十三話 町2
「はぁー、やっとついた」
結局、町に来るのに数時間はかかった。
「結、待って」
やっと着いたのに結はもう町の中に入って行こうとする。
「あ、ごめん」
「大丈夫。ちょっとだけゆっくり歩いてくれない?」
結は歩くのが速いからついていけない。
「うん」
それにしても町というだけあって人が多い。
「・・・彩夜、髪とか見られないように気を付けて」
「うん」
かさを深く被る。大丈夫。誰も私たちの方なんて見ていない。
「そばから離れるなよ」
「うん」
結の後ろにくっついて町の中に入っていく。すごい。町だ。見たことない風景で面白い。
「わっ」
顔から何かにぶつかった。大きい壁? でもあったかい。見上げると結がすぐそこに立っていた。
「彩夜! ちゃんと前見て」
「ごめんなさい」
ついキョロキョロしてしまった。初めてみるものもあって、楽しくて。
「人が多いしやめとこうと思ってたけど・・」
結が私の右手を握っていた。
「えっ、ちょっと・・結」
「彩夜が悪い」
怒っているらしく結は無言で私を引っ張りながらどこかへ歩いていく。
「結・・・ごめんね・・ねえ」
「・・・誰かにぶつかってかさが落ちたらどうするんだよ。周りから目も見えてそうだし」
心配してくれていたらしい。
「見られたらどんな目にあうかわからないっていうのを分かってるか?」
分かっていなかった。ここは現代とは違う。
「・・ありがとう」
「ここは村ほど安全じゃない。早く用事を済ませて帰ったほうがいいんだ」
「はい」
そんなに危ない町には見えないけどなー。
「ここに用事があるんだけど・・・」
そこは町の端のほうにある小さなお店だった。色々なものが置かれている。
「彩夜はおれの後ろにいればいいから」
ここは言われた通りにしておこう。
「おじさん、いる?」
「? あー、青髪か」
店の中から30代くらいのおじさんが出てきた。ちょっと怖め。背はそんなに高くはないけれど目つ
きが怖い。
こんな人が店番でお客さんが来るんだろうか?
そういえば青髪って結のこと? 結の髪が青いって知ってるのかな?
「いくらで買い取ってくれる?」
「おっ、・・・・貴重なのもあるな」
話す感じは普通だ。怖そうなのは見た目だけ?
「青髪、女連れてくるなんて珍しいな」
「そんなことはいい。早く」
「これだけの量だから時間かかる。ゆっくり中で待っても」
「ここでいい」
結がおじさんの言葉を遮るように言葉を返していく。
こういう結は珍しい。それとも本当はこんな感じなのかな? おじさんと結ってそこそこの知り合い?
「なあ、青髪」
「何?」
「その子、髪見えてるけどいいのか?」
「えっ・・・」
本当だ。いつの間にか髪が一房こぼれていた。
「あっ!」
「へー、碧眼かー」
おじさんがこっちに近づいてくる。手が伸ばされて、触れられそうになって、思わず結の背中にくっ
つくように隠れた。
「彩夜、大丈夫?」
だめだ。体が震えている。どうしても・・・・・。
「この人は見た目ほど悪い人じゃない。おれの髪と目のことだって黙ってくれてるんだ」
「おい、見た目悪いって言ったか?」
「ほら」
確かにおじさんは悪い人ではなさそう。
「うん」
「とりあえず、店の中に入ったらどうだ? そこにいると外からその髪が見えるんじゃないか?」
「そうさせてもらう」
結が店の中に入っていく。私もそれについていく。
言わないと。違うって。そうじゃないって・・。
「あの、・・見た目でじゃなくて・・・例えばどんな優しそうな人だったとしても・・・慣れていな
い大人がだめなんです」
おじさんは私をなぜかじっと見て・・
「・・まあ・・・近づかなければいいってことか?」
「はい」
「そうか。わかった」
おじさんはなぜか笑っていた。不思議な人だな。
「・・・ゆっくり昼ご飯でも食べて待ってたらどうだ?」
「・・・そうする」
結がそこにあった椅子のようなものに座ったから同じように座る。
「彩夜、はい。ご飯」
少し昼には早いけれどお腹が空いている。早く起きたし、たくさん歩いたからかな?
「これは?」
渡されたのは中に何かが包まれているであろう葉っぱの塊?のようなもの?
