二十八話 二学期の始まり
投稿かなり遅くなってしまいました。
「彩夜芽ちゃん、どう?おかしくない?」
新しい制服姿でくるっと回ってみせる彩夜乃ちゃん。
二学期が今日から始まる。ドラマの撮影の影響で中途半端な二学期から制服が変わることになり、普通だったセーラー服から高校生の様なシャツにチェックのスカート、襟にはちょっと暑いけれどリボンも付いている。
「いい感じ」
私は彩夜乃ちゃんと同室になった。双子だから同じ部屋にしたら?と言われてしまい何となくそのまま同じ部屋で生活している。
「でもスカート短いね」
「ちょっと前までこれくらいのスカート履いてたはずなのにね」
今までと違って膝のちょっと上くらいの丈になった。別に短すぎるというわけではないけれど中学生になってからの半年で膝下の丈に慣れてしまい十分短く感じられる。
「でも涼しいー」
前の制服よりも生地は何倍も薄い。
「早くご飯食べに行こう」
「うん」
台所は共有スペースにあってテレビがあったりするリビング的な場所もそこにある。夕食は当番で作ることになっているけれど朝食は燈依先生達が作ってくれる。
「彩夜乃ー! ねえ、兄上がね!」
「優斗、朝からなに?いいことあったの?」
優斗くんがとてもニコニコしながら彩夜乃ちゃんに話しかけている。きっとあのことだろう。彩夜乃ちゃんからは離れて結のところに行く。
「結、おはよう。やっと言ったんだね」
すっかり忘れていた後ろめたさから優斗くんになかなか思い出したことを言えなかったらしい。
「うん。・・昨日寝る前に言ったらしばらく寝かせてもらえなかった。おかげで寝不足で・・」
結と優斗くんも兄弟だからか同じ部屋で生活している。
「よかったね」
「彩夜からも陸達のこと話してあげて。みんなどうしてるか教えてーってずっと言ってるんだ」
なんだかんだ結も楽しそうだ。
「どうしたの? いつもより賑やかね」
「先生おはようございます」
「燈依先生、あれがおれの弟です。割とふわふわしてますが、よろしくお願いします」
「そう言われると似てるわ。でも弟くんの方が可愛げがありそう」
「優斗で遊ぶのはやめてくださいよ」
結がお兄ちゃんっぽい。でも私にみせるお兄ちゃんっぽさとはどこか違う気がする。
「ほら、みんな早く食べなさい。学校に遅れるわよー」
「はーい」
「中学校なのに弁当なんだねー」
流石に小学校は給食だった。そういえば中学生になるときに一番嬉しかったのは給食を食べずに済むことだった。
「うん。でも前の日に予約しておけば学食もあるよ」
「学食あるの!」
「高校のを使えるの」
すると後ろから注意が飛んでくる。
「彩夜、ちゃんと前見て歩いて」
「彩夜乃、人が多いんだからまっすぐ歩いて」
きっと同じことを思ったのだろう。彩夜乃ちゃんと顔を見合わせて同時に吹き出した。
「なんで笑うの!」
「だって二人がそっくりなんだもん」
二人は顔がそっくりというわけでもない。なんとなく似てる?程度だけれど注意するときの困ったようなそんな顔はあまりにもそっくりだった。
「優理兄ほどじゃないよ。ねえ、兄上達似てたよね?」
「・・そう・・だっけ。まあ双子だしある程度は似てるだろうな」
「兄上?」
「優斗、悪い。・・・流石に昔のことすぎて顔が出てこないんだ。優理がいたのはわかるけど・・それだけっていうか」
結には優斗くんの双子の片方がいるらしい。ただ幼い頃にどこかに誘拐されたんだとか。
「そうだよね。僕だって覚えておきたいと思ってて覚えてるだけだから。普通そんな感じだよね」
私だって小学生になる前の記憶なんてほとんどない。いくつか断片的に覚えているだけ。
「彩夜、楽しそうだな」
今は会いたくない人と会ってしまった。通学路は同じだから仕方ない。
「お兄ちゃん、おはよう」
彩夜乃ちゃんと会わせても大丈夫なものだろうか?
