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彩る夜に結ぶ  作者: 浅葱 咲愛
二章 七年間
28/111

一話 流1


 青い空、新緑の緑、私をじっとみている顔


 「・・・・結?」


 それらが目を開けると視界に入った。


 「・・・そうだけど」


 なんかまた冷たくなった? 帰るときはいつもの結に戻ってたのに。


 「・・・ここは?」


 水の音がする。どこかの川の近くだろうか?


 「彩夜は来たことない川だよ」


 「・・・また来れたよ」


 「知ってる」


 嬉しい。いけるかわからない方法だったけれどやってみてよかった。


 「・・・結、・・・偶然私が倒れてるの見つけたの?」


 「奏さんにここに行けって言われて、そしたら彩夜がいた」


 「・・・そうなんだ」


 どうなっているのかよくわからない。


 「・・・結、聞くだけ聞いて欲しいの」


 「何?」


 起き上がる。なぜか服は上まで濡れている。


 「私がこっちにいる間・・・向こうにも私はいるんだって」


 それがとても不安だから・・・聞いて欲しかった。


 一ヶ月誰にも言えなくてとても不安だった。


 「誰も私じゃないのに気づいてないの。お兄ちゃんもおばあちゃんたちもみーちゃんたちも」


 「・・・そっか」


 何も言わないでただ頭をぽんぽんと撫でてくれた。


 「・・・彩夜がいなかった間に服を縫っといたから、速くそれに着替えて」


 「え・・結が?」

 

 「うん、結構時間あったし・・・ちゃんと桜に縫い方教えてもらったからちゃんとなってるはずだし・・」


 「ありがとう」


 「どういたしまして」


 それから結の家に向かった。ここはいつも行っていた川とは反対側にある川らしい。


 「あのね、私少し料理の練習したの。ちょっとは野菜切るの速くなったよ」


 「ならいっぱい手伝ってもらおうかな?」


 「うん。あ、今まであったこと話そうよ」


 約束はちゃんと守らないといけない。


 「そうだった。・・・いつのことがいい?」


 「いつでもいいよ。でも・・・小さい頃の話がいい」


 「面白くないけど?」


 「いいよ」


 「なら・・・朝起きたら猪がいた話」


 「なにそれ! なんで?」


 予想の斜め上だった。確かに面白くはないのかもしれないけれど・・・


 「なんか・・彩夜明るくなった?」


 「そうかな?」


 「いつもよりよく喋るから」


 「・・・楽しいから。あと・・結になれた。私、家にいるときはこんな感じだよ」


 あの過去を思い出してから結が今までより近く感じられるようになった。


 「へー、そうなんだ。あ、その猪の話だけどさ」


 「うん」


 「あの家で住み始めて最初の冬だったんだけど・・なんか突かれたり重いものが乗ってて邪魔だなーと思って起きたら猪で」


 「え? 部屋の中に猪がいたの?」


 「うん。でも子供だったから多分親とはぐれて暖かい家の中に迷い込んだんだと思う」


 「それで?」


 「何日か一緒に生活して、数日後に・・・親猪が迎えに来た」


 一瞬結の表情が暗くなったのは気のせいだろうか?


