表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/104

24-2 裏の裏

 魔法陣が完成すんのは、明後日じゃなかったのかよ!

 誰に文句をつければいいのかわからないまま、小走りで街に戻る。

 戻った後に何があるかわからないから、岩巨人の時みたいな全力移動するわけにゃいかない。


 「なんかセシリアから渡されてたよね。

  開けてみた方がいいんじゃない?」


 レイルに言われて思い出した。

 今朝方セシリアに渡された袋。

 開けてみると、折り畳まれた紙と、金属の小さな円い板が入ってた。

 円い板を見ると、ジークの剣の魔法陣が彫ってある。紙に書いたやつで試して失敗したのに、こんなん作ったのか。

 紙の方を広げてみると、支部長からの指示だった。


 “これを見ているということは、ソリトが囮だった可能性が高いということだろう。

  3日といわず、すぐにもフリードが現れる可能性がある。

  2番の魔法陣は、当然フリードも使えるはずだ。仕組みからすると、ある程度正確な街の地図があれば、街の外からでも2か所で使って示した線を延ばして交わる場所を割り出せる。つまり、フリードは既に封印のある場所を突き止めている可能性が高い。

  我々は、少しでもフリードの油断を誘うため、合図した場所に剣士を集める。封印の方には、少数だけ配置して待ち伏せる。

  君達に遅れて、魔石などを街から出すために魔法士を中心としたパーティーを出発させることにしている。君達が街に戻る途中で会うことになるだろう。

  一緒に入れてある指示書を見せれば、好きなだけ魔石を受け取れるから、必要なだけ持って行って封印を守ってくれ”



 袋の中には、指示書と許可証が入ってるようだ。

 “フォルスとレイルに、求められただけ魔石を渡すように”

という指示書と

 “この者が必要と判断した行為については、ギルドで責任を持つ”

という許可証。


 「なんだこりゃ」


 つまり支部長は、3日後に爆発とかってのも含めてフリードの罠だって疑ってやがったのか。


 「ったく、予想できてたんなら、教えといてくれよな」


 「最初から説明してくれてたら、もう少し準備できてたかもしれないのにね」


 「まったくだ」


 だが、ここまで警戒してるってことは、ギルドの方にもフリードの息の掛かってる奴がいるかもしれないってことか。

 フリードは、結界が完成するのを待って来んだろうから、かなり厳しい戦い(こと)になんぞ。


 魔石がどこまで保つかが勝負だから、正直、補充してけるのはありがたいな。


 「君は両手で握ってでも使えるけど、僕はポケットに入れといて取り出すしかないからね。いくつ持てるか。それに、僕が強化に使ったら、すぐ空になっちゃうしね」


 たしかにな。レイルは両手で剣を振らなきゃなんねぇから、魔石を手に持ってることができない。


 「魔石が空になったら、俺が持ってんのを渡すか」


 「いちいち君んとこに下がるのも危ない気がするね。そっちは最後の手段かな。

  最初に大きめの使って、できるだけ早く勝負着けないと。

  君には、出し惜しみなしで援護してもらった方が助かるかな。

  本物の結界だと、魔石がどんだけ吸われるかもわかんないし」


 そうか、俺の作ったモドキでさえ、あれだけ魔力吸われたんだ。本物はもっと強烈かもしれないよな。


 「わかった。なるべく手数重視で牽制する」





 街に近付くと、荷馬車の一団が向かってくるのが見えた。

 こっちを警戒してるのが窺える。こいつらが魔石を持って逃げる担当か。えらく金目だからな、そりゃ警戒もするだろう。


 「支部長の指示で運んでんだろう。

  俺は6級のフォルスだ。支部長の指示で、魔石を分けてもらいたい」


 両手を広げて敵意のないことを示しながら声を掛ける。

 状況が状況だ、気が立ってるだろうし、無駄な時間は使えない。

 1人が近付いてきた。


 「フォルスといったな。支部長の指示とは?」


 「指示書を見せる。この袋の中だ」

 言いながら、袋の内側を相手に向けて、ゆっくりと指示書を取り出す。

 取り出した指示書を広げて、相手に見せながら手渡した。

 相手は指示書を読み、

 「わかった。ついてこい」

と荷馬車の1台に連れていかれた。


 「どれでも持って行くといい」

と言って、男は一歩引いた。

 俺は、懐から2種類の大きさの魔石を取りだして

 「このくらいの大きさのが欲しいんだが、どれに入ってるかわかるか?」

と訊いてみた。

 いちいち探すと手間だからな。知ってんなら、教えてもらった方が早い。


 「この箱とこの箱だ。一応、渡した数は把握する必要があるから、箱ごと渡すというわけにはいかんぞ」


 箱の中から、拳くらいのを10個、すっぽり拳に隠れる大きさのを10個受け取って、そいつらとは別れた。


 「レイル、これで街まで走れるな」


 でかい魔石から魔力が調達できれば、体力を使わずに身体強化ができる。

 今の寄り道分を取り戻す意味もあって、身体強化して街へ急いだ。





 街に入り、身体強化を解いて封印の場所へ急ぐ。でかい魔石が1個、空になった。

 不可視の結界を張ろうかとも思ったが、相手が元高ランクの魔法士だ、下手に魔素を弄ると逆に勘付かれるかもしれない。

 念のため、封印の近くを探索したが、何も引っ掛からなかった。支部長が用意してるだろう伏兵もだ。きっちり潜んでるらしい。

 俺達も物陰で静かに待った。

 魔法陣の完成前に間に合ってよかった。


 と思ってたら、突然魔素が薄くなった。

 同時に、魔石からゆっくりと魔力が吸い出されてくのがわかる。吸い出す早さは、俺のモドキよりちょっと早いか。


 「レイル。こいつで、まず強化しとけ」


 さっき貰ってきた大きな魔石を1つ、レイルに渡すと、レイルは素顔に戻って魔石の魔力を全部剣の強化に使った。切断力の強化か。これまででも一番じゃないかってくらい強化されてる。

 俺の方も、小さな魔石を3つずつ、両手に握りこんで魔力を吸われないようにする。

 みゃあをその場に残し、2人で石碑の前に立った。




 「ふん、ネズミが5匹か。なかなかどうして、やるではないか。

  だが、5匹ではものの役には立たんな」


 路地裏から現れたのは、フリードだ。今日はあの色眼鏡をしてない。

 目が両方金色だと!? そうか、あの色眼鏡は、それを隠すためだったのか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] >ソリトが囮だった可能性が高い うわーっ!! オーリンさすが!! キレッキレだね。これは軍師向きーー!! そうだよね。レイルだって言ってたじゃんね。手下一人の命なんて惜しくないって!!…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