「彩夜芽ちゃん、お兄ちゃんってあの? あ、初めまして。この前はすみませんでした。一応、彩夜芽ちゃんの姉妹の和泉彩夜乃です」
「その節は本当に彩夜乃がすみませんでした。僕は彩夜乃と同じように引き取られて一緒に育った色葉優斗です」
お兄ちゃんは難しい顔をしている。大丈夫かな?
「・・彩夜の本当の苗字は和泉ってこと?」
「それは違うみたい。私と同じでそこの家の苗字だって」
「顔のつくりはそっくりだな。中は似てないみたいだけど」
そういえば私達を見るとみんな同じことを言う。
「お兄ちゃん、今度お菓子作ってくれる? 彩夜乃ちゃんに話してたら食べたいって言ってたの」
「テストが終わったらな。あ、ちゃんと宿題終わったか? テスト勉強はした?」
「宿題は終わらせたし・・・テストなんかどうにかなるって」
二学期が始まってすぐの実力テストの存在は昨日、宿題の確認をするまですっかり忘れていた。宿題は真面目にやったからひどい点数にはならないだろう。
「まだ一年生だろ。点数なんてこれから下がっていく一方なんだから」
「兄ちゃん、学校遅れるよ。早く行ったら?」
「距離は大して変わらない。遅れそうならもう少し彩夜も急いだほうがいいな」
「私はいいの」
お兄ちゃんにカバンを引かれそれに連れられて学校の方へぐいぐい歩いて行ってしまう。
学校のカバンはリュックの形になっている。ただ上のところに持ち手がついているせいでそこを引っ張られてしまうとそちらの方向に動くしか無くなってしまう。
ランドセルの頃はこんなことできなかったのに。
「彩夜芽ちゃんのお兄ちゃんは優しくて良いなー。うちのお兄ちゃん達は可愛がってはくれるんだけど雑だし面倒見はよくないって言うか・・」
「あー、言葉が足りなくてすみません。育った家にはそこの家の子がいて彩夜乃のお兄ちゃんのような存在なんですよ」
「の様な、じゃないの! 私のお兄ちゃんなの」
「はいはい。そうだったね」
「えっと・・・優斗くん? 結構苦労するでしょ」
「あー・・もう慣れてますから」
彩夜乃ちゃんには苦労させてる自覚はあるらしく何も言わず、けれど見えないところで優斗くんを強めにつついていた。
「うわぁー、これがクラスなの?」
優斗くんが教室に入った途端居心地が悪そうにしている。
「少ないよね」
ドラマのメンバーだけのクラスが作られていてしかも1年と2年は別だから人数は10人と少ししかいない。
授業の時は元あるクラスに入って受けるらしい。
「そうじゃなくて男子が少なすぎない?」
「そういえばそうだね」
「でも三分の1はいるよ?」
普通のクラスでも私の学年は男子の割合は半分より少ない。
「お兄ちゃんのところに行ってくればいいじゃん」
「優斗くん、夏休みの間に身長伸びたよね? 結より多分大きいよ」
「あ・・うん。制服の大きさが僕の方が大きくて落ち込んでた。大きめ頼んだから170の着てるんだよね」
結はまだ160でちょうどいいらしい。弟が10センチも大きいサイズを着ていたらそれは落ち込むだろう。
「宙もぐーんって大きくなったね」
つい最近まで目線が変わらなかったのに見上げるようになっていた。
「まだまだ大きくなるつもりだから」
今までとは少し違う学校生活。
「でもさ、始業式の日から授業しなくてもいいのにね」
「午後まで学校とか嫌だー」
「じゃあ、私は燈依先生のところに行ってこようかなー」
教科書とノートをまとめる。
「筆箱忘れてるよ」
「あ、そうだった」
「彩夜芽ちゃん教室行かないの?」
彩夜乃ちゃんに不思議そうにみられる。そういえば言っていなかった。
「行かないの。一人でも勉強できるから。どうしても行かないと困る時は行くけどね」
「そうなの?」
「うん」