 「・・・たまにアイツっぽい猪見かけるんだ。大きくなっててよくわからないけど・・・覚えてるのか目があってそれで去っていくから」


 「そんなことあるんだ。面白いね」


 「・・・長生きしてくれるといいけど。村に降りて作物荒らしたり人襲ったら捕まえられるだろうし・・だから一応教えたんだ。山を降りたらダメだって」


 「言葉通じてるのかな?」


 「どうだろう?」


 不思議なことは意外とよくあるものだ。


 「次、彩夜が話て」


 「えっと・・・・私の知り合いの話ね。向こうの山に大きな木があるの」


 「こっちにもあるかな?」


 「まだないと思うよ。それでね、大きいから樹齢数百年の木なんだけどその木の妖精さんがいるの」


 「妖精?」


 「うん。見た目はおじいちゃんで、中身もそんな感じ。私はその妖精さんにあやかしのこととか教えてもらったんだー」


 わからないことはたくさん教えてもらった。


 「そこにね、他の妖精さんとか小さなあやかしとかいっぱい集まってて私もそこで遊んでもらったりしたの」


 「なんか・・・いいね。みんな違うのに仲良くできて」


 「うん。妖精さん達強いから何かあったときそこに逃げ込んだら守ってくれるの」


 「へえ、向こうはここより暮らしやすい?」


 「・・・どうかな? こっちほど自由じゃないし、けど・・・安全で・・・・でも私はこっちにいる方が好きかも」


 結と山の中にいれば自分が普通じゃないのを忘れられる。


 「桜の家もうなおったから今回はそっちに泊まって」


 そうだった。私が結の家にいたのは桜さんの家は少し燃えて直さないといけなかったから。


 もとに戻ったならそうなるだろうけれど・・・村は苦手だ。


 「・・・昼間は結といて良い?」


 「まあ、でも町に行くときは置いて行くから」


 「私荷物運ぶの手伝うよ」


 「彩夜と行くとこっちがヒヤヒヤして疲れる。すぐ違うとこばっかり見てるし、人にぶつかりそうになってるし」


 「・・・はい」


 確かに私は邪魔だ。


 「・・・彩夜、下がって」


 「?」


 「いいから」


 よくわからなくてその場に立っていると結が私を隠すように私の前に立った。


 「なに?」


 「誰かくる」


 確かに私の今の格好は洋服で髪も隠してなくて色々見られるとまずい。


 だんだん落ち葉を踏む音が近づいてくる。木に隠れて姿は見えない。


 足音が止まったと思うと・・・


 「こんなところに人がいたんですね」


 「・・・道に迷われたんですか? 村はもっと下にありますよ」


 「そう警戒しないでください。怪しいものではありません」


 この時怪しいものではありませんがとても怪しく聞こえることを初めて知った。


 「なんのようですか?」


 「・・・・安心してください。青い髪も赤い目も見慣れていますから。後ろのお嬢さんにもなにもしませんよ」


 「!」


 やっと姿が見えた。


 村の人達よりずっといい服を着た若い整った顔の男の人。


 「なんで・・・」


 結がボソッとそんなことを言った。

 

 「村に来ている役人の方でしょうか?」


 「そうです。・・・しばらく貴方のところに伺ってもよろしいでしょうか?」


 「・・・なぜ・・・と聞いても答えては頂けないでしょうね。私は断れる身分ではごさいませんのでご自由にどうぞ」


 「・・・ではご一緒できますか? そうさせていただきますね」


 とても勝手な人だけど結があまり警戒していないように見える。怪しんではいるけれど・・・


 「私は(りゅう)です。よろしく」


 「・・・結理、こっちは彩夜芽、・・・よろしくお願いします」


 「はい。・・・今からどちらへ?」


 「私の家に、ぼろぼろの家ですが?」


 「・・・かまいませんよ」


 「そうですか」


 結が歩き始めた。私はその後ろをついていく。


 「待って、早いよ」


 あの人にあまり近づきたくない。大人は怖い。


 「ごめん。・・・彩夜、今日は後で山菜取りに行かないと」


 「・・・結、今何時?」


 「・・・わからないけど朝」


 「・・・そっか、私まだご飯食べてないからお腹すいた」


 時間がまたズレてる。今が朝なら・・・また一日過ごさなければいけない。


 夕方まで起きていられるだろうか? 


