十五話 こちらの世界4
「ただいまー」
中から返事はない。
「おばあちゃん達はいないの?」
「今、出かけてる」
「そうなんだ」
なんか・・・ちょうどいい?
私たちが普通に中に入っても結はそのまま外にいる。
「結も入って」
「・・・お邪魔します」
「結、服ちょうだい。乾かすから」
早く乾かして隠しとかないと。着物は見つかった時の言い訳が大変だから。
「あ、うん」
「結理、ちょっとこっちに来てくれないか?」
「はい」
お兄ちゃんが向こうに行った。ちょうどいい。
急いで洗面所に行って洗濯機に濡れてる私の服と他の服も突っ込む。
結の着物は・・・私の部屋に干せばいいかな?
全部突っ込んでスタートボタンを押す。
これですぐに全部濡れるからわからない!
「彩夜芽、何してるんだ?」
「ほら、溜まってたから入れといた」
「ありがとう」
「うん」
「夕食一緒に作るか?」
今日は何かな? 最近向こうに居てさっぱりしたものばかり食べていたからそろそろさっぱりしていないものが食べたい。
「うん。手伝う」
「・・・何か隠してないか?」
「なんのこと?」
お兄ちゃんにはバレてるか・・・・
けれど知らないふりで通そう!
「彩夜」
「あはははは」
「彩夜芽!」
これ以上ここにいたらバレてしまう。
兄ちゃんと壁の間をすり抜けてリビングまで走った。
「あっ!」
兄ちゃんに捕まる前に結のところまで逃げて結を盾にしよう。
見つけた!
「結! お兄ちゃんが・・・・」
「どうした?」
結はそう言いながら私と距離をとる。近づくともっと離れていく。
「なんで離れるの?」
「・・・・『俺の妹に近づくな』って言われた」
「あ・・・」
「あと、『近づいたらどうなるかわかってるだろうな』って怖い笑顔で言われた」
「兄ちゃん!」
余計なことばっかり!
「彩夜、どうしたんだ? 結理がなんかしたのか?」
「結に何言ってるの? 別にいいよね。近づくくらい」
「・・・結理、ちょっと」
二人で部屋の隅に行ってヒソヒソと話し始めた。
「その・・・近づくってのは・・・何もするなって意味で・・・伝わってる?」
「えっと・・・関係がってこと?」
「そう! 友人くらいの関係でって言いたかった。物理的な距離は・・・まあ、普通くらいならいいし。もちろんべったりはダメだけど」
「はい」
「・・・彩夜芽はあの通り・・・すごく子供だから」
「それは、・・・よく知ってる」
「わかってるならいい。うん、そういうことだから」
こっちには聞こえないくらいの声で話していて聞こえない。
ただ分かるのは・・・妙に話が合っているらしい。
「ねえ、何をヒソヒソしてるの?」
「いや」
すぐ隠すんだから・・・
「結、一緒に料理しよう」
「・・・彩夜芽、結理のことはなんと呼んでる?」
「結だよ」
「・・・結理は彩夜芽のことなんて呼んでる?」
「彩夜」
「結理!」
「え? なんか悪いことした?」
「お兄ちゃんが悪いから気にしないで」
私には優しくていいお兄ちゃんなのになー・・・
「お兄ちゃん、一緒に料理しようよ。早く作ろうよ!」
「そうだな」
「今日は何?」
「カレーだ」
カレーか・・・結は食べれるかな?
「何をしたらいい?」
「にんじんとじゃがいも切って」
「はーい。結はじゃがいも切って」
「どれくらいに?」
「・・・一口サイズに」
「さいず?」
「あっ! 大きさってこと」
「わかった」
こういう違いはどうしようか?
