少女の救い
その夜のおはなし
夜、
少女ふたりは看板娘の都合した宿にいた。
リリーはすでに長い襦袢のみになって、寝台に腰掛けている。
窓の外をぼうっと眺めていた。
しばらくすると、メアリーが水差し片手に部屋に戻った。
「あまり、その姿で出歩かないでください」
リリーは額をおさえる。
メアリーはリリーとおなじ格好、下着のままだった。
「水をもらってきただけだ」
メアリーは寝台にどすっと座り、二杯分の水を注ぐ。
片方をリリーに渡して、おもむろに話し始めた。
「どうするんだ」
リリーは水に口につけて、もったいぶったように問う。
「どう、というのは昼間のことでしょうか」
「わかってるだろ」
「ええ、まあ。
あした、また出直してみましょう」
「出直したっておなじだ」
メアリーは眉をひそめて、陰った眼差しで手元の杯を見る。
リリーはメアリーを見つめていた。
「はあ最悪、腕試しでもさせればいいか」
「きっとそうなると思いますよ。手加減なさいね」
「それがいちばん難しいってわかってるだろ。
そうまでして、ギルドに行かなきゃだめなのか?
戦場に出てしまえばさ―――」
「ええ、しかし戦場に出ても同じことになりますよ。
なにも後ろ暗いところが無い方が、長く続けられるでしょう」
「長く、か」
「その方が都合が良いですよ」
メアリーの表情は暗く、声は諦観にも悲痛にも聞こえる。
「・・・たくさん殺せるからな」
「ええ、それがあなたの救いとなるでしょう」
リリーは祈るように指を組み、微笑を浮かべた。
メアリーは救いを望んでいます。