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彩る夜に結ぶ  作者: 浅葱 咲愛
三章 青春
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四話 部長


 「彩夜ちゃん、昨日帰ったよね」


 「帰ったけど?」


 朝、学校に行くなりみーちゃんに捕まっていた。


 「時間はあるからゆっくり聞くよ。ほら、座って」


 「はい」


 みーちゃんに何かしたっけ?


 「みーちゃん、どうしたの?」


 「事情聴取」


 「? わからないよ」


 「帰って何してたの?」


 「えっと・・・結と料理作って、少し勉強して、あとは今ハマってる物語について語り合って・・」


 なんの話なのかよくわからないがとりあえず答える。


 「それで?」


 「お兄ちゃんが料理美味しいって褒めてくれたの」


 「よかったね。結理くんは褒めてくれた?」


 「いつも褒めてくれるよ。でもね、結の方が私よりずっと上手なんだよ。褒められてもどうせ結の方が上手だし」


 いつか結より料理が上手になって『おれにはこんなの作れない』って言わせてみたい。


 「それなら秋翔くんに言われてるのも一緒じゃない? でも、彩夜ちゃん大好きな秋翔くんにとっては彩夜ちゃんの料理が一番なんだろうね」


 「そうかな? ねえ、お兄ちゃんだと負けても何も思わないんだけど結だと嫌なのってなんだろう?」


 「やっぱり兄妹じゃないからじゃない? 彩夜ちゃんは結理くんのことお兄ちゃんみたいに思ってるの?」


 「・・・お兄ちゃんに似てるなとは思うけど、お兄ちゃんはお兄ちゃんだけだから・・・なんなんだろう?」


 結との関係ってなんだろう? お友達? 聞かれるたびにこう思うけれどいつも答えが出ない。


 「友達なのかな?」


 「・・・友達の定義ってなんだろうね? とってもあやふやじゃない?」


 「形がない気がする。結は友達とは何か違う気がするんだよね」


 「どのあたりが違うの?」


 「わからないなー」


 「ならそれに名前をつけなくてもいいんじゃない? 二人とも今の状態で楽しいんでしょう」


 「うん」


 話に区切りがついてふと思い出す。


 あれ? なんで私こんな話してるんだっけ? なんで事情聴取からこうなったの?


 「みーちゃん、元々なんの話がしたかったの?」


 「なんの話してたんだっけ?」


 「学校に来たらみーちゃんに捕まって事情聴取って言われたの」


 「・・・あー、そうだった」


 「もう」


 でも二人で会話していると最初の話とは全く関係ない話をしていることがよくある。どうしてそんな話になったのか不思議になるほどに。


 「昨日、部活に来てって言ったの忘れてたでしょ」


 「そうだった! ごめんね。すっかり忘れてて」


 「忘れることくらいあるし、まあいいんだけどね。今日は来れる?」


 「うん。あー、昼休みに結にも伝えないとね」


 「そうだね。これ台本。役はまだ決まってないから内容見ててくれたらいいよ」


 薄い冊子をぱらぱらとめくってみる。


 「これするんだ」


 「部長がどうしてもやりたいって言い出したの」


 書かれていたお話はこの辺りに伝わる昔話だ。


 昔、とても美しいお姫様がいた。お姫様はある時外の世界を見てみたくなってお城から逃げ出す。逃げたのはよかったけれど山の中で迷子になってしまう。困ったお姫様の前には大きな狐が現れる。その狐はお姫様をあるところへ連れて行ってくれた。そこは山の奥にあるお屋敷で、お姫様は一人の少年と出会い恋に落ちる。お姫様はそこで少年と幸せに暮らすけれど、お城から迎えが来て二人は引き裂かれてしまう。お姫様は監視されて逃げ出すこともできなかった。それから数年経ったある日、お姫様の前にあの少年が現れる。少年はお姫様をそのまま攫って二人は幸せに暮らした。


