表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/66

第5章

 そして、その日曜。朝六時に起きて軽くストレッチ、その後で久し振りに触ったグラブの紐を点検してみる。まあ別に僕が何かやるのか否かも知らないけど、万全の準備をするのは癖になっている。


「なあ姉、もう起きる時間じゃないのか」

「んむゅう、あとじゅうごふにゅん」

「それじゃ完全に遅刻だろ。ほら、起きろよ」

「ふにゅる……もうそんな時間?」

「う、ほら、ちゃんとパジャマのボタン閉めとけよ」

「ん、なになに、お姉ちゃんの見たい?」

「俺、今日行くのやめよっかな」

「わわわ、ちゃんと起きるから。て言うかもう起きたよ。しゅばっ」

「うん、ズボンも上げような」


 場所は河川敷らしい。ひょっとして、この間見かけた女の子もメンバーだったんだろうか?


 姉は自転車で僕より先を行くが、変にきょろきょろしてて危なっかしい。でもやはりと言うか、何事もなく到着。


「んー、一番乗りかな?今日はさ、十人くらい集まりそうなんだよ。拓のおかげだね。拓大好き」

「それあんまり外で言うなって」

「あ、あの車、たぶん美嘉ちゃんだ。大学の友達なの」


 姉が美嘉ちゃんと呼んだ人の車が停まり、四人出てきた。みんなジャージとか運動する服装ではあったけれど小綺麗な感じで、さすが大学生は違うな、と思った。


 と言うより、なぜか姉の交友関係は美人が大半を占める。類は友を呼ぶってやつか。


 でもそのうちの一人、ちょっと横に大きい女性を僕は知っている。姉とバッテリーを組んでいた女ドカベン、伊藤愛美だ。年上だけど小さい頃から知っているので、僕も愛ちゃんと呼んでいた。でも実際、少し痩せた気がするのと、ゆるいパーマのロングヘアでかなり女らしい印象になっている。


「おはよ。拓ちゃん、久し振りだねー」


 愛ちゃんは僕に真っ直ぐ歩いてきて肩をばしっと叩いた。昔は一メートルくらい吹っ飛ばされていたが今は平気だ。


「おー、やっぱ、しっかりしてるわ。いや立派になったねー」

「ほんとに久し振りですね」

「うわわ、敬語とかやめて。うわわわ、えーん舞、あたし拓ちゃんに嫌われたあ」


 愛ちゃんは大げさに姉にすがりついて嘘泣きを始めた。


「よーしよし、いい子いい子。拓、愛に変な気を遣わないの」

「変な気って何だよ。わかったけど」

「わー、ほんとにあの村上拓馬くんだ」


 後の三人のうち、二人が僕らの前まで来た。運転していた活発そうなスポーツ眼鏡のショートカットの女の子と、いかにもお嬢様といった感じのふわふわした茶髪の女性。


「あ、どうも。姉がお世話になってます」

「へえ、テレビでは小さな大投手って言われてたけど、そんなに小さくないんだね」

「舞ちゃんに似て、弟くんも可愛いですわ」

「あーっ、何よ薫、可愛いって」

「うん?美嘉ちゃん妬いてるの?安心して、美嘉ちゃんが一番可愛いですわ。うふふ」

「ほんと?でも私にとっては薫が一番だよ。えへへ」


 何だかわからないが、いきなり女同士でいちゃいちゃされて僕がちょっと混乱しているところに、さらに最後尾、西洋のモデルみたいな金髪の女性が近づいてきた。腰の位置がめちゃくちゃ高い。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