十六話 お出かけ1
「みーちゃん、宙、おはよう!」
「おはよー、今日の彩夜ちゃんの服かわいいね」
「でしょ。このワンピースおばあちゃんが買ってきてくれたの」
今日のは紺色のフワッとしたワンピースを着ている。
「みーちゃんのもかわいいよ」
「うん。ありがとう」
みーちゃんは基本スカートを履いてることは少ない。
服の趣味は私とは真逆だろう。
「おい、そこ早く行くぞ。電車に乗り遅れても知らないからな」
お兄ちゃんは優しいのか冷たいのか・・・
「いいじゃん。秋翔はこころが狭いね」
「うるさい葉月」
「ねえ、秋翔、お弁当作ってきてくれた?」
「作った。だからこの荷物すごく重いんだけど」
お兄ちゃんだけ重そうなリュックを持っている。
「私の荷物も持って」
「はぁ? 今の話聞いてたか?」
「よろしく!」
なんか・・・
「奥さんに尻に敷かれた旦那さんみたい」
「普段の秋翔くんはお母さんって感じだけどね」
「夫婦っぽい」
半分わざとそんなことを言ってみると二人はすごく赤くなる。
「・・・早くいこう」
「そうよ。光月、こっちにきなさい」
「何?」
葉月ちゃんはみーちゃんのほっぺをむにっと引っ張った。
「痛い、やめてよ」
「余計なことを言うんじゃない!」
「・・・・何がよけいなことな・・・いだっ! やめてよー」
「彩夜芽」
私もお兄ちゃんに呼ばれる。
「何? お兄ちゃん」
「・・・その・・・わかってるか?」
「うん。任せて、二人っきりにしてあげる!」
「違う!」
からかうのは面白い。
「・・・ねえ、宙」
「なに? 結理」
「いつもあんな感じなの?」
「そう。面白い兄妹と姉妹だろう」
「うん」
「すごい、箱が走ってる」
「そっかー、そう思うんだ」
「はやい、あれは?」
結は電車の窓から外を見て楽しそうにしている。
この辺りの電車は山の近くばかり走っているからあんまり風景は変わらないと思うんだけどなー。
「ゆーいーりー」
「え!」
「俺の妹にあんまり近ずくなって言っただろう!」
「いや、大して近づいてないです」
「いや、十分近い」
またお兄ちゃんのこれが始まった。
「お兄ちゃん、うるさい。電車の中だよ」
「だから、近ずくな。彩夜芽から離れろ!」
「・・・えー、それは彩夜に言ってくださいよ」
私が言っても聞いてくれないなー。
「秋翔、結理くん困ってるでしょう。いいかげんやめなさい」
「葉月、これは・・・」
「あのね、彩夜芽ちゃんももう中学生になったんだから・・・あんまりそんなことばっかりしてると彩夜芽ちゃんに嫌われるわよ」
「え?」
「え?じゃない。そんなものだからね」
お兄ちゃんが驚いた顔で私をみる。
「・・・そうなのか?」
「・・・最近・・・ちょっと嫌かも」
お兄ちゃんから目を逸らして答えた。
「あーあ、言ちゃった」
「ほら」
「いいかげん妹離れしたら?」
葉月ちゃんはお兄ちゃんに容赦がない。昔からこんな感じだ。
「あー、あんなにお兄ちゃんってついてきてくれたのに」
「それは今は昔だね」
「なにが『今となっては昔のことだが』だ」
「さすが学年一位、古典まですぐ言えるんだね」
電車を降りるまで葉月ちゃんとお兄ちゃんのそんなやりとりは続いた。
「すごいね。秋翔くん学年一位なんだ」
「そこまで頭良いなんて知らなかった」
「本当に頭よかった電車の中で騒がないと思うけどな・・・」
やっぱりお兄ちゃんはすごいと思ったのに宙の一言でやっぱりお兄ちゃんはお兄ちゃんだと思った。
「着いたー!」
「どうする? どこに行く?」
「お昼までまだ時間あるしお店まわろうよ!」
三人できゃっきゃと話していると・・・・
「あの・・・じゃあ、12時に公園に集合ってことで」
「また後で」
お兄ちゃんと宙がよくわかってなさそうな結を連れてどこかへ行こうとする。
「えー、一緒にまわろうよ!」
「そうだよ」
「いやだ」
「どうぞ三人で楽しんで来てください」
「早く逃げないと捕まったら離してもらえないからな」
お兄ちゃんたちは私たちをなんだと思っているんだろうか?