 ざっくりこんな恋愛のお話だ。


 それを少し変えているらしい。なんか面白いものになりそう。


 「部長は脚本の係だし、そっちの文章担当と裏方担当が多くて役者が足りないの。変わった部でしょう」


 演劇部なのにみんな裏方を好むらしい。入ってくる人たちもほとんどが物作りを目当てで入ってくるんだとか。それで毎年一年生が役者をさせられるらしい。


 「照明と音響、道具あと衣装の係が取り合いになるんだよね。私は本当は衣装がしたかったんだけどね」


 みーちゃんの家はここの学校の制服を全て作っている。昔は服を作る仕事を家業にした家だったらしいが学校が私立の今の状態になった時に頼まれてなり行きで制服屋さんになったんだとか。


 それでみーちゃんも裁縫とかはとても得意だ。


 「だからいい役もらえると思うよ」


 それって面倒だから押し付けてるってことだろうか?


 「きっと部長は結理くんのこと気にいると思うんだよね。部長って変わってるけどいい人だから」


 「そうなの?」


 「うん。私たちもそばにいるし、あんまり心配しないでね」


 







 放課後


 私たちはちゃんと約束を忘れずに演劇部の部室に来ていた。


 部室と言ってもたくさんある空き教室の一つでここにはたくさんの本や衣装、小道具と思われる物が散乱している。


 机の上もミシンや紙、とにかく色々散らかっている。


 「うわぁー、すごくイケメン。この青の髪って地毛なの? これは目立つ」


 「あの・・・」


 「肌もすべすべ、まつ毛も長い、見れば見るほどすごいね」


 来るとすぐに部長に結は捕獲されてじっくり観察されている。結は助けを求めてこちらを見ているが私も捕まるかと思うと助けにいけない。


 他の部員の人もいるがそれぞれ作業をしていてこっちを見ようともしない。


 「もう、離してあげてくださいよ。結理くん困ってますよ」


 みーちゃんが部長を結から引き剥がしてくれた。さすがみーちゃん。


 「あ! こんなところに美少女が! よくこんないい人材を二人も連れてきたね。光月ちゃん、今年も少しくらいなら衣装作りさせてあげる!」


 「やったあ!」


 今度は私を見つけて迫ってくる。


 「美少女じゃないですから! 平均より低いくらいですから」


 「部長! 彩夜ちゃんに何かしたら秋翔くんが怒りますよ。それでいいんですか?」


 「この子が秋翔くんがすごく可愛がってるっていう妹なの? この子のことだったんだ」


 お兄ちゃんの名前を出すと部長は迫ってくるのをやめてくれた。


 「あの・・お兄ちゃんのこと知ってるんですか?」


 「去年まで中等部にいたでしょう。秋翔先輩イケメンだったから毎年頼んで役者として出てもらってたの」


 「知りませんでした」


 確かにお兄ちゃんはイケメンだからちょうどよかったんだろう。


 するといきなりみーちゃんに肩を掴まれて


 「彩夜ちゃん、彩夜ちゃんはかわいいよ。美少女だよ」


 「みーちゃん、どうしたの? そう言ってくれるのは嬉しいけど、私は平均かそれ以下だよ。みーちゃんの方が私よりずっとかわいいよ」


 私がそういうとみーちゃんは部長を部屋の端っこまで引っ張って行って、


 「部長、彩夜ちゃんっていい子でしょう。本気でこう思ってるんですよ」


 「そうね。こんな人材滅多にいない。しっかり捕まえないと」


 「役はどうします?」


 「そうね・・」


 何やらヒソヒソと話し始めてしまった。


 「結、部長は平気?」


 「多分。なんか変わってる人だね」


 「そうだね」


 「ねえ、二人とも出てくれるの?」


 話し合いが終わったらしい部長が戻ってきた。


 「はい。私でよければ」


 「君は?」


 「いいですよ」


 「ありがとう! 今年は本当に集まらなくてどうしようかと思ってたんだよ!」


 「部長! 嬉しいのはわかりますけど落ち着いてください」


 だんだんみーちゃんが部長という名の犬の飼い主に見えてきた。


 「あ、まだ自己紹介してなかったね。私は佐藤アリス、三年、演劇部の部長、よろしくね。彩夜芽ちゃん、結理くん」


