三話 流3
彩夜が一人で山を降りていった。
その姿が見えなくなったのを確認して流に話しかけた。
「・・・今日は天気がいいですね」
「そうですね。・・・彩夜芽さんとずいぶん仲が良さそうですね」
「そうでしょうか?」
ただの会話の中に探りたいことを混ぜてくる。
それが流はとても得意だ。
「彩夜は私を兄のようにみているようです。だからあんなに距離が近いのでしょう」
だからこの話に彩夜は関係ない。巻き込まないで欲しい。
「でも貴方からも近づいているように見えますが?」
「目を離すと何をするかわからないんです。毒キノコを触ったり、すぐ転けたりするのですよ」
流はわかっていてこんなことを聞くのだから意地悪だ。
そろそろ本題を出していいだろうか?
「・・・だれの命令ですか?」
「あの方の命令ではありますが・・・・私の気持ちでもありますよ」
流はおれの前に跪く。
「なぜ知らないふりをしておられるのですか? 結理様」
「・・・何のことでしょうか?」
きっと流はもう気づいている。
「今は、思い出しておられるのでしょう!」
「何をですか?」
「・・・部屋の中を見せていただきました。・・・・小さな青い衣、あれには名前が入っていますね。・・・その横に最近縫った名前がありましたよ」
もう忘れないように・・・思い出したくなくても大事な思い出だから縫った物だった。
「・・・・なぜわかっていらっしゃるのに知らないふりをされるのですか? 私のことも覚えてらっしゃるでしょう」
全て知っているということか・・・なら・・・
「だれの味方だ? ・・・・おれの味方にはなってくれないのか?」
見つけてくれた。それは嬉しかったのに。
「・・・ここの方がいいと?」
「あんなところのどこがいい?」
「その容姿でも何も言われませんよ」
「でも・・・・目立つのは変わらない。・・・それに・・・あんなところに行くくらいならここでひっそり暮らしてる方がいい」
昔からずっと、流はおれの味方だと思っていたのに・・・・
「戻ってきてください。結理様がいなければ・・・・」
「代わりなんて他にたくさんいるだろう」
「・・・私は・・・・貴方がいいです」
そんなの知らない。あんなところ戻ったらもう戻れない。
「・・・・お願いします。杏様と華鈴様のためにも戻ってきていただけませんか?」
そうだ。昔は自由がないのはわかっていたのに・・・・抵抗しても無駄なのか?
あの人たちはおれを見つけてくれないかったのに・・・・今更?
そんなの勝ってすぎる。
「・・・結理様・・・」
「・・・・ちょっと考えさせて欲しい。・・・嫌と言ったら聞いてくれるか?」
「・・・・・はい。貴方がそこまで言うのなら」
くるっと流に背を向けて山を降りる。
「・・・・ありがとう。見つけてくれて」
「はい」
読んでいただきありがとうございます。
結と流は知り合いだったようです。けれどどこで繋がりがあったのでしょうか?
そして結は何を選ぶのか?
次話も読んでいただけると嬉しいです。




