五話 流5
「・・・・きれい・・・・」
そこは少し開けているところで高い木がなく空が見えていた。
金色の三日月とその周りでたくさん光る星たち。
「もしかして・・・・あのときの?」
夕焼けを私がきれいと言ったとき結はもっときれいなものを見せてくれると言っていた。
「うん。・・・ほら・・・・梅雨になると雨よく降って見に行けなくなるから・・・」
「・・・ありがとう」
だからこの時間じゃないといけなかったんだ・・・
「・・・結は夜空好き?」
「うん。特に月が好き。きれいだから」
「きれいだね・・・・」
隣に立つ結の袖を掴む。
私も夜空はきれいだと思う。けれど同時に・・・・恐怖もある。
どうしてかはわからない。月が・・・・
空にまんまるの月が浮かんで明るく照らしていて・・・・
木が生い茂った森で暗くて何も見えなくて・・・・・
楽しそうな笑い声と・・・・
静かな森に響く金属音と・・・・
広いたくさんの花が咲く花畑と・・・・
一輪しか咲いてない断崖絶壁の崖・・・・・
「彩夜。・・・彩夜芽!」
名前を呼ばれて体を揺らされやっと気づいた。
「! ・・・・結なに?」
「いや・・・・なんか・・・よくわからないけど・・・様子が変だったから・・・」
「・・・大丈夫だよ」
結が私を呼ぶまでよくわからない景色の中をぐるぐるしていた。
「・・・本当?」
「うん」
どこか違うところにいる気分だったけれど呼び戻してくれたから大丈夫だ。
「・・・もう桜のところ行く?」
「・・・・もう少しここにいたい。いい?」
「うん」
まだ夜は肌寒い季節なのに汗が首をスーとつたう。
「・・・・結」
急に何故かそんなことが不安になった。そんなことあるはずないのに・・・
「結、・・・・ここにいるよね? まだどっか行ったりしないよね?」
「・・・うん。そもそも行くところなんてないんだから」
「そうだよね・・・」
「・・・彩夜が望むなら・・・・・・約束は果たすよ」
よく聞こえなかった。ちょうど風が吹いて木が揺れたから。
「?」
「・・・彩夜は何も心配しなくていい。どうにかなるから!」
「・・・・うん。わかった」
なんのことか気になったけど結の顔を見たら何も言えなかった。
「・・・・・そういえば・・・・なんで桜さんの前だと流様って呼ぶのに私の前だと流なの?」
「えっと・・・・ほら、人をなんとか様ってあんまり呼ばなくて・・・・慣れてないから」
「でも桜さんの前ではちゃんと言えてるよ」
「桜は村長の娘だし・・・・色々その辺はちゃんとしとかないとまずいんだよ」
「ふーん」
そういうものなのかな? なら気をつけないと・・・
「彩夜も呼ぶ時は様つけた方がいいよ。流はそんなんで怒らないけど怒る人もいるから」
「わかった」
「・・・遅かったですね」
「何してたの?」
桜さん家に行くと二人が玄関のところで待っていた。
「えっと・・・結がきれいな夜空を見せてくれました」
「「・・・・・?」」
「それだけですか?」
「ここでも見えるでしょう」
あ・・・見上げてみると確かに見える。でも・・・・
「違いますよ」
どう違うのかはわからないけれどどこかが違う。
「・・・・結理がそんなことをするなんて・・・・」
「そんな場所あるんですね」
「この山の頂上付近だよ」
「知りませんでした」
珍しいところってことかな?
「私も今度連れて行ってよ!」
「私もみたいです!」
「・・・・めんどくさいからやだ。なんで暗い道を二人も連れて歩かないといけないんだよ・・・」
「彩夜芽さんは連れて行ったのに?」
「いいなー、私も見たいなー。結理、だめ?」
桜さんがわざとらしく言っている。困らせて遊んでいるんだろう。
「・・・・わかったって。なんか・・・そのうち連れて行くから」
「そのうちっていつ?」
「・・・・今年中?」
これはすると言ってしないやつだろう。
「・・・・帰るから。明日、朝また来る。じゃあ」
「来なくていいよ。おやすみ」
「また明日」
結の姿が見えなくなると・・・・
「彩夜芽さん、色々聞いていい?」
「ぜひ聞かせてください」
いいと返事をしていないのにそのまま部屋の一室に連れて行かれた。
「夜空見せたとき結理なんか言ってた?」
「えっと・・・・梅雨になったら見えなくなるからとか・・・月は好きとか・・」
「他には?」
「何かないんですか?」
「・・・・何も・・」
なんか二人は残念そうな顔をする。
「・・・・今夜は女子会しましょう! せっかく三人もいるんだから!」
「女子会?」
「ただ色々なことについて女子だけで話すだけですよ。まずはお布団を準備しましょう!」
言われるがまま、布団を敷いていく。
そしてお茶を用意して、着替えて・・・・・
「・・・・何について話すんですか?」
「女子会と言ったら恋バナでしょう!」
「・・・・みなさん好きな人とか気になってる人はいるんですか?」
「「「・・・・・」」」
みんないないのか・・いるけれど言わないだけなのか?
