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第60章

「ふにゅん?じゃあ今度は、ざっ、で、みゅーん、ずあっ、だな」


 姉が意味不明な言葉を呟いて素振りを二回、納得したようだ。おそらくは上体を突っ込み始めるタイミングを計ってたんだろう。


 あれだけ踏み込まれたら、牧田は内角に投げたくなるはず。しかし二つ前の打席、速球はファールだったがスタンドに運ばれている。今日、最も合わせられていないのがシンカーだ。しかも今、外は十分見せた。


 五球目。牧田の表情が変わった。突然セットをやめ、ノーワインドアップからの投球。


 まずい。せっかく合ってきたタイミングが変わってしまう。牧田は変則的なフォームから踏み出し、サイドから腕を振る。速球、インハイだ。


 快音が響き、打球は左中間スタンド上段に突き刺さった。


 からん、姉が投げたバットの落ちる音が響く。


 一瞬、世界が止まったようになった時、「いやー、ヒーローも楽じゃないわ」という声が聞こえた。


 その声の主である姉だけが、その時間、空間を支配していた。


 少し遅れて、ベンチは大歓声の狂喜乱舞。姉がこっちに手を振りながら、ゆっくりベースを回る。牧田は帽子をとってお手上げ。そうだ。これが僕の姉だ。


 あの日、選手生命が潰えたのは、なぜ僕でなく姉だったんだろう?


 姉がぴょんとホームベースに足を揃えて乗り、胸の前で手を合わせてお辞儀。逆転サヨナラホームラン成立。


「整列」主審が叫ぶ。改めて相対したチャラ男チームの面々は、うちの選手たちと同じくらい、清々しい表情だった。

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