怪しまれたら大変だし・・・
「彩夜芽、にんじん小さすぎ」
「・・・これでいいの」
「嫌いだからってそんなに小さくしない!」
小さく切ればわからなくなるからこうしてるのに・・・
「彩夜って好き嫌い多い?」
「結理、わかるか! あれも嫌いこれも嫌いって」
「食べさせるのが大変」
「そうなんだよ」
なんだろう? なんか・・・
「そうそう」
「あと、あんなのとか」
「そう!」
二人はすっかり仲良くなったらしい。
数十分後
「出来たから味見して」
「はーい」
「どう?」
「甘くて美味しい」
うちのカレーは甘口だ。中辛だと私が食べれないから。
「結、どう?」
「・・・なんか・・ピリピリする」
「嫌い?」
「いや、ちょっと驚いただけで・・野菜の味がして美味しい」
食べれそうでよかった。
夜
部屋の布団に寝ながら色々考えていた。頭の中で色々なことがぐるぐるしてなかなか眠れない。
すると・・・
「彩夜、起きてる?」
「うん。入っていいよ」
結が来てくれた。ちょうど誰かに話してしまいたいところだったからよかった。
「・・・聞いてくれる?」
「うん」
「・・・ここの部屋、私の部屋なんだけどね・・・・最後見た時はなかったものとか増えてるの」
学校のノートだって私は行ってないのにちゃんと私の字で書かれていた。
「・・・誰かが・・代わりにいたってこと?」
「・・・そうかもしれない。・・・でもね、誰も気づいてないの」
それが怖い。
「・・・結がどうしてここに来ることになったかは聞いた?」
「・・・・なんか・・・他にいく場所がないからってことで引き取った・・みたいなことになってる」
「・・・いない間、誰かが成り代わってるのかな?」
私がそこにいなくても私はそこに存在し続ける。
「・・・いつか・・・私の場所を取られるんじゃないかって思って・・・」
もしも、私がこちらにいても代わりの私が存在し続けて私の場所がなくなったら・・
「・・・大丈夫、きっとおれはわかるから」
「?」
「・・・だって、彩夜が場所を取られたらおれの場所もきっとなくなってる。そしたら自然に二人で余るんだから」
それは大丈夫な状態だろうか?
「んー、・・伝わってないかー。えっと・・・とにかく・・・もし違う彩夜がおれの前に現れても気づく」
そんなのその時にならないとわからない。
「大丈夫だって。完全に同じ人なんていないんだから。いくら見た目が似てても性格とか違うし」
「性格が違ったらお兄ちゃんはわかるよ」
「・・・色は絶対同じにはならないと思うけどな・・・」
「色?」
「・・・ 感じる色っていうか・・・わからない?」
「わからない」
なんのことだろう?
「・・・なんか、見えるような見えないようなもので・・・人によって全然違うんだ」
オーラのようなものってことかな?
「なんとなくわかったかも」
「だから、気づく人もいるから。奏さんなんてすぐにわかるだろうし」
「・・・ありがとう」
安心させてくれようとしたんだろう。
「・・・色々聞いていい?」
「いいよ」
今度は私が聞くばんだ。
「この天井についてる光るのは何?」
「電気。説明は難しいからそういうものって思って」
「なんか薄い板なのに中に人がいるのは?」
「?」
「りもこんっていうのを押したら変わったりするやつ」
「テレビ! あれはね、・・画像を映してるから中に人はいないの」
なんかクイズみたいだなー。
「かまどみたいだけど違う・・・こう・・押すだけで火がつくあれ」
「・・コンロ? 押すのはスイッチのことかな?」
「外を走ってた箱」
「車」
「馬も牛もいなかったけど?」
「あれの動力は生き物じゃないの」
「・・・大体わかった。・・・あれはすごいよ。捻るだけで水が出る」
「うん。わざわざ井戸から運んで来なくていいの。井戸なんてあるところほとんどないしね」
「・・全然違う」
「明日、街に行ったらもっと驚くかもね」
「・・・はぁ」
「いくのやめとく?」
「・・・行ってみたい」
「うん」
「・・・じゃあ、おやすみ」
「おやすみ。あ、いつもよりゆっくり寝てていいからね」
「・・・うん。わかった」
その日はすぐにぐっすりと眠れた。
「はぁ」
彩夜の部屋を出て自由に使っていいと言われた部屋に戻る。
今日は疲れた。彩夜が初めてこちらに来た日もこんな感じだったんだろう。
今日はいろんな人にあった。けれど誰もこの容姿を見て何も言わない。
こんなのは初めてだ。
「・・・光月と宙、秋翔、葉月」
光月と宙を見た時どこかで見たことがある気がしたが気のせいだろうか?
いくら考えても出てこない。
「まあいいか」
今日は疲れたけれど楽しかった。見たことのないものばかりで面白かった
読んでいただきありがとうございます
今回はちょっと休憩の回だと思っていただければありがたいです。次話からはしばらく楽しいのと裏の
複雑な感じが続く予定です。
次はみんなで街に行きます。どんなことがあるんでしょうか?
次話も読んで頂けると嬉しいです。




