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彩る夜に結ぶ  作者: 浅葱 咲愛
三章 青春
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七話 毛玉2

今回は短いお話です。


 急いで走っていく彩夜ちゃんの姿が見えなくなったところで私は腕の中のもふもふをムズッと掴んでそれを睨んだ。


 「なんでこんなところにいるの?」


 なんの目的でここまで来たのかわかっているが一応確認しておく。もふもふはビクッと震えてスーッと目を逸らす。


 「目をそらさない!」


 すると小さな声で・・


 「・・・迷い込んだだけだ」


 そう言った。このもふもふは変わった見た目をしているし、このように普通に話す。もちろん普通の狐ではない。


 「嘘つかない。言わなかったら今日は夕食抜きにするわよ」


 「少しだけ会いに」


 「彩夜ちゃんにあんなにべったりくっついて。その姿ならいいと思ってるの?」


 「良いと言われるまで近づいてない」


 もふもふの中身が本当の狐ならそれでいいがこれの中身はそうじゃない。


 「女子中学生にくっついてすり寄るって犯罪よ」


 「・・・彩夜芽は嫌がってない。喜んでた」


 「すごく楽しそうだったわね」


 もふもふがだんだん小さくなっていくように見えるのは気のせいだろうか?


 「・・それが?」


 精一杯私に対抗しようとしているらしい。


 しばらく隠れて二人の様子を見ていたがどちらもいつもよりずっと安心しきっていた。やっぱり二人は今も昔も気が合うんだろう。


 「はあぁー、その見た目だからでしょう。もしかして昔からなでなでされたりしてたの?」


 本当の姿だったとしても彩夜ちゃんはこれと居たら安心するだろうがちょっとこれで遊びたくなって言ってみる。


 そう聞くとこのもふもふはぶんぶんと首を振った。


 「本当?」


 「・・・ほとんどなでなでなんてない」


 呆れるほど正直でわかりやすすぎる。


 「少しはあるのね」


 「お互い幼かった頃の話だ」


 また暴れて私の手から逃げようとするからしっかりしっぽを掴む。


 「やめろ! 元の姿に戻るんだ!」


 「嫌よ。こんなところで戻られたらすごく目立つのよ。まだ生徒たちも敷地内にいるしね。そのままでいたら私がちゃんと連れて帰ってあげる。学校に入り込んだのは良いけれど家まで帰れないでしょう」


 当たっていたのか暴れるのをやめて大人しくなる。


 「暴れないから・・・しっぽを持つな」


 「それが人に対する頼み方? 連れて帰ってあげるんだからちゃんと言いなさい」


 このもふもふもまだ若い。からかうのがとても面白い。


 「・・・しっぽを持たないでください。掴まないでください」


 よほど嫌だったのかプルプルしている。これがとてもかわいい。


 「まあ良いわ。早く帰りましょう」


 荷物を保健室に置いたままだから取ってから帰らなければならない。


 「ねえ、彩夜ちゃん何か言ってた?」


 「いつも通りたくさんは話してくれないけど伝わってくる」


 「どんな感じ?」


 もふもふはふいっと顔を背ける。


 「言いなさい。またしっぽを掴むわよ」


 「とても楽しそうだった。でも不安とか青くて暗い霧みたいな感情も端っこにはある」


 「・・・他には?」


 「たまに頭の中で知らない景色がぐるぐるすると。それが怖いらしい」


 「思い出すことを望んでないのかしら?」


 私はあの後のことを知らない。でも今ある情報からあの後のことを考えるといい思い出はあまりないだろう。


 「そうかもしれない。でも・・・二人はどうなる?」


 「そうね。私たちのことなんて後でも良いけれど・・・」


 石の中で眠る二人。あの子たちのことは思い出してほしい。でもそれを思い出すということは・・。


 「全て思い出すのと同じよね。そんな酷なことって」


 もふもふも同じことを思ったのか何も言わない。


 「私たちは待ちましょう。全て本人に任せて。その時が来たら私たちは支えれば良いじゃない」


 「俺たちには長い時間がある。だからゆっくり待とう」


 もふもふがらしくないことを言った。


 「ふふっ。夏牙、少しは大人になったのね。ちょっとは見直したわ」


 「でも・・・・たまに様子くらい見にいく」


 やっぱり夏牙は夏牙らしい。


 


 


 

読んでいただきありがとうございます。

今回は燈依さんともふもふ(夏牙)のお話でした。

夏牙は狐の姿にもなれるようです。この二人の正体は? 二人はちょこちょこ話の中に出てくる予定です。

次話は彩夜芽中心のお話に戻ります。次話も読んでいただけると嬉しいです。

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