九話 夕食4
編集中です。かぶっている部分がありますがご了承ください。
「火出したのってどうなってるの?」
「さぁ?ある日やってみたら出来た」
何かの力なのかな? 私のシャボン玉みたいなのと一緒だろうか?
「使って疲れないの?」
やってみたら出来たってことはコツとかわからないんだろう。
「疲れない。でも彩夜は驚かなかったな」
「えっ?」
なにをだろう。驚くことなんてあっただろうか? すごいなとは思ったけれど。
「ほら、火を出したのに」
「・・人間でする人は初めてみたけど、あやかしならいるし・・ね?」
結はちょっと驚いたような顔をした後、くっと笑った。何か変なこと言った?
「人間か・・」
「え・・違うの?」
「おれが人間に見える?」
答えは出ているけれど結をじっと見てみる。綺麗な紅瞳を見つめてみる。はっきりした違いは知らない。でも感覚で人間かそれ以外かはわかるものだ。
「人間でしょ? あやかしにそっくりだけど違うよね」
「・・・うん。そうだよ」
結はパッとさっき以上の笑顔で笑った。何がそんなに嬉しかったのだろう?
「どうしたの?」
「いや、・・彩夜、魚焼こう」
「うん」
どうしてそんなに楽しそうなのかわからないけれど・・・まあいいか。
「結構焼き加減が大事なんだ」
「へー」
もしかして力のことと関係あるのかな? 私は結にシャボン玉のようなもののことを言える?
多分言えない。嫌われたらって思うと怖い。
「・・そういえばご飯は?」
友梨さんの家では食べたけれど、結の家では食べていない。
「おれは田んぼ持ってないからお米は買うか物々交換するしかないんだ。大体、魚と山菜で交換して貰ってるんだけどそれでもかなり安くして貰ってる方で・・・食べるのは2日に1回くらい」
「それで足りるの?」
中高生の男子ってご飯いっぱい食べるイメージがある。私だってご飯はたくさん食べるし、お兄ちゃんはそうだった。
「他の食材があるから」
結はそこまで背が高くない。私よりは高いけど、そもそも私が背が高くない。平均もあるだろうか。
まだ成長期が来ていないだけかと思っていたけど栄養の問題もあるのかもしれない
「でも、今日は大丈夫。昨日、たくさん手伝ったから桜がお米多めにくれたんだ」
私邪魔じゃないのかな? あんまり働いていないのにそれなりに食べる。するとどうしても結の分が減ってしまう。
「できることあったらするから。言ってね」
「うん。そうだ。明日は町に山菜売りに行こう」
町? ここは村だから町ってことはここより大きいのかな?
「どこにあるの?」
「山の向こう」
この辺りは山に囲まれているから仕方ない。どこに行くにも山を通らなければいけない。
「この辺にしか生えていない植物があって、それが高く売れるんだ」
ずっとこのあたりで育ったのに知らなかった。
「彩夜が珍しいやつを見つけてくれたし」
「そうなの?」
少しかもしれないけれど役に立てていたらしい。よかった。
「その後、買い物もしようか」
「街までどれくらいかかるの?」
「ざっと・・・一時間くらい」
もちろんこの時代に車はない。それどころか自転車も無い。つまり歩きで一時間だ。
「朝早く起きれる?」
「どれくらいの時間?」
「明るくなったくらい」
それってどれくらい? 普段起きるのは外が眩しい様な時間ばかりだ。 結はすでに私が朝弱いのを知っている。
「布団剥がして、起きるまでずっとあれこれ言われていたら起きるから」
お兄ちゃんは毎朝そうしている。
「はぁー、わかった」
「・・あ、今日は布団一つ桜の家から借りてきたから」
「ありがとう」
そっか。友梨さんの家は色々昨日の騒動で色々大変らしい。 だから私は今日は結の家にいる。
「あ、そろそろ魚いい感じ」
「美味しそう」
いい感じに焼き目がついている
「後は少し火から離して中まで火を通せば出来上がり」
「汁は?」
さっき切っていたのは汁の材料の野菜だ
「今から火にかけて・・・野菜が煮えたら食べれるかな」
それまで時間がかかりそうだ。何かするのかな?
「水浴びしてくる?」
「?」
なんだろう? まだ寒いこの時期にわざわざ水を浴びたくなんかない。
「えっと・・体洗いたいかなーと思って。今日は汗もかいただろうから」
結は言いづらそうに言った。
「陽が落ちると寒くなるからその前に・・入るなら」
こっちに来てからお風呂に入っていない。濡らしたタオルで拭いてはいたけれど・・入るのとはまた違う。
「どこで?」
「そこの川で」
もしかしてこの時代ってお風呂無いの?
「川って冷たく無いの?」
「冷たいけどもう春だし、他に方法もないから冬以外はそうしてる。・・寒いならお湯にしてから浴びたら?」
私は火を起こせない。どうしよう?
「・・川って普通に浸かるの?」
「浸からないと洗いにくくない?」
そうだけど・・・
「あ・・この辺、人は来ないから大丈夫」
「人はってなに?」
「動物はたまに来るかな」
なにそれ。怖い。しかも夕方の森の中・・それだけで元々怖いのに。
「心配なら・・その・・・遠く?・・というか、遠くもなく近くもないところから・・なにも来ないか見張っとこうか?」
それなら怖くないかな?
