ごあいさつ
しっかり自己紹介
その夜、少女ふたりは酒場にいた。
日が落ちても、
熱気で肌に汗が浮かぶ夏の夜半でも
喧騒はまだまだ続いている
酒場の一画に、凪いだ海のような
静かで穏やかな空気が漂うところがあった
少女ふたりと看板娘のついた卓だった。
「それにしても、
本当にフローさんが来てくださって、助かりましたよ」
傭兵ギルドでの騒ぎは、看板娘の仲介によって収まった。
少女たちを追ってきた看板娘がギルドにつき、
火がつきそうになっていたメアリーを見て、一度落ち着きついて、出直しましょうと連れ戻した。
初めは、看板娘にさえ噛み付いていたメアリーを、強引に連れ出したことで場が収まったのだった。
「いえいえ、結局無理やりになっちゃいましたし、
お邪魔してしまったみたいですね」
看板娘はメアリーを見る。
メアリーは昼の騒ぎからずっと腹の虫がおさまらないようだった。
今も椅子の上に膝を丸めて、そっぽを向いていた。
「本当にすみません。
お会いしたばかりなのに、ご迷惑ばかりお掛けしてしまって」
「いえいえ、困ったときはお互い様ですよ!」
少女ふたりはその日の宿も都合してもらい、
いま夕飯にありつけているのも看板娘のおかげだった。
「そうだ!おふたりはずっと旅して来られたんですよね。
おふたりのこと聞かせてください!」
「ええ、もちろんです。
そういえばしっかりとご挨拶もしていませんでしたね」
メアリーは頭を膝にもたげてうつむいていた。
話に興味はあるようで、様子をうかがっていた。
「私はリリーと申します。
メアリーとおなじ、傭兵で神官をしてます」
最後の方は小声で、顔を近づけて言った。
「え!すごいですね。
なんだか特別な感じがすると思ったんですよ!」
リリーは相変わらず見惚れるような微笑を浮かべている。
「ほら、メアリーもね」
「・・ああ。
あたしはメアリー、傭兵をやってる。
ラトーラって村から来た。
・・・よろしく」
メアリーは頬を染めていて、
看板娘にはそれがとても愛らしかった。
「はい!よろしくお願いしますね。
わたしはフローレンスです、フローと呼んでください!」
看板娘は花のように笑った。
フローはフローレンス
看板娘の女の子