第6章
「ふーん、この子がエース?小さいじゃん。やっぱり日本のハイスクーベイスボウなんてこの程度ね」
「こらリズ。私の可愛い弟に何てこと言うんじゃうるあ」
「はっ、私は思ったままを言っただけだし。こんな子、エメーリカならリトゥーリーグにだってたくさんいるわ」
金髪美女は突然、喧嘩腰で僕と姉に対してきたが、まあ本場の野球を見てたらそんなもんか。と思ったので僕は気にせず、野獣のような表情の姉を制した。
「いいって姉、まあ俺が小さいのは本当だしさ。よしよし、ほらお座り」
「ぐるるるるる」
「わかったから、とりあえず場をまとめろよ」
「ぐるる……わかったもん。じゃあみんな、美嘉ちゃんの車から道具出すよー」
あっさりしたもんだ。さすが姉。金髪は僕から反撃が来ないせいか、肩透かしを食らったようになって微妙に気まずそうな表情をしていた。
その後、準備しつつきゃっきゃとガールズトークしている間にメンバーが集まってきた。
まず、ソフト部では姉の後輩に当たり、僕と同じ学年、氷の女王という異名の持ち主、前田小百合。引退して少し伸びたらしい黒髪を後ろで束ねていて、見るからにスポーツやってそうな感じだ。
なぜか前田と一緒に来たのは、同級生で元バレーボール部の三田村瞳。僕がうらやましいくらいの長身。ぼーっとしてる印象だけど、うちの高校はバレーも強い。その中でレギュラーだったんだから相当だ。
「村上先輩、お久し振りです」
「さゆ、ほんと久し振りー」
「すみません、一人しか集められませんでした」
「え?いいよいいよ、十分だよっ」
「おざまーす、三田村です。よろしゃーす」
「おう。私は拓の姉の村上舞と申す者じゃ。よろしく候。でも三田村さん、高いねー……私が巨人とか言われてるのが嘘みたい。何センチ?」
「百八十四です」
「ふええ、拓、お姉ちゃんが小さく見えるよう」
「それでも俺よりでかいけどな」
次に来たのが、門田沙織、詩織の双子姉妹。うちの近所に住んでいて、小さい頃は姉と僕がよく遊んであげていた。そっくりなので親も見分けがつかないとか言われてるけど、細かい癖とかで僕は普通にわかる。今年もう高校生になったはずなのに、小学生みたいに小さい。
「お姉ちゃん、おはよお」
「お姉ちゃん、おはよお」
「おはよっ、クローン姉妹。今日はどっちがどっち?」
「えーとな、うちが」
「えーとな、うちが」
「詩織が先言うたらええよ」
「沙織が先言うたらええやんか」
「……もうわかっただろ、姉」
「拓ちゃん、おはよお」
「おはよお、拓ちゃん」
「おはよ。二人とも、姉に誘われたのか?」
「せやねん」
「そやねん」
「そっか。あ、そのグラブ俺があげたやつじゃん。懐かしいな」
「せやで。遊ぶ時は二人で交代で使うねんで」
「お姉ちゃんと拓ちゃんと遊ぶの、ほんま久し振りやわあ」