「もちろん彩夜の方は絶対に見ないから」
「うん。・・・お願い」
すると結がなんか微妙な顔をした。なんか困っているような・・何か迷っているような・・
「どうしたの?」
「その・・本当に頼まれるとは思わなかった」
「普通、ちょっとくらい動物が怖くても1人で行くものじゃ無いのか?」
またぶつぶつ言っている。けれどこの前と違ってはっきり聞こえて
「・・暗い森・・・怖いんだもん。それに結はそんな・・その、のぞきなんてしないでしょ」
「うん。しないけど・・そういう問題じゃなくて・・」
後で思うとこの頃は結の言っている意味があまりわかっていなかった。この頃は中学生になったばかりで考え方は小学生のままで幼かったのだろう。多分、結の前で寝る時に着ていた体育服から朝着物に着替えるくらいなんとも思っていなかった。きっと原因は家にはお兄ちゃんがいるし、小学校では体育服に着替えるとき男女混ざっていたからだ。
「はぁ・・なら早く行こうか」
「うん」
後にこの数日が恥ずかしい過去になるなんてこの時は思っていなかった。
「洗濯物はそこに積んであるから」
パジャマがわりの体育服などの着替えとタオルを持って川にいく。
「おれはこの辺にいるから」
結は川の手前で待っておくらしい。ちゃんと背中を川に向けて木に寄りかかって座った。
「・・いいって言うまでこっち見ないでよ」
見ないとは思っているけど念のため。それくらいの恥ずかしさは私にもあった。
「わかった」
早く終わらせようと川の方に向かった。この川は浸かると腰くらいまでくる深さがある。
髪を結んでいたゴムを取って髪を下ろす。あまり川に浸かりたく無いし寒いのは短い方がいいから髪洗うのは服を着たままでいいかな?
「わっ!・・」
思いっきり頭に水をかけたらかなり冷たかった。けどさっぱりする。
水をかけて、こする。それを何度か繰り返すとシャンプーがなくても汚れが落ちた気がした。
体を洗うのは流石に川に入らないといけないのかな? うん。仕方ない。
帯を引っ張ったところで一度振り返る。
うん。こっち見てない。大丈夫。でもちょっと心配だ。結ではなく他の誰か来た時が。
そのために一応大きめのタオルを体に巻いた。足を川につけてみる。やっぱり冷たい。
そうだ! これはプール、プール。お風呂がわりじゃなくてプール。
早く終わらせよう。もう諦めて一気に浸かった。プールと思っても寒いものは寒い。
さっと洗って震えながらあがった。
風が吹いて余計に寒い。川の方が暖かかったかもしれない。
ヒーターが欲しい。でも無いものは仕方ないからさっと着替えた。
「結、もういいよ」
「・・彩夜! 唇、紫になってる。大丈夫か?」
「寒い」
「早く家の中で温まって」
結は家の方に行こうとしない。あれ? 私だけ?
「結は行かないの?」
「水浴びしようかなーと思って」
私あの家に1人ってこと?
「ここに居ていい?」
「家でも怖い?」
「・・うん」
あの家は隙間風は吹くし、鍵もない。陽が落ちれば火をつけないと真っ暗だ。
「わかった。はい」
結は手にあの小さな火を浮かべ手をこっちに向けてきた。
「?」
どうすればいいの?
「手かして」
「うん」
言われた通りに手を出すと結はその上に火を乗せてきた。
私の手の上に火がぷかぷか浮かんでいる。
「あったかい」
「すぐあがるからそこから動かないように」
「はーい」
私は川に背を向けてその場に座った。
だんだん陽が落ちていく。空が青からオレンジ、桃色、紫と変わっていく。
「結、すごく綺麗だね。夕焼け」
「ここ、すごくいい場所なんだ。そうだ、陽が落ちたら・・・あ、でも・・早起きしないといけないし・・・明日がいいかな?」
結がどうしようか? こうしようか。とあれこれ言っている。
「?」
「うん。そのうちもっとすごいものを見せる」
なんだろう? すごいもの? よくわからないけれど結がそういうならいいものを見せてくれるのだろう。
「楽しみ」
「うん。すごく綺麗なんだ」
きっとお互い背を向けて話しているだろう。でも結の楽しそうな笑顔が簡単に頭に浮かんだ。
「ひゃっ!」
首に何か冷たいものが当たった。
「へー、こういうの弱いんだ」
結が面白そうに笑った。いつの間にか後ろに立っていたらしい。
「やめて」
「多分」
絶対またイタズラする気だ。
「帰ろうか」
「結、この火どうすればいいの?」
風でもなにをしても消えなかった。
「こうするんだ。多分、彩夜には出来ないけど」
結は火を手で握った。その手を開くと火は無くなっている。マジックみたい。すごい!
「もう汁できたかな?」
「早く食べたい」
「お腹すいた」
家に近づくといい匂いがしてきた。
読んでいただきありがとうございます
なぜかこんな展開になりました。
そう言えば帰る方法を作業しながら考えるという話はどこへ行ったのでしょうか?
やっと10話目になりました。今回も2日続けて投稿することが出来ました。
10話読んだ方はいるんでしょうか? 居てくだされば嬉しいです。
次話も読んでいただけると嬉しいです。