 「はい」


 「よろしくお願いします」


 「早速、役を決めようか。いいかな? 二人とも」


 「あのね、部長、急すぎるでしょう」


 「そう? でも、時間がないの。わかってる?」


 「わかってますよ。でもね」


 また二人が言い合いを始める。


 「部長、みーちゃん、やめようよ」


 宙がどこからかやってきて二人の間に入る。


 「部長、どうせなんの役をさせるか決まってるんでしょう。みーちゃん、喧嘩してる暇があるなら早くしないといけないことをしようよ」


 「はーい」


 「宙くんさすが! よくわかったね」


 「だって、この二人に合う役なんてあれの他にないでしょう」


 あれってなんだろう? あの台本にそんな役あったかな? 脇役A・Bとか? でもそれって誰でもいいよね?


 「突然だけど、二人には主役をやってもらいたいな」


 しゅやく? シュヤク・・・主役!


 「彩夜芽ちゃんがお姫様役で結理くんが少年役、そして両方主人公のお話にするの!」


 「彩夜、ねえ、主役って何? どう言うこと?」


 「主人公ってこと」


 「それでね、両方の視点からの場面を入れて、きっと良いものになると思うんだよ」


 部長が目を爛々と輝かせて説明してくれる。部長の勢いに押されてわかりましたと言いそうになるが・・・


 「あ・・待ってください。私たち素人ですし、手伝いですよ」


 「いいのいいの。毎年そんなものだから」


 なんていいかげんなんだろうか。


 「二人に合う役なんてこれしかなくて」


 「みーちゃんはどう思う? 脇役の方がいいよね!」


 みーちゃんはきっと味方をしてくれるはず!


 「二人には主役しかできないよ」


 「こんなに目立つ容姿の二人が脇役にいたら主人公が目立たなくなる。ほら、ドラマがあったとしてメインがみんな普通な顔をした人なのに脇役がなぜか美男美女みたいなことだから」


 「そうそう、ただの脇役に金髪と青髪がいたら話が入ってこないでしょう」


 確かにそうだ。


 「お願い! 他に頼める人がいないの。みんな断られちゃったの」


 ここまで頼まれるととても断りにくい。


 「結・・・どうする?」


 「・・・やってみようよ。せっかくの機会だし。面白そう」


 「・・そうだね。演技とかすごく下手かもしれませんし、セリフ覚えられないかもしれませんけど。それで良いなら」


 「ありがとう!」


 「わぁっ!」


 部長に抱きつかれた。どうしたら良いんだろう?


 「あのね、セリフなんて覚えられなくてもどこかに書いておけば良いんだから気にしないで」


 「ほぼ衣装発表会だから」


 「それは衣装担当がそう思ってるだけだから、台本担当はお話を見せてるんだから!」


 「出来るだけ頑張りますね」


 「はぁー、彩夜芽ちゃんって秋翔先輩があんなに可愛がるのもよくわかる」


 「え?」


 部長は言ってる話題がどんどん変わっていく。


 「あ、思いついちゃった。ちょっと台本一部書き換えるからね」


 持っていた台本を取られて部長はものが散乱した机ですごい勢いで何か書き始める。


 「あー、また始まった」


 「そのうちなれるよ」


 「慣れたらみんなスルーできるようになるらしい」


 「へー」


 「でもね楽しいよ」


 「ある意味青春って感じかな?」


 「楽しまないとね!」


 こんな些細なことがあんな未来につながっているなんてこの時はまだ知らなかった。


 


 


 


 



 


 

読んでいただきありがとうございます。

今回初登場の部長、光月ともちょっと違うタイプの賑やかな人です。

これから劇のお話になると思います。とても楽しそうで良いなーと思いながら書いています。

この後どうなっていくのか私の中でもぼんやりとしか決まっていません。どうなるんでしょうか?

次話も読んでいただけると嬉しいです。

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