21-3 魔力が描く五角形
しばらく待ってると、また魔力の光が魔素溜まりから出て違う方から入っていった。
なるほど。こうやって何回も魔力を通して魔法陣になってるわけか。
この間隔が少しずつ短くなっていくのか、それともずっとこのままなのか。調べようと思うと、俺がずっと張り付いてなきゃならないからなぁ。
「さて、と。夜までここにいんのは、さすがにヤバいな。森の外まで出て、この魔力が夜も出てんのか確認すっか」
「森の中でまっすぐ歩くのって、難しくない?」
「しゃあねぇだろ。ある程度魔力が感じられるなら、多少ズレても困らねぇよ」
森を出た時に、魔力の光が通るところから少しくらい離れても、通ったのが感じられるくらいの距離なら問題ない。
森ん中で夜を明かすほど自信家じゃねぇからな。
森の外に出て、大体この辺だろうってとこで野営した。
ここに来るまでの間にも、1回魔力が走ってるし、多分夜もなんだろうな。
予想どおり、夜の間も何回か魔力の光が走った。
途中で寝ちまったが、まぁ目的は果たせただろう。
「よし、帰るか」
帰り道、予定どおり、西の岩山と東の一ツ目の洞窟の間辺りで待ってみると、東から西に魔力の光が走った。もう間違いないな。
ギルドのセシリアんとこに顔を出すと、すぐ支部長のところに連れて行かれた。
「その顔は、どうやら収穫があったようだな」
「大したことはわかりませんが、収穫はありましたよ。
魔素溜まりは、間違いなく魔法陣の一角です。
こんな具合に、一定時間ごとに魔力が通ってました」
森で書き込んできた地図を見せ、線を3本指差す。
「南西へ出て、南東から入って、ですね。ある程度の時間ごとで、夜もです。さすがにずっと見てたわけじゃありませんが、多分ずっとそうでしょうね。
で、帰りに、東から西へも魔力が通ってることを確認しました。
角度考えると、多分、北から南西、東、西、南東、北って順番で流れてます」
地図の残りにも線を引くと、街を囲うように逆さまの五角形ができた。
「この小さい逆五角形の中に魔神が封印されてるんですかね」
根拠はあんまないが、支部長は納得してるっぽい。
「この範囲に封印があるとみて間違いないな。
それで魔素溜まりだが、魔素を吸う量が増えているとかいうことはなかったか?」
吸う量? まさか…。
「微妙に増えてる気はしましたが、前を正確に覚えてるわけじゃないんで…」
「魔素も魔力も、見えるのがフォルスだけというのは苦しいな。
ずっと外を調べさせれば、こちらの調査が進まんし、こちらを優先すれば外の様子がわからん」
「どういうことです?」
「あくまで推測だが、魔素溜まりが一定量の魔素を吸うと魔力を発して魔法陣が浮かび上がるのではないかと思えてな。
魔素を吸う量が徐々に増えて、いずれ常に魔法陣が描かれるようになると、魔神が復活するのではないか」
つまり、そのうち魔力が出っぱなしになるってことか!?
あり得るのか? たしかに、少し吸う量が増えてる気がしたが。
「あの…魔素溜まりが1つでもなくなれば大丈夫ということでしょうか?」
おずおずと、セシリアが言った。
たしかにそのとおりなんだが…。
「多分そうだと思う。だが、魔素溜まりを壊す方法がない。下手に魔法を当てれば、逆に吸収されちまうかもしれねぇんだ」
「では、フォルスさんが魔素を操って、魔素溜まりに魔素を吸わせないようにするとか…」
「それもできない。
魔素溜まりが魔素を吸い込む力は、俺が操る力より強いんだ。
魔素溜まりの近くでは、俺は魔素を自由に操れない」
セシリアも、次の方法は思いつかないようだ。黙って唇を噛んでいる。
「結界術は?」
それまで黙ってたレイルが口を開いた。
「結界術で、魔素溜まりの周りから魔素をなくせばいいんじゃない?
あれなら、5か所それぞれでやれるし」
「なるほど。
結界術の調査を急がせよう」
あとは、魔神の封印の場所か。早いとこ見付けねぇと。