みんなのように当たり前のように教室に居られればいいけれどそれがなかなかできない。小学生の時の一時期は普通に学校に行っていたのに。どうしてこうなっていったのかは覚えてない。みーちゃん達は理解があってそれも当たり前だけれどここにはそうでない人ばかりだ。
「彩夜芽ちゃん頭いいんだね!」
「私、授業聞いててもわからないなー。今度教えてよ」
「いや、そんなに勉強得意じゃなくて・・」
「いいのいいの。黒板写したノートいるときは言ってね」
「ありがとう」
そしてその日から数日後、ドラマの撮影が始まった。
半月後・・・
寮の私の部屋は東側に窓があって朝日がとても眩しい。
「彩夜芽ちゃん、おはよー」
彩夜乃ちゃんが部屋を仕切っている棚から顔を覗かせる。私と違ってちゃんと制服に着替えている。似ていても彩夜乃ちゃんの方がしっかりしていそうだ。
「おはよう」
「学校は? 行かないの?」
もうそろそろ出ないと学校には間に合わない。でもまだ行く気になれない。
「・・後で行く」
「うん。お弁当用意してあるからね。先に行っとくね」
「いってらっしゃい」
彩夜乃ちゃんが部屋から出ていったのを確認して布団から出ていく。着替えようか? でもまだ着替えたくない。少し待ってみんなが学校に行ったら先に朝食を食べに行こう。
8時半過ぎ・・・
もうみんな学校に行っただろうか? ほんの少し扉を開けて廊下に顔を出す。
タタタっ 足音が聞こえてきてそれが近づいてくる。姿は見えないけれど慌てて閉めた。
「彩夜? 起きてる?」
この声は結だ。結とも最近あまり話せていない。部屋が離れて女子は女子、男子は男子で固まっていることが理由でもあるかもしれない。でもそれだけでなく結はあれ以来あちらの時代と頻繁に行き来するようになって忙しそうにしている。
「起きてるよ」
こっちは女子寮なのに入ってきていいのだろうか? まあ誰もいないからバレないだろうし大丈夫かな?
「開けていい?」
「うん」
結は制服を着ている。まだ着替えていないけれど結は私のこんな格好は見慣れているだろうから気にしない。
「朝ごはん持ってきたよ」
「ありがとう。これから食べに行くつもりだったの」
この時間まで待っていたからお腹は空いていた。
「何かあった?」
「何もないよ」
冷えた味噌汁を飲む。あれ? この味・・
「気づいた? 秋翔くんが持ってきてくれたんだ」
どうしても家によって味が違う。お兄ちゃんのご飯が食べたいなと思っていたところだった。
「彩夜、家に帰る? どうせ近いからそれでもいいと思うよ?」
「帰るのは嫌だ」
お兄ちゃんに土日にでも帰っておいでと言われたけれど結局行けてない。
「彩夜」
「勉強は自分でしてるよ。テストだってそんなに悪い点数じゃなかったし」
最近よく休んでいることを何か言うつもりだろう。
「学校行こうとは言わないって。彩夜が嫌いなのは知ってる。ただずっと部屋にいるみたいだから庭くらい行かない?って誘いにきただけ」
「見られたら・・」
「じゃあ燈依先生のお家に遊びに行かない? おいでって言ってくれたよ。成雨さん?とあの狐はいるって」
確か家がここの隣らしい。でも一人で行く勇気はない。
「結は学校行かないの?」
「優斗に適当に言うために着替えただけだから気にしないで。行くなら一緒行く。どう?」
「・・行く。着替えるから外で待ってて」
「うん」
読んでいただきありがとうございます。
一つご報告です。最初の方のお話をちょこちょこ変更しているので文章が被っていたりなどすると思いますがご了承ください。久しぶりに見てみたらとてもひどい文章でした。順番に書き直していく予定です。
このお話で区切りがいいのでこの章は終わりだと思います。
次はどんな章になるでしょうか?
次話も読んでいただけたら嬉しいです。




