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23-2 死んだはずの冒険者

 詰め所に連れてかれると、セシリアがいた。

 俺達を詰め所まで案内した門番は仕事に戻り、俺達とセシリアの3人だけになると、セシリアが何か書類を見せてきた。それは、リアンで行方不明になってた冒険者の一覧表だった。こんなもん作ってあったのか。


 「フォルスさんの言っていたことが当たりだったようです。

  このソリトという人が、先程街に入りました」


 セシリアが指差したソリトという男は、8級の剣士で、1年くらい前にオーガの討伐に失敗して死んだことになってる奴だ。死んだと言っても、帰ってこないから死亡扱いになっただけで、死体は見付かってない。というより、誰も探しになんて行かない。

 俺の言ったことが当たりってのは、要するにこいつは死んだことにしといてこういう時のために手帳を持ったままだったという意味だろう。自分の意思で今頃こんなとこに来るわきゃねぇから、要するにフリードの手駒なんだろう。


 「こいつは今どこに?」

 訊くとセシリアは

 「誰何されて逃げたそうです。それも街の中に。ギルドで依頼した斥候職が追っていますが、捕まるかどうか」

と答えた。

 「街に入るにはギルド手帳を見せなきゃならないから、生死不明ってことにしたんだろうとは思ってたが…」


 「ここに来たってことは、街の中でやることがあるってわけだよね」


 「セシリア、ソリトって奴の顔は見たか?」


 俺達は、そいつの顔を知らないから、このままじゃ追うこともできねぇ。


 「私も見ていません。私も知らせを受けてから来たので」


 んじゃあ、俺達が追うのは無理ってこったな。


 「よし、一旦ギルドに行こう。

  支部長に大事な話がある」



 ギルドでも、ソリトの件で騒ぎになってたが、構わずに支部長を呼び出す。

 いつもの部屋で支部長を待ち、やってきた支部長は、まずはソリトのことを話した。


 「リアンで死んだことになってたソリトって奴がここに来たことは聞きました。

  けど、俺達はそいつの顔を知らないんで、そっちは任せます。

  こっちも、かなり急ぐ話を持って来てるんで」


 「急ぐというのはなんだ? 魔法陣のことで、何かわかったのか」


 このおっさんを驚かせるのはホントに難しいな、おい。


 「はっきりしたわけじゃありませんが、結界術の秘密に辿り着きました。

  1つ実験が残ってんですが、この明かりの魔法陣が光るか試してみてください」


 支部長が出した箱に、さっき逆五角形の中に入れてた明かりの魔法陣を入れてみた。

 やっぱ光らねぇか。


 「光らないようだが、これがどうした」


 「そいつは、元々は光るだけの魔力を溜めてた魔法陣です。

  どうやら、そっからも魔力を吸われたようですね」


 「魔力を吸う魔法陣を発見した、ということか」


 ホントに鋭いおっさんだな。

 まぁ、ちょっと違うが。


 「いくつか試してるうちに、まずいことに気付きました。例の魔素溜まりが作ってる魔法陣の目的です。

  明かりの魔法陣の内側だけのを5つ用意して、魔素溜まりみたいに等間隔に置きます。

  それぞれに直接魔力を籠めると、そのうち魔法陣の上から、1つ隣の魔法陣に魔力が送られるようになる。

  今の魔素溜まりと同じです。

  それが続くと、やがて魔力がずっと流れたままになるんです。

  こうなると、もう魔法陣を動かすこともできなくなります。

  で、そうなると、内側の逆五角形の中にある魔素も魔力もどっかに消えちまう」


 「消える?」


 「どこに行くのかわかりませんが。魔法を撃ち込んでも打ち消されるし、魔力を籠めた魔石を置いたらすぐ(から)になる。

  その明かりの魔法陣も、逆五角形の中に入れといたんで、魔力が(から)になったってわけです」


 「驚いたな。

  まさか、明かりの魔法陣で結界術を再現してみせるとは」


 「大まかな仕組みはそういうことだと思いますが、もっととんでもないでしょうよ」


 「あの魔素溜まりの魔法陣も、いずれ魔力が繋がって、この街全体があらゆる魔力を失うというわけか」


 「内側にありゃ、魔法陣さえも魔力を失うんです。封印がどんなもんにせよ、100年も保つってことは、なんかの魔法を使ってるでしょう。どっからどうやって魔力を得てんのか知りませんが、魔力がなくなりゃ封印も解けちまうはずだ」


 「それがフリードの狙いか。

  とすると、魔法陣が完成する前に、壊すか、封印を守る方法を見付けるかしなければならんわけだな」


 「地面に置いた魔石と、手に握ったままの魔石じゃ、魔力の抜ける早さが違います。

  あと、魔法陣の外で練った魔力は中に入ってもなくなりません。魔法を使った途端に消されますが。

  レイルの剣に籠めた魔力も大丈夫でした。

  つまり、人の体の中や体に触れてる魔力は奪えないってことじゃないかと」


 「なるほど。

  つまり、封印を守るためには、人間で囲むという方法も使えるということか」


 おい?


 「封印がどんな大きさかもわからないのに、それは無茶では?

  手で握った魔石からだって、隙間から魔力が抜けてくってのに」


 「だが、直接触れていれば、魔力を流せるのだろう?

  封印の魔法陣が発見できれば、魔素を失っても、そこに直接魔力を流して封印を守ることもできるだろう」


 「根本的な問題がありますよ。

  魔素がなけりゃ、そもそも魔力が練れません。そのやり方じゃ、魔石が(から)になるまでしか保ちませんよ」


 「…そうか。

  では、魔素溜まりを壊す方法を考えねばならんか」


 「そうなりますね。

  ルードの結界術の魔法陣がわかれば、解決なんですがねぇ」





 そんなこんなで、ちっとも前に進まない話し合いをしてたら、ソリトが捕まったって話が飛び込んできた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >魔法陣が完成する前に、壊すか、封印を守る方法を見付けるかしなければならん うーん、ジークの武器のウケ魔法陣を研究すべき!! 五角形の線上にその魔法陣を置けば、そこで魔力が吸われて線が切…
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