看板娘の苦労2
走り回ったフローレンスさん
ーーああ、なんとかなってよかった
看板娘フローはその日ぐったりとしていた。
酒場で忙しいときも、こんなに疲れることはなかった。
一番の功労者だったであろう彼女は、
その日を振りかえりながら、まどろみに落ちていった。
母に追い立てられて、傭兵ギルドに向かった。
いつものような喧騒に怒号が飛び交う場所だった。
酒場で彼女は喧騒には慣れていた。
ーーひとが多いなあ、メアリーさんたち大丈夫かな
しかし、その怒号が飛ぶところに
目当ての少女たちがいるとは思わなかった。
ーーだいじょうぶじゃなかった!
なんか囲まれてる!?
さっそく絡まれてると思って、急いで間に割って入った。
仲裁しようとすると、ギルドのひととガドさんに助けを求められた。
どうやら食って掛かったのはメアリーさんだったらしい。
すごく怒っていて、なだめようとしても聞かなかったので、
無理やり連れだした。
ーー抵抗されたらどうしようと思ったけど、リリーさんが助けてくれた
「メアリー、落ち着きなさい。
騒ぎを起こして、兵士に呼ばれる方が面倒ですよ」
わたしがなんとか連れ出せたのもリリーさんのおかげのようだった。
それから、酒場に戻って、メアリーさんを抑えて、
ふたりの宿を都合して、夜になってようやく落ち着けた。
あらためて挨拶すると、
リリーさんは神官だと教えてくれた。
ーーなんで傭兵やってるんだろ
神官は貴重で、どこでも必要とされてるはずなのに、
遠まわしにリリーさんに聞いたても、笑って内緒にされた。
リリーさんの笑顔は心臓に悪い。
メアリーさんはかわいい。
ちょっと気が短いけど、仕草がこどもっぽくて妹みたいに思えた。
リリーさんにこっそり教えてもらったが、メアリーさんは栗毛とか茶髪って言われると怒るらしい。本人は赤毛が気に入ってるんだとか。
そのあとは、メアリーさんたちを宿へ送った。
ーーきょうは、いそがしかったなあ
開けたままだった窓から、冷えた風がはいってくる。
敷き布に足を滑らせ、少女は沈んでいった。
おつかれ