第7章
これで女子が九人。一応、チームはできる。車から降ろした道具も一式揃っていて、と言うより、草野球なのに僕のいた野球部よりボールもバットもベースも綺麗だ。大学生ってお金あるんだな。
「姉、これで全員?」
「あのね、あと一人、ここでスカウトした子が来てくれると思うんだ」そう言い終えた姉の後ろにもう、いつの間にか静かそうな女の子がいた。中学生くらいか?
「姉、あの、後ろ」
「ん?あーっ、蘭ちゃんだ。来てくれたの?ありがとー」
「おはよございます。あの、私、なんにもできないですけど」
声がえらく小さい。ちょっと暗い感じの子だが、体つきはバネというか、走るのが速そうに見える。
「蘭ちゃんはね、中学の陸上部が終わって、高校から推薦がきてるんだって。走るのが超速いんだよん。私、競争したら膝痛くなったもん」
「なんか、おばちゃんみたいな発言だな」
「拓は後で罰ゲームね。あ、そう言えばこれで全員揃ったんだった。おーいみんな集合、自己紹介タイムだよーっ、ほら輪になって」罰ゲームっていう響きがすごく嫌だ。
「じゃあ、大学生から紹介しましょって言うか私からね。小さな大投手、村上拓馬の姉の村上舞でーす。永遠の四番で投手でーす。よろしくう」
「えー、その舞とバッテリー組んでました、捕手の伊藤愛美です。こらそこドカベンって言うな」
「桐谷薫と申します。大学で舞ちゃんに誘われたのですわ。高校ではこちらの美嘉ちゃんとテニスをしてましたの。皆さま、よろしくね」
「佐伯美嘉ですっ。私、野球も薫と一緒がいいな。野球にダブルスってあるの?え、そうなんだ。みんな、美嘉って呼んでね」
「私は秋山リサ。エメーリカとジェペーンを行ったり来たりしてるの。なんでかジェペーンの人には怖がられるけど、怖くないよ。リズって呼んでね。あ、でもそこのリトゥーリーガーは私のこと気安く呼ばないでよね」
「……前田小百合です。ソフト部で三塁守ってました。村上先輩のひとつ下です。よろしくお願いします」
「あ、三田村瞳っす、バレーやってました、よろしゃーす」
「三田村さん、ほんま大きいわあ……おりょ、うちらの番かな」
「そやで、うちらの番やで。沙織から行きーな」
「えーと、門田沙織です。で、隣のそっくりさんが」
「門田詩織です、誰がそっくりさんやねん。お気づきかと思いますが、うちら双子なんです」
「あのーあんまり野球は得意やないんですけど、お姉ちゃんと拓ちゃんに教えてもらお思います、ほなよろしくお願いしますう」
「よろしくお願いしますう」
「じゃあ最後、蘭ちゃん」
「あああ、あの、は、早坂蘭です」
「蘭ちゃん蘭ちゃん、もうちょっとだけ大きな声でお願いっ」
「は、は、早坂蘭ですっ。中学生で、あの、陸上部で、野球はあの、えと、あんまり……なんですけど、頑張ります。よろしくお願いひましゅ」蘭ちゃんは最後思いっきり噛んでた。