「昼ごはん」
それはわかっている。
葉っぱは食べないだろうし、中身かな? どうやって開けたらいいんだろう?
首を傾げながら考えていると・・・。
「あっ、そうか」
と結が開けて見せてくれた。開け方がわからないのに気づいてくれたらしい。
「すごい!」
葉っぱとひもだけで3つのおにぎりが包まれている。
こんなものがある事は知っていたけど実際見たのは初めてだった。
「青髪、その子・・妹か?」
「違う。・・まず似てないし、どうしたら妹ってなる?」
「会話」
私たちそんな風に見えてるの?
「なら・・・嫁?」
「!・・・違う。だいたいまだそんな歳じゃないし」
「あと少しで成人だろ」
こっちの成人っていくつなんだろう? あと少しって・・・14、15歳ってことなのかな?
「あー、将来の」
「だから、そんなのじゃなくて・・・」
「ならどういう関係なんだよ」
結は色々考えた結果・・・
「うちに居る」
「・・同じ家に住んでるってことか?」
「まあ・・・そんな感じ」
おじさんはそれを聞いて悪い笑みを浮かべた。
「一つ屋根の下で生活している家族以外の女ってそれは嫁だろ」
「違う!」
おじさんは結をからかっているらしい。結を助けたほうがいいかな?
「色々あって、ただ泊まらせてもらってるだけですよ」
「本当か?」
「本当だから! 速く計算して」
「はいはい。わかったからご飯食べたらどうだ?」
おじさんは面白そうに笑っている。
お腹も空いたからおにぎりをハプっと食べる。
「美味しい。塩がちょうどいいね」
「うん」
結は私が2つおにぎりを食べている間に3つぺろっと食べてしまった。結が早いのか、私が遅いのか。
「結、おにぎり1個いる?」
「いや、それ彩夜のだから・・」
やっぱりまだ食べれるらしい。成長期かな?
「私、もうお腹いっぱいだからあげる」
「本当に?」
遠慮して、とでも思っているんだろうか? そんなんじゃないのに。
「本当。思ったよりおにぎりが大きくて。だから食べてくれない?」
「うん。ありがとう」
「どういたしまして」
やっぱり普段食べている量は結には少ないんじゃないかな?
「どうかした?」
「いや、・・私見ても驚かない人がいるんだね」
「おじさんはただのおじさんに見えて情報屋もやってるんだって。商売しながら色々な人とも繋がり
があるらしい。あやかしとも・・・なんて話も」
確かにあやかしは色々なことを教えてくれる。怖い、悪い奴もいるけれどいい人の方がもっといっぱいいる。いいあやかしでも人間とは関わりにくいらしい。そういう人と繋がりがあるのかな?
「だから驚いたり、怖がったりしないんだと思う。・・おじさんのことは小さい頃から知ってるけど実際どうなのかはよくわからない」
世の中にはそういう人もいるんだ。
「金髪に碧眼ねー」
「何?おじさん。・・絶対他の人に言うなよ」
「わかってる。そんなに信用ないか?」
「・・・で、いくらになった?」
かなりの量だ。わからないけど結構いくのかな?
「これくらい」
おじさんはパッと指を立てている。金額ってこと?
「もう少し」
結も同じように指を立てている。
「おい、その手どうした」
挙げた方の結の手はまだ治っていなくて布が巻かれていた。
「毒キノコにやられた。それより」
「これでどうだ?」
「ありがとうございます」
結の表情からしていい金額になったらしい。こっちのお金は単位が違うし、物価も違うだろう。
そうだった。私、この時代で買い物もできない。どうしよう。
「あ、そういえば最近ある噂があるんだ」
「何?」
「昔、青髪の化け物と金髪の化け物がいたんだってさ」
結局そうだ。私たちを化け物と言いたいらしい。やっぱりそんな風に言われるんだ。
読んでいただきありがとうございます。
一応言っておきますが、この話の鎌倉時代の設定は私が勝手に作っています。本当は味噌があったかもしれません。物語の中の鎌倉時代はそういう時代として見ていただければ幸いです。
結はなぜかこんな彩夜の心配ばかりしている人物になりました。登場人物を考えるとき私は名前と年齢、見た目くらいしか設定はありません。物語の中に出して動き始めると勝手に出来上がって行きます。
これからどうなっていくのか私でもわからないので楽しみです。
次話も読んでいただけると嬉しいです。




