二話 流2
「彩夜、食材取りに行こう」
「うん」
「私もご一緒していいですか?」
「・・・・どうぞ」
今日は三人で取りに行くらしい。
「・・・あんなにいっぱい生えてたのにどれも無くなってる・・・」
この前はあった植物が見当たらない。あっても大きくて美味しくなさそうになっている。
「彩夜、この前とはなってる植物は違うからな」
「え! また覚えないといけないの?」
「うん。・・・・これとか美味しいよ」
「・・・・難しい」
せっかく種類も見分け方も覚えたのに・・・・
「これなんかどうですか?」
「あ、美味しそう。それあまり見つからない物ですよ」
「ここにたくさんありますよ」
「おー、彩夜ここ来て。いっぱいあるから桜のところにもこれ持っていこう」
「わぁー、いっぱいある。全部取っていいの?」
本当にいっぱい生えている。こんなにたくさんなんてなかなかない。
「・・・半分くらいは残しとこうか」
「あっちにも何かあるようですよ」
「あ! 彩夜、あれ美味しいんだよ。取りに行こう!」
なんか結が楽しそうだ。
流さんとも楽しそうに話している。
「見つけるの上手ですね」
結がこんなに他人と楽しそうに話すのは珍しい。
いや、私は結のことをあまり知らないから・・・本当はいっつもこうなのかな?
「昔、私の主人とこうやって集めていたんですよ。これも主人が好きだった物なんです」
「・・・・そうですか」
流さんから悪意は感じない。むしろ結に対してとても・・・・何というか・・・奏さんが向けるようなちょっと違うような目をしている。
「・・・・結、・・なんかへん」
「ん? え?」
「・・・わからないけど・・・なんかへん」
「・・・そうかな?」
笑顔の中に影がある。
「・・・・ねえ、上に行こう。きっともっとあるよ!」
「だめだって。上は危ないから」
「じゃあ、どこ行くの? この辺見てきたけどあんまりなかったよ」
「・・・どうしようか・・・、あんまり下に降りると人がいるしな・・・」
やっといつもの顔に戻った。
「お魚は?」
「・・・・ちょっと話がずれますが米の栽培はされてないのですか?」
「・・・拾われただけの子供に田んぼなんかないんですよ。それにここの村人にも私は入ってませんから」
「どうして? ちゃんと人数を登録するのは村の義務でしょう」
もしかして・・・・また難しい話?
「・・・・物置を使わせてくれてるだけで私なんかには十分なんですよ」
ちょっと流さんのことが嫌いになるかもしれない。
何でせっかくいつもの顔に結が戻ったのにこんな作った顔に戻すの?
流さんは結のことが大事なんじゃないの?
「・・・こんなところで・・・・」
「何ですか? 今の生活で十分なんですよ。自由で」
なんか・・・・・流さん早く帰ればいいのに。
「・・・結、さっきの続きの話しよう」
「ん? えっと・・・何だったけ?」
「・・・結がもういいならいいけど、約束」
私はもう約束なんて叶ったも同然だからどうでもいい。ただ、どうにかして流さんが話に入って来れないようにしたい。
あの人が余計なことを言わないように。
「・・・約束はもう・・・叶ったからいいけど・・・話は聞きたい」
「・・・聞く方なの?」
「そっちの方が面白い」
「・・・私話すのとか説明するの苦手なんだよ」
「それでいい。なんかよくわからないけど・・・何となく伝わってるから」
みーちゃんにも宙にもいつもよくわからないと言われているのに・・・
「ちょっと早いけど・・・怪談話でもしてみる?」
「・・・実際にあった怖い話でもしようか?」
「・・・・この辺であったことはやめて。あと・・山の怖い話も、暗くなってから一人で外行けなくなるから」
自分から話を振っておいてなんだが怖い話は得意じゃない。
特に実際にあった話はだめだ。
「えっと・・・・昔々あるところに古いお寺がありました」
なぜか流さんが話始めた。
「そこにある日旅人がやってきて・・・『一晩泊めていただけませんか』とそれにお寺から出てきた人は・・『どうぞ、何日でも泊まっていってくださいと』『そうですか。では二、三日泊めてください』ということになり旅人はお寺に入りました」
「何で『そうですか、では二、三日』になるの?」
「普通・・・もっと遠慮しないか?」
「すると、次の日朝になってみるとお寺の中にはだれもいませんでした」
この話はどこが怖いんだろうか? 結も同じことを思ったらしく・・・
「・・・・どの辺が怖い話で?」
「怖くないですか? お寺から出てきた人は幽霊だったってことですよ」
「いや・・・幽霊はそんなに怖くないので」
「・・・人だと思っていたら幽霊とかよくありますよ」
あやかしが見える人はだいたい幽霊も見える。
「それに・・・私が知っている怪談話はこんな物ではないくらい怖いんですよ」
小学生の頃はよく昼休みに怖い話をしていた。
いくら子供向けの本に載っている物といっても結構怖かった。
中でもよく話していたのは意味がわかると怖い話だ。
「そんなに怖い物だったんですか?」
「怖い話をたくさん知っている子がいたんですよ。よく聞いていたので慣れました」
「友達?」
「・・・・ただの・・・クラスメートです」
同じクラスだったから一緒にいただけだ。
「くらすめーと?」
「あ・・・・近所の子って意味ですね」
本当は違うけど間違ってはいない。小学校のクラスメートなんてみんな子供が歩いて行ける距離に住んでいる。学校のことから説明するのもめんどくさいし・・・いいか。
「・・・怖い話はだめですね」
「結、この前夢でね、蛇に囲まれる夢見たの。すごく怖かった」
「おれは・・・桜がいっぱいいて囲まれて怒られる夢見た。すごく怖かった」
「桜さん怖いの?」
「怒ると怖いよ。友梨もそう言ってた」
お兄ちゃんも怒ると怖いから・・姉とか兄ってそういう物なのかな?