「いないんですか?」
「いませんね」
「いたことないし」
「私もですよ」
これでは恋バナにならない。
「・・・・じゃあ・・・・結婚したい人の理想は?」
理想か・・・・それだったらこんなメンバーでも話せる。
「じゃあ・・・友梨から」
「えー、お姉ちゃんから言ってくださいよー」
「えー・・・・私はね・・・もうちょっと都会に住んでて、そこそこお金持ちでかっこいい人がいい」
「理想ですから現実にはいないような人でもいいんですよ?」
そうしないと盛り上がらない。
「理想なら・・・・性格良くてお金持ちで、かっこよくて・・・浮気しない人」
最初の三つはよく出てくるけれど最後のは・・・・
「それは・・・・そうですね」
「やっぱり奥さんが一人だけの人がいいですよね」
もしかして・・・・この時代って一夫多妻だっけ?
「お金持ちになるとそこがダメだからね・・」
「・・・・えっと・・・お金の持ってる量でその辺にも違いがあるんですか?」
「養えるから増やすんですよ。この辺に住んでる人にはそんな余裕ないですから一夫一妻です」
「そう思うと田舎もいいですね」
「でも、相手が幼馴染とかばっかりだよ」
それも微妙だな・・・・
「・・・あくまで理想の話ですよ。現実で理想を求めてはダメです」
「彩夜芽さんは?」
「・・・・よくわからないです。でも・・・・なんか普通の人がいいですね」
普通と言っても性格がよくて優しくて顔もお金もそこそこで・・・そんな人もなかなかいない。
でもお兄ちゃんみたいな人はいいかもしれない。
「もっと何かないんですか?」
「そういう友梨の理想は?」
「・・・・やっぱり貴族の方とかでしょうか? 一度は憧れますよね!」
お姫様に憧れる・・・みたいなものだろうか?
「だって、きれいな着物もたくさん着れるんですよ。美味しい料理が食べられたり、あと・・・畑なんて行かなくていいでしょうし!」
「・・・・いいかも」
「それは結婚相手の理想ですか?」
「いいじゃないですか。常に話題が変わっていくのが女子会ですよ」
そうだった。いつもみーちゃんと話していてもこんな感じだった。
「女子会というか・・・・未来の井戸端会議じゃない?」
「あれだって一種の女子会です」
「もう女子じゃないでしょう」
そうだ。
「女子っていくつまでですかね?」
「結婚するまでじゃないですか?」
「なら・・・・30代でも結婚してないなら女子ですか?」
「・・・・・10代?」
「私としては二十代までは女子扱いされたいです」
「10代までなら私はあと五年で女子卒業ね」
「五年か・・・」
五年前は私は8歳。早かったような長かったような・・・・
「あっという間に10代なんて終わるんでしょうね」
「でも、友梨はあと八年あるでしょう。八年あれば柿がなるようになるんだから」
そう思えば結構長いものなのかもしれない。
「柿は好きですか?」
「甘くて好きだけど?」
「お姉ちゃんが柿好きなのは知っています。彩夜芽さんはどうなんですか?」
「・・・味が苦手です」
干し柿も好きじゃない。
「ならあけびも苦手ですか?」
「そうです。あれって全然見た目は似てないのに味は似てますよね」
「なんででしょうか?」
「同じように秋になるから?」
だんだん食べ物の話に会話は移り・・・・
三人が眠ってしまうまで女子会は続いた。
読んでいただきありがとうございます
結が見せたかったものは夜空でした。
そして後半は女子会。なんかゆったりとした会になりました。
次話も読んでいただけると嬉しいです。




