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血塗れ少女は死にたがり  作者: うつむき
13/14

変わらぬ時間


酒場の話。


メアリーとリリーは傭兵ギルドに通うようになった。


初めは易しい依頼から受注するようになり、依頼終わりに酒場に寄って宿に帰る。


年若いふたりは物珍しく、絡まれることも何度かあったが、所長や受付の青年の仲裁、ときにメアリーの実力行使によって障害を退けていった。


数か月もすれば、この街でふたりを知らない人間はいなくなった。




ーーーーーーーーー


「おかえりなさい! 今日もお疲れさまです!」


西の酒場には今日も看板娘の声が響く。

もう見慣れた光景となった、メアリーとリリーを労う彼女はいつもより気合が入っている。



メアリーとリリーが依頼を終えた日には必ず、この酒場に寄るようにしている。


ほかに懇意にしている店がない、というのもあるが、

以前に何日も顔を見せなかったときにフローレンスが心配になるからとメアリーに泣き詰め寄ってから、メアリーたちはこの店の常連だった。


メアリーは照れくさそうにしながらも、この馴染みの場所を気に入っていた。

今日も依頼を完了し、酒場に寄っていた。


メアリーが右手に何かを提げて、フローレンスに差し出した。


「これ、みやげ物。」


「あ! 今日も持ってきてくれたんですか?」


「ウサギは捌けるか?」


「もちろんです!

 いつもありがとうございます。

 でも、いつも頂いてしまって大丈夫なんですか?」



「ええ、大丈夫ですよ。

 依頼された分は納めましたが、余った分は自由にしていいと許可を頂きましたので。

 美味しく調理してください」


「そうなんですか。

 じゃあ、今日もたくさんご馳走しちゃいますね!」


そう言ってフローレンスはみやげ物を抱えて、厨房に走り、戻ってくるときにはたくさんの皿をもってくるのだった。


いろどり豊かで、できたての料理。

少女ふたりの卓に出すには多すぎるのに、ふたりが帰るころには全てきれいに食べつくしてあるのだった。


そのほとんどをメアリーが食べ尽くし、リリーはスープをひとさら飲むくらいなのだが。



フローレンスはリリーももっと食べるよう勧めるが、相変わらずの小食のようで、笑顔で躱していた。


食事に夢中のメアリーの代わりに、リリーはよくフローレンスと雑談をしていた。

そろそろ山ネギが収穫どきで市場に出るだろうとか、どこかの商人が異国の舶来品を仕入れたとか、他愛もない話。



「ごちそうさま」



そんな話をしているうちに、メアリーが食事を終える。メアリーもすこしの間だけ雑談に加わり、そのうち宿に帰る。


ゆったりした時、酒場は一段と騒がしい時間。

このふたりも日常の一幕に加わった、

変わらぬ時間がフローレンスは好きだった。




今日は少しだけ違うことが起こったが。








リリーは少食。

興味が勝るため珍品は必ず食べる。

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