十一話 夕食6
「「いただきます」」
目の前にはご飯と汁、焼き魚が並んでいる。
「美味しい」
今日はたくさん山を歩いたからより美味しく感じる。
「はぁー。温まる」
中でも汁がとても美味しい。いろいろな山菜ときのこの出汁のおかげだろうか?
「彩夜、そんなに美味しい?」
「うん。いつもの何倍も美味しい」
もちろん現代のものとは全然味が違う。山菜がたっぷり入っているせいでくせもある。けれどそれはそれで美味しい。
「明日、食べたいものってある?」
こっちでも作れそうなもので食べたいもの。和食なら作れるだろうか?
「お味噌汁」
こっちにきてから食べていない。私の大好物なのに・・・
「おみそしる?・・・ごめん。わからない」
もしかしてまだ味噌が無い時代なの? 味噌まで無いなんてそういえば塩以外の味付けのものをこっちで食べていない。
「味噌無いなら醤油も無いよね・・・はぁー」
「そんなに美味しい物あるの?」
「うん! 椎茸の出汁に具の野菜から出た出汁。そして味噌。すごく美味しいの」
まだまだお味噌汁のいいところはある。特に好きな具はえのきと冬の大根。玉ねぎも甘くなって美味しい。白菜が入っているのも好きだ。
「結は・・・食べたいの無いの?」
「・・・特にない」
ここにはそもそも料理の種類が少ないのかな?
「・・結には色々食べさせたいなー」
現代にはこことは違い色々な食べ物がたくさんある。ここにはそもそも材料が無い物も多い。けれど・・・いつか・・・
「出来ないとは思うけど」
そもそも帰れるかもわからないのにそんなことを言っている場合では無い。
そういえばあのことを気になったまま、聞くことも思いを無くすこともできていない。
このままでいいのかな?
「彩夜、どうした?」
「・・あのね・・結」
言わないとスッキリしない。逃げちゃダメだ。勇気を出さないと・・
「ゆ、結・・私・・・その・・ね。」
あの人じゃなかったら・・
その時は誤魔化そう。きっと結からしたら私はいつも意味のわからないことを言っている。それと変わらない。
「私と・・結は・・前・・・あったことあるかな?」
「えっ・・・?」
この反応は・・違った?
「あのさ、・・その・・なんか・・うん・・・私の勘違い」
そうだ。結の反応からこれは勘違い。やっぱり違った。あの人じゃない。勘違い。
「彩夜」
「ごめん。忘れて。今言ったこと全部」
なら誰なの? どうして・・結はどこか誰かに似ている。私は知っていると思ってしまうの? どこ
かに誰かの似ているところを探してしまうの?
「あのさ・・」
結がじっとこっちを見ていた。
「聞いていいかな? 嫌ならいいけど・・」
「うん。なに?」
「会ったことあるかな?って・・・それ・・どれくらいの歳の時の話?」
いつだろう? なんとなくそう思っただけではっきり思い出すことはできないから・・
「わからない。多分小学生になる前だから・・6歳とか?」
「はっきり覚えて無いのか・・・」
それから会話がなくなった。
ただ無言でご飯を食べて、終わると片付けてそれぞれ布団の中に入った。
「・・彩夜」
「結、なに?」
「おやすみ。・・明日はすぐ起きてほしいな」
それは・・・
「・・・努力はします・・・おやすみ」
一つだけ今でも覚えていることがある。はっきりと。それは手の暖かさだった。あれは・・・現実。あの人は私の冷えた手を握ってくれた。
横を向いて彩夜をみる。
今日もすぐに眠ってしまったらしい。
まさか彩夜があの時のことを覚えていたなんて。忘れているものだと思っていた。
『あったことあるかな』そう聞かれた時すぐにそうだと答えればよかった。
けれどあの時は驚きと混乱で答えられなかった。
あの後、彩夜は落ち込んでいた。
どうしようか・・・
ほとんど覚えていないと言うし、無かったことにしてしまおうか?
でもそれはなにかダメな気がする。
それに今日、彩夜に『さみしく無いの』と聞かれ、『さみしくない』と答えた。
さみしく無い、そう思えているのは・・・・・。
そのうち彩夜が帰る方法も探さないといけない。
けれど探したくない。
ここ数日とても楽しい。
いつもやっていたことを二人でできる。話す相手がいる。
それだけで全然違う。
彩夜は兄のことを楽しそうに話す。
それを見ると早く帰してあげたいとも思う。
けれど、彩夜が帰ってももう一度・・また会えるだろうか
あの時のようにちゃんと彩夜の手を離すことができるだろうか
読んでいただきありがとうございます
彩夜芽と結理は色々悩んでいるようです。
これで夕食の話は終わります。
思っているより話が進みません。本当は一章と付けたいのですがやり方が分からず付けれていません。
その一章部分はたくさんの種を蒔くだけにしておきたいと思います。
二章から少しずつ蒔いた種が咲き、種を落とす予定です。
あらすじの内容はいつになったら?と思っている方はもう少し待ってください。少しずつそっちに入っていきます。
次話も読んでいただけると嬉しいです。