「・・・彩夜芽さん、変わっていますね」
「・・・そうですか?」
「大人を怖がりはするのに刀を持っているのは平気なんですね」
確かによく見れば流さんは刀を持っている。けど・・・
「怖くないですね」
町に行った時も持っている人は見たけれど別に刀が怖いとは思わなかった。
「・・・流さんは結と一緒にいる私に何もしない気がします」
「そうですか。それに・・・・表情がコロコロ変わって面白いです」
「え!」
確かに色々考えて色々思ったけど・・・顔に出てた?
「だからいつも言ってるだろ。顔を見てれば言いたいことがわかるって」
「でも・・・・隠すこともお上手ですね」
「?」
「自覚はないのですか・・・ならもっと素晴らしいですね」
意味がわからない。隠すのが上手くていいの?
「貴方は・・・もう少し隠せたほうがいいと思いますよ」
「・・・・これでいいんですよ。ここでは困りませんから」
やっぱり結もわかりやすいんだ! なのに私にはいつもあんな風に言ってるような・・・
「この刀、貴方に差し上げますよ」
何で突然?
「そんなものいただけません。私には使う機会がありませんし、・・いい物すぎます」
「そうですか」
流さんはちょっと残念そうな顔をした。
「・・・彩夜、ちょっと先に戻ってて」
「? まだあんまり食材取れてないよ?」
量はあるけれどまだ種類が少ない。
「・・・さっき川で取った魚もあるしそれでいいよ」
「うん。なら戻っとくね」
「あ、桜のところにそれ届けておいて、・・・あ、それは無理かな?」
桜さんに話しかけれはすると思う。けれど、道中に人がいたら難しい。
「・・・・行くだけ行ってみる。届けれないかもしれないけど」
「ありがとう。無理はしなくていいから」
「うん」
途中、見つけた食材を取りつつ桜さんの家に向かった。
幸い、だれともすれ違わず・・・
「・・・こんにちは・・・」
声をかけてもだれも出てこない。聞こえてないのかな?
チャイムって便利だったんだな・・・
「あの・・・」
「あ! 彩夜芽さん?」
「! ・・友梨さん?」
「はい。そうですよ。また来てたんですね」
「あ・・・はい。えっと・・・桜さんにこれをと結に言われて・・・」
「ここでは誰かに見られるかもしれません。中にどうぞ」
ここに来るのはあの時以来だ。家は残ったところはそのままで一部新しくなっている。
「それ、着てるんですね」
「? あー、結が縫ってくれたので」
「似合ってますよ」
「ありがとうございます」
「お姉ちゃん! 彩夜芽さん来たよ!」
「はーい、来てたんだ」
「これ、どうぞ」
「ありがとう」
少し食材を渡した。
「結理は? 一人で来たの?」
「結は流さんと山にいますよ」
「! 何で! 山には行かないでくださいって言ったのに!」
「・・・なんか・・・楽しそうに話してましたよ」
「ならいいけど・・・」
桜さんは結のことが心配らしい。
「変わった方ですね。流さん」
「そう?」
「私たちのこと見ても何もなかったんです」
「・・・珍しいですね」
「・・・・気をつけてね。何しに来たのかよくわからないから」
「はい・・・・なんか・・・用事が終わるまでは帰れないって言ってましたよ。流さんが」
「・・・・早く帰ってくれないかなー。・・・あの人の前では言えないけど」
桜さんはすごくめんどくさそうな顔をした。
「・・・私もそう思います。・・・なんか・・結が・・・流さんといると変なんですよ」
「・・・今日ここに泊まるんでしょう」
「あ、はい。すみません。ご迷惑おかけして・・・」
「いいの、結理がお客さん連れて来るなんて彩夜芽さんが初めてだから」
やっぱり桜さんはお姉ちゃんだな〜と思った。
読んでいただきありがとうございます。
今回は結をいつものようにしようと頑張る彩夜とどこか変な結を書いてみました
やっぱり流さんは怪しいですよね。
次は短くなるかもしれませんが、結と流さんの彩夜がいなくなった後の話を書こうと思います。
次話も読んでいただけると嬉しいです。




