二十二話 雨の日5
「待って!」
「なに?」
「無理だって。それにそんな難しいお願い頼むなんて・・・おれはまだしも彩夜は危ない!」
「二人ならできるよ。私はできない条件なんか出さない良いお姉さんだから。・・・そうそう、条件は二人で和解してくること」
そんな・・・・
「どうする?」
「「・・・・・・」」
「彩夜ちゃんにとってはずっとこのままこっちで暮らすのも幸せかもよ?」
「・・・なんでそんなことを言えるんですか?」
「・・・私だから、かな? でもね、私としては彩夜ちゃんに帰って欲しい。けど・・・・ここでの生活も悪くないって思っているでしょう?」
なんでそんなに・・・・
「結理、君は彩夜ちゃんの全部を見ないと。今、君が見ているのはほんの一部だけだよ」
「!・・・そんなことない」
「本当に彩夜ちゃんは弱いの?」
奏さんはどこまでなにを知っているの?
「だって彩夜は・・・・」
「ねえ、知らないの? 彩夜ちゃんだって君の手から炎を出すみたいなことできるんだよ」
言っていなかったのに・・・・どんな反応するのかな?
「!」
「私・・・そんな大したことはできないの」
「・・・・」
「二人とも言ってないことばっかり・・・・」
そんなこと言われてもしょうがない。だってまだあって数日。
「結理、もっとしっかりしなさいよ!」
奏さんは結理には少し強くあたる。
「なんで・・・いきなり・・・いつもはそんなじゃないのに」
「なんでって・・・私は君が嫌いなの。・・・それだけだよ」
奏さんは本当に結のことが嫌いなの?
結を見る奏さんの顔はとても嫌いと思っているようには見えない。逆にとても優しくて・・・・・
「彩夜ちゃん・・・決めていいよ。どうする?」
私にそんなこと言われても・・・
「彩夜」
「私・・・・ここも好きだけど・・・家族とか、みーちゃん達に会いたい」
「・・・・そっか、彩夜ちゃんお友達できたんだ」
「・・・はい」
一体どこまで・・・
「じゃあ、早速行っておいで」
「あのさ、どうやったら・・・和解ってできるの?」
「それは・・お話しして・・・仲直り?」
「そもそも喧嘩してない!」
「知らない人とそんなに話すのはちょっと・・・・」
「ふふっ、二人とも・・・そこなんだ」
なんのことだろう?
「あのね、二人なら簡単だと思うよ。だからやってみて。ちゃんと何かあったら助けるから」
「彩夜、行こう」
「うん」
「あ、ちょっと待って。二人とも手貸して」
「はい」
「なに?」
「えっと・・・・これを・・・・こうして・・・できた!」
なにをされたかわからないがなんか変わったような? 変わってないような?
「?」
「行ってらっしゃい!」
結とさらに奥に進んだ。
霧の中だから先が見えない。
「どこかな?」
「この辺だと思うけど・・・・あ!」
目の前に突然大きな影が現れた。
「結、・・・・なんかいる」
「そんなのわかってるって!」
「ねえ・・・どうやって話しかける?」
「わかんない!」
『誰かいるのか?』
見つかった! どうしよう?
「そうだけど?」
「ちょっと、結!」
どうするつもり!
『迷い込んだのか? 早く帰れ』
あれっ? いきなり襲われない?
「違う。ちょっと用があって来た」
『帰らなければ・・・・」
やっとお互いの姿が見えた。向こうはなぜか固まっている。
思っていたより怖くない見た目だ。なんかの動物のようだけど人のようでもある。
『何者だ?』
「人間」
『嘘をつくな! その力を持っていてどこが人間なんだ』
なんのこと?
「あの・・・勘違いだと思いますよ」
一歩近づこうとすると・・・・・
『来るな! 化け物!』
「!」
そのセリフは逆じゃないですか? なんで私たちがそんなこと言われるの?
「いや・・違うんです」
『騙されないからな!』
「お話ししに来ただけなんです」
「この前村を襲った奴で間違いない?」
「多分あってる」
この前は姿は見ていないけれど近づいた時に感じるのが同じだ。
「村を襲うのやめて欲しい」
『なぜ? 同じならわかるだろう』
「なんで襲う?」
『人間達が襲って来たからだ。同じことをしただけ。なにが悪い』
「だって、そんなこと・・・悪いに決まって・・・」
「彩夜、こんなものだから」
なんでそんなこと言うの? 結はわかるの?
