再試験
もう一度ギルドへ
ーーー翌日
日が昇り、陽光が秋天を照らし始めた朝
まだ、人の出入りが鈍い頃
少女3人が傭兵ギルドに訪れた
*
ーーすこし前
看板娘が酒場の下準備を手伝っていたときだった。
開店前に少女ふたりが看板娘を尋ねてきた。
メアリーたちは朝早くに、これからギルドに出直す旨を伝えた。
それにあたり、他所から来て信用がなく、加えて昨日さわぎを起こしてしまい立つ瀬がない。
顔の知れている看板娘の助けを借りたい、と申し出た。
女将がその申し出を聞いていた。
「やっぱり絡まれたんだね、かわいそうに!
フロー! あんた、付いてってギルドの連中にバシッと言ってやんな!
ああ、こんな女の子を困らせるなんてねえ!
またなんか困ったことがあったら言うんだよ、あたしらが何とかしてやるから」
ということを豪快にまくし立て、フローレンスはまた追い出された。
「ごめんなさい、フローさん。またご迷惑をお掛けして」
「いえいえ! わたしも、もともと付いていこうかなって思ってたんですよ。
また絡まれちゃいそうで心配だったんです!」
*
ということで、少女たちは3人で傭兵ギルドを訪れた。
まだひとも少ない、昨日と同じ、一番端の受付に近づいた。
「ようこそ・・・、 あ、昨日の」
「はい。昨日ご迷惑をかけた者です。」
「その、昨日は悪かった。 いろいろと」
メアリーは腕を組み、すこし俯いている。
「メアリーさんは悪い方ではないんです。 わたしが保証します!」
意外にも、ギルドの青年は嫌な顔をしなかった。
「いえいえ、こちらも失礼なことを言ってしまったので」
メアリーは安堵し、眉がすこしほどけた。
「そ、そうか。
あたしは、ただ傭兵登録したいだけなんだ。迷惑をかけるきはないから」
「それはよかった。
昨日、失礼なことを言ってしまったので、やめてしまうかと思ったんです。
僕の独断で決めていいことではなかったのに。本当にごめんなさい」
「べつに、もう気にしてないから、大丈夫だ」
青年は人の良さそうな笑みを浮かべる。
「あ! それで昨日、こちらの証明書を預かったままでした」
青年はメアリーたちの傭兵証明書を取り出した。
「あの後ギルド長に相談したところですね。
おふたりの傭兵としての腕が認められるなら、傭兵登録を受理する、と」
「腕を認められる、というのはどういったことでしょう」
「はい、それなんですが―――」
そこで青年の後ろから影が下りた。
「単純だ。 もう一度、試験を受ければいい」
顔に傷のある壮年の男が出てきた。
「あんたは?」
「俺はこのギルドの代表者をしている。
そんで、お嬢さんたちの今後を決めるもんだ」
「所長さん! メアリーさんは目つきは怖いけど、悪い人ではないんです。信用してください!」
「ん、おお。フローレンスか。
俺は別に信用していないわけではないぞ」
ギルドの所長さん、と呼ばれる男はメアリーたちをじろじろと見る。
看板娘はメアリーたちを守ろうとひとり奮闘していた。
「フロー、おまえも知っているだろう?
傭兵ってのは戦えなきゃならない。半端な奴を戦場に出しても、死体が増えるだけ。
上の奴らは誰だろうと気にしないんだ、ここで止めてやれるなら止める。
それに、こんな若い子らを安易に送る訳にいかない」
所長はメアリーたちの傭兵証明書を見る。
「メアリーとリリー、傭兵で片方は神官。
まあ、腕は戦ってみればわかる。
俺が受け持ってやる。自信があるなら訓練場へ行くが・・・どうする?」
「所長さんと戦うんですか!」
フローレンスだけが驚いていた。
「フローさん、大丈夫ですよ」
「ああ、心配するな」
「挑戦するか?」
「ああ、頼む」
メアリーは爛々と眼を輝かせた。
フローレンスは孤軍奮闘