「そんなことしないって」
「いや、前もそう言って結局最後はその小さいバッグまで持たせただろう」
「だって邪魔になるんだもん」
またお兄ちゃんと葉月ちゃんの言い合いが始まった。
「お姉ちゃん、早く行こうよ! 時間なくなるよ」
「そうだよ。お兄ちゃん達なんか置いていって楽しまないと」
お兄ちゃんと宙に前もって葉月ちゃんが一緒に行こうと言ってもそんなのはやめさせるように頼まれていたからみーちゃんと一緒に葉月ちゃんをお店の方に引っ張る。
「また後で!」
「じゃあね」
私たちが店に入るとお兄ちゃんと宙がホッとしたような顔をしたのは見なかったことにしよう。
「はあ、やっと行ってくれた」
「秋翔くん、それ聞かれたら絶対怒られるよ」
「宙も同じこと思ってるだろう」
「・・・そんなことより早く遊ぼうよ」
「・・・どこに行くの?」
やっとで聞いてみた。なかなかこの二人の会話に入っていけない。
「そろそろ新しいゲーム出てるらしいよ」
「ここって試せるコーナーあったよね」
「じゃあそこに行こう?」
またなにがなんだかわからないままどこかへ連れて行かれた。
二人は女子との行動は嫌だったらしいけれどおれは彩夜と一緒がよかったなーと心の中で思った。
「なんか見たいのある?」
「本屋さん行こうよ。私が好きな漫画が昨日発売だったんだー」
「いいよ。私も気になってる本あるから」
ここの本屋さんは大きくてたくさんの本が売ってある。
そんな感じで最初は本屋さんに行くことになった。
「見て、あのシリーズの新刊でてる!」
私の好きなシリーズのがやっと出ている。もう一年以上出ていなかったからもう続きは無いのかとおもっていた。
「よかったね。あ! あれアニメ化だって!」
「え! いつ?」
「それはまだみたい」
みーちゃんも葉月ちゃんも私と同じ本好きだ。本屋さんに行くとそこから動かなくなる。
「みーちゃんの漫画は見つかった?」
「聞いてよ! こっちにはまだ届いてないんだって!」
「あー、よくあるよね」
この辺りは田舎だからか、東京から遠いからか本が発売日に本屋さんに届かない。
大体本屋さんに並ぶのは発売日の三日後くらいだ。
「ネットで頼んだ方が早いよ」
「そうそう、来週には売られてるだろうけど・・・来れないでしょう」
「あー、うん。そうする」
楽しみにしているものほどなかった時のショックは大きい。
「みーちゃん、私の本見せてあげるから」
「うん、ありがとう」
「ねえ、これ!」
葉月ちゃんが本の中に挟まっている紙を見せてきた。
「なに?」
「グッズ発売決定だって!」
それはとても嬉しいだろう。だけど・・・
「ちゃんと考えて買ってよ」
「そうだよ。欲しいのを厳選して買わないと」
ついついどれも欲しくなってしまうだろうからこれは言っておかないといけない。
私はグッズまでは欲しくならないからそんなことはしないけれど。
「・・・・誕生日に買ってもらう」
「葉月ちゃんって秋生まれじゃなかったっけ?」
「だって発売されるの夏だから、ね」
そういえば数年前、お兄ちゃんが好きな本のことを長々と語る葉月ちゃんをみて遠い目をしながらいっていた。
かわいいのにもったいないと、
お兄ちゃんは一応葉月ちゃんのことを可愛いと思っているのはわかったけれど・・・まあいいか。好きなものはどうしようもない。
「ねえ、次は小説コーナーに行こう!」
「私はもう行ってきたよ」
「もう一回行こうよ。面白そうなのが見つかるかもよ」
そんな感じで集合時間になるまでずっと本屋さんにいた。
読んでいただきありがとうございます。
今回からみんなで街に行っています。そしてやっと本人が出てきた葉月ちゃん。秋翔との会話が面白くなっていきそうです。
彩夜達は本屋さんにいきました。あれは少し私の実話です。みんなで本屋さんは楽しそうで羨ましいです。
次話も読んでいただけると嬉しいです