「?」
「じゃあ、彩夜が川で思いっきり水をかけられたらどうする?」
「怒る」
「それと同じ」
「でも・・・あんなことしなくても・・・・」
「前言ったよね。刀持った人にこの髪とか見られたらなにされるか特にわからないって」
隠して言ってくれてるけれど切られるかもってことだ。
それと同じ? 私たちは悪いことなんてしてないのに・・・
「わかったけど・・・やめてくれませんか?」
『そう言うわけにはいかない』
「・・・・あなたは・・・・悪い人じゃないんですよね」
『!?』
「なら・・・・」
どうしたら良いのかな?
「どうして村に降りたんですか?」
「山に迷い込んだ子供を届けに来たんだろう」
『どうしてそれを・・・・』
「見たから」
あ・・・この人怪我してる。
「あの・・・・怪我大丈夫ですか?」
『これくらいすぐ治る』
「・・・少し見せてもらえませんか?」
「彩夜、そんなことより・・・」
「私たち怪しまれてるんだよ。少しでも信用してもらわないと」
「・・・・わかった」
「よく効く薬草貼るだけです」
『・・・・好きにしろ』
「はい」
よく見ればとても痛そうだ。これでも治った方らしいし・・・・どれだけ人に傷つけられたんだろうか?
「みんな仲良くできれば良いのに・・・・」
『変なことを言うな』
「そうですか?」
『できるわけがない。昔、そんなことをしようとした一番強かった奴だってできなかったんだ』
「しようよした人はいたんですね」
意外と話しやすい人だな。
『結局人間にやられた』
私がこう思うのはそちら側に近いからだろうか?
『まれにいるんだ。人間に恋をする奴が・・・・大体うまくいかないが』
「そうですか」
『うまくいくこともある。・・・そうして生まれるのが俺たちみたいな存在だ』
「・・・人でもあるのですか?」
『半分は』
だからこの人もあやかしらしくないのかな?
『俺の父と母はその一番強かった奴が作ろうとした村にいたんだ』
「うまくいかなかったっていう?」
『そうだ』
「どんなところだったんですか?」
『知らない。生まれる前にやられたらしい。けれど・・・・良いところだったと・・・』
「・・・・そうなんですか」
そんなところがあれば良いのに。
「できました。早く治ると良いですね」
『ありがとう』
最後に傷にそっと触れると・・・・
「なにこれ!」
「彩夜、なにをした!」
触れたところから傷が塞がっていく。
「知らないよ!」
気づけば全ての傷が元からなかったかのようになっていた。
「なんなの?」
「・・・・さあ?」
『そういう能力だろう』
「能力?」
『生まれた時から持っている力のことだ。俺は・・・植物を大きくできる』
「そんなものがあるんですね」
『傷を治すのは初めて見た』
「すごいな」
不思議なことは色々あるらしい。
「結、帰ろうか」
「良いのか? 和解できなかったけど・・」
「・・・だって自分を守るためでしょう。私だって・・・今まで襲って来たあやかしを吹っ飛ばしたりしてるもん」
「そっか・・・」
「それに・・・理由もなく襲うような人じゃないってわかったから。でも、これからも理由もなく襲わないってことと・・・被害は最小限って約束してもらえませんか?」
『それは約束しよう』
「・・・これは和解だよね?」
「?」
「だって奏さん、もう二度と人を襲わないようにって言わせてなんて言ってないよ」
「・・・・いや、奏さんにとってはそういう意味だと思うけど・・・」
そんなこと知らない。
「いや、ちゃんと証拠があるから」
『・・・名前を教えてくれないか?』
「彩夜芽。あなたは?」
『響紀だ』
「また機会があれば来るかもしれません」
『そうか。それの名前は?』
「あ、結理です」
『仲がいいな』
「そうですか?」
「なんでおれの名前まで・・・」
『彩夜芽がよく話すのも安心しているのも結理がいるからだろう』
「・・・・」
「では・・・・またいつか会いましょう」
『あぁ』
さっき来た道を二人で戻った。
「おかえり。早かったね」
「和解しましたよ」
「うん。なら約束通り帰してあげる」
「ありがとうございます」
「二人とも頑張ったからご褒美もあげる!」
「?」
ご褒美ってなんだろう?
「いいもの見せてあげる」
読んでいただきありがとうございます。
彩夜芽の力はなんなのでしょうか?
そして奏が見せるものとは?
次話も読んでいただけると嬉しいです。