 「お二人は一体どのような関係で?」


 「・・・私達にそのような丁寧な言葉で話されなくていいでしょう。もっと上からでもいいくらいでは?」


 「いえ、貴方にそのように話す訳にはいきません」


 「・・・よくわかりませんが・・・そうですか」


 結もこんな丁寧語で話すことがあるんだ。


 「どのような関係で?」


 「・・・・ただの・・・」


 「?」


 「昔からの知り合いです」


 「そうですか。・・・ご家族は?」


 「・・・いませんよ。記憶がある頃にはもういませんでしたから知りません」


 思い出したと言っていたのに・・・・


 「彩夜芽さんは?」


 「私と同じようなものですよ」


 「そうですか。それは失礼いたしました」


 結はこうやって面倒なことは誤魔化してくれる。私もポロッと言ってしまわないようにしなくては


 「彩夜芽さん、荷物持ちましょうか?」


 「!」


 急に近づかれて驚いた。反射的に結の後ろに隠れてしまう。


 「あ・・・」


 「すみません。彩夜は人見知りで大人が苦手なのでしばらくは距離を取って頂けますか?」


 「そうでしたか」


 そんなことを話している間に家に着いていた。


 「彩夜、中に服は置いてあるから着替えてきて」


 「結は?」


 「ここで待ってる」


 「うん」


 一ヶ月しか経っていないのに最後に来たのが随分前なような感じがする。


 「あ・・・」


 結が縫ってくれた服が置いてあった。


 いつものように着て・・・・・


 鏡があればいいのに、無いからちゃんと着れているかも変ではないかも確認できない。


 「・・・結」


 扉から顔だけ出して結を呼んだ。


 「どうかした? 着方忘れてた?」


 「いや・・・着れたけど・・・変じゃない?」


 「・・・・似合ってる」


 「・・・ねえ、ご飯ある?」


 「あー、そうだった。これ食べていいよ」


 結はどこからかおにぎりを出してくれた。


 「いいの?」


 「うん。朝ごはんのあまりだから」


 「ありがとう」


 ちょうどいい塩加減で美味しい。


 「あ、・・服濡れてて・・どうしたらいい?」


 「川で洗ってそこにかけといたら?」


 「うん」


 「そういえば・・・どうしてあんなに濡れていたのですか?」


 「・・・・魚を獲ろうとしていたら転けて濡れてしまったんです」


 「そうでしたか」


 本当のことを言う訳にはいかない。


 「・・・・貴方はいつからここに?」


 「・・・・7歳ぐらいの時でしょうか?」


 「・・・元々この村の出身で?」


 「それがわからないのですよ。桜曰く、ある日村で倒れているところを見つけたようです」


 なんでそんなに隠すんだろう。


 ・・・思い出しているのだから隠すなら適当な過去でも作ればいいのに。


 「いつまでここの村にいらっしゃるのですか?」


 「・・・用事が済むまでですね」


 「・・・・そうですか」


 「上が待っておられるのではやく帰りたいところなのですが・・・・」


 「ならはやく・・・用事は置いておいて帰ってはいかがですか?」


 「そうですね。お二人が出て行かれる前には帰りたいところですが・・・用事は片付けてから帰るように言われていますので難しいかもしれません」


 「! 二人・・・」


 驚いた様子で・・・その後何か考え込んでる。


 さっきから結は時々こんな反応を見せる。


 「? どうかされましたか?」

 

 「いえ」


 二人の間に・・・何かあるような・・・・


 「・・結、流さんって偉い人?」


 偉い人なのはわかるけどどれくらい偉い人なのかわからない。


 「・・・すごく偉い人」


 「すごくって?」


 すると周りに聞こえないくらいの小さな声で教えてくれた。


 「三角のてっぺんにすごく近い人、だけど・・・・真ん中くらいの人のフリをしてる」


 「なんで?」


 「・・・さあ、流に何か聞かれてもわからないって答えて」


 なぜかいつも優しい結の声がその時は怖かった。


 


 


 


 

読んでいただきありがとうございます。

今回から新しい章が始まりました。そして新たに出てきた流さん、怪しいですが何者なんでしょうか?

今回の章は結が中心のお話になったりならなかったりだと思います。

結の過去が分かるかも?しれません。

次話も読んで頂けると嬉しいです。

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