよ」


 「新品ですか。いいですね」


 「そうなの」


 「このカップケーキは手作りですか?」


 先生が作ったのかな? と思いつつ聞いてみる。


 「そうなの。前に話した同居人?が作ってくれて、どう? 食べてみて」


 「いただきます」


 チョコ味と思われるものを取って口に入れる。


 「ちょうどいい甘さで美味しいです。ふわふわだし、いいですね。これ」


 「ならよかったわ。これを作った人はね、もともと器用なんだけど私が教えたカップケーキを私より上手につくちゃったのよ」


 「すごいですね」


 「毎日ご飯は作ってくれるの。それはありがたいんだけどすぐに絡んできてやっぱりめんどくさいのよ」


 「そうなんですか」


 こんな燈依先生と仲良く暮らしている人ってどんな人なんだろう? 勝手な予想だけど普通の人では無い気がする。


 「今度うちに遊びにくる? そのカップケーキがいっぱいあるわよ」


 「いいんですか? 先生がいいなら行きたいです!」


 「私は彩夜ちゃんがきてくれたら嬉しいのよ。その時は狐くんも連れてきとくからね」


 「はい! 文化祭が終わった頃・・・夏休みになってからってどうですか?」


 「その頃には梅雨も明けてるだろうしいいかもね」


 「でも次は台風の時期ですね」


 この辺りは台風が来れば近くに来なくてもすぐに影響が出る。それに台風の通り道になることもよくある。


 「今年も台風で学校休みになりませんかね?」


 「どうかしら?」


 「休みにした時って大体被害なんて何も無い時だから実質ただの休みですよね」


 「あれって何なのかしら? 急にそれたり弱くなったり・・何も無いのが一番だからいいけどね」


 「そうですね」


 ここは山が近いからたくさん雨が降ると土砂崩れが心配だ。


 「まあ、気が向いたら遊びに来てね。結理くんも一緒にね」


 「結はどうですかね? 休みの日も家にいることが多いですし・・」


 お兄ちゃんと私は買い物とかで出かけても結は家でお留守番していることが多い。私が何度も誘わない限りついて来てくれない。


 「あ・・・たまに一緒に出かけてくれるんですけど、その時はいっつも私が何度も誘った時で・・・しつこかったですか? それで嫌になったのかも?」


 「彩夜ちゃん、きっと結理くんはそれが嫌なんて思ってないから」


 「でも静かだから言えないでいるだけかもしれないですよ!」


 「・・・今度それとなく聞いてみるから、ね。まだ決まった訳じゃ無いから」


 「・・・はい」


 お兄ちゃんに接するようにして結にも甘えすぎているのかもしれない。


 みーちゃんといる時もみーちゃんの方が私よりしっかりしているから私は少し甘えているところがあると思う。


 たいして付き合いが長く無いのにそんなふうに結に接したら・・・。


 「そんなに落ち込まないで。ほら、カップケーキ食べて元気出して」


 「ありがとうございます」


 「・・・彩夜ちゃん、それだけ考えれるようになったってことはそれだけ大人になったってことなんじゃない? まだ中学一年生なんだし、そこまでしっかり考えられるなら十分よ」


 「はい」


 結に嫌われたくない。仲良くしたい。


 「彩夜ちゃんは本当に結理くんが大好きなのね」


 「そう・・ですね。でも・・難しいですね。みーちゃんとかと接するみたいにしてもうまく行かないんです」


 「そうなのね」


 「私、結とはずっと居られないってわかってるから・・今のうちに仲良くして・・・別れる時は思い残すことがないくらい楽しんだ後で・・・・それでさようならって言いたいんです」


 こうして違う時代の人が混ざっているのがおかしい。それは十分わかってる。


 こんな不思議なことが起きているのにはきっと理由がある。理由がなくなれば会えなくなる。それがいつなのかな分からないけれど、その時は絶対に来ると思う。


 「彩夜ちゃんの気持ち、私には良くわかるのよ。必ず別れる時は来るからそれまでにいっぱい楽しんだ思い出を作っておきたいって・・・」


 「先生のそんな人はどんな人ですか?」


 「私を底の底から引っ張り上げてくれた人。それと・・妹みたいに可愛い子。二人ともキラキラしてるの。私とは違ってね」


 先生は懐かしむような、それでいて今を見ているような表情をする。


 「燈依先生はキラキラしてますよ。とっても綺麗だと思います」


 「そう?」


 「先生は・・・雪みたいですね。キラキラしていて、冷たいものなのに冷たく感じさせない。柔らかくてふわふわそれでいて硬いです。冷たくても暖かい」


 雪はどちらでもある。だから先生にはぴったりだと思った。


 冷たいけれどあると楽しい。ふわふわだけど固めればとても硬くなる。冷たくて寒いけれどかまくらにすれば温めることもある。


 「冷たいのに暖かいの?」


 「先生に触るといつも冷たいです。でもいっつも暖かくて・・・名前にぴったりですね。燈依ってあったかそうな名前ですね」


 「・・・ありがとう。彩夜ちゃんもキラキラしてるのよ。彩夜ちゃんは・・・暗闇を照らす月みたい」


 「・・・・私は月にはなれませんよ。キラキラしたとしても明るい場所で輝くのが精一杯です。暗闇で・・・しかも一人なんて無理ですよ」


 月は一人に見える。広い空にぽつんと浮かんでひとりぼっち。どこか寂しく・・・それでも輝いてる。


 「でも月って自分で光ってる訳じゃないのよ。確か・・光を反射してるだけなの。それって一人じゃないでしょう。月は欠けたり満ちたりするの。気持ちの変化みたいにね」


 「・・・そうですね」


 新月には光はなくて消えてしまう。いつも輝いていなくてもいいなら・・。


 「月みたいになれたらいいかもしれませんね」


 「うん。・・・彩夜ちゃん、お迎えが来たみたいよ」


 「?」


 「・・・彩夜、一緒に帰ろう」


 扉の隙間から結が顔をのぞかせた。


 「・・・うん」


 先に帰ってしまったかと思った。ちょっと嬉しい。


 「荷物持った? 教室に忘れ物はない?」


 「ないって。ちゃんと確認したもん」


 結がだんだんお兄ちゃんに似て来ているような気がするのは気のせいだろうか?


 「みーちゃんたちは?」


 「二人で帰ったみたいだよ」


 「・・・そっか。先生、ありがとうございました。また明日」


 「じゃあね。気をつけて帰ってね」


 「はい」


 保健室を出て誰もいない静かで不気味な廊下を歩く。二人の足音とカバンの中で物がカタカタと動く音が廊下に響く。


 「何かいいことあった?」


 「先生がこっそりカップケーキくれたの」


 「いいなー」


 「先生が家に遊びにおいでって言ってくれたの。・・・その時は一緒に行く?」


 「・・・行く」


 


 


 


 

 


 


 

読んでいただきありがとうございます。

今回は一話丸々燈依先生との相談になってしまいました。書いていたら想像以上に長くなっていました。

文化祭が始まるにはもう少し時間がかかるかもしれません。

次話も読んでいただけると嬉しいです。

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