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16-2 一ツ目の巨人

 準備を整えた俺達は、翌朝開門と同時に出発した。

 敢えて途中で一泊して朝から巨人に当たる行程だ。

 出発前夜、部屋にセシリアが押し掛けてくるのもすっかり定番になってる。

 ただ、今朝はレイルの機嫌がやや悪い。


 「仕方ないとは思うけど、やっぱり便利に使われてるよね。

  次は、魔狼の森で魔素溜まり探しだよ、きっと」


 魔狼の森?


 「なんで今更あの森が出てくんだ?」


 訊くと、レイルがまた小馬鹿にした目で見てきた。


 「バッカじゃないの?

  ちょっと考えればわかることじゃないか」


 考えればわかる?


 「なんだ、そりゃ」


 レイルは、はあ、と溜息を吐くと、呆れたような目で俺を見てきた。


 「あのさ、今回はこの前のデカブツとは違って、生き物が相手なんだよ?

  それなのに、あのおっさん、魔素溜まりがあるって確信してたじゃない。

  2日以内に見付からなきゃ帰ってもいいってことは、逆に言や、2日以内に見付かるはずだってことでしょ。

  その自信はどこから出てくるわけ?」


 「洞窟があるから一応ってことじゃないか?」


 「バッカじゃないの?

  それなら、“念のため洞窟を確認してくれ”って言うよ。

  あの言い方は、“魔素溜まりはきっとある。多分洞窟だろう”って確信を持ってるからだよ」


 そんなもんかねぇ。


 「で? それが北の森とどう繋がるんだ?」


 レイルの目が更に呆れたものになった。


 「本当にバカだねえ。

  あのおっさん、“いるはずのない魔獣がいるところには、魔素溜まりがある”って踏んでるんだよ。

  だから、魔素溜まりを見付けられる僕らに探させようって腹なんだ」


 「見付けんのは、俺にゃ難しいんだがなぁ」


 「君には無理でも、みゃあなら見付けられる」


 「いっそ“魔素溜まり見付けられんのは、みゃあなんです”って言っちまうか」


 軽い調子で言ったら、ふくらはぎを蹴られた。結構な強さで。


 「バッカじゃないの!?

  そんなこと言って、みゃあが連れてかれたりしたらどうすんのさ! 可愛い仲間なんだよ!?」


 なに本気で食ってかかってくんだよ。


 「ギルドがわざわざ猫連れ去ったりするかよ!」


 「利用できると思えば、連れてくかもしれないじゃないか。

  みゃあが無理矢理働かされたら、可哀想だろ!」


 レイルのこういうとこは理解できねぇなぁ。

 猫を無理矢理働かせるギルドってなんだよ。


 「わかったわかった。

  みゃあのことは黙っとくから」


 「絶対だからね」


 レイルは、その後もブツブツ文句を言ってたが、聞き流しておいた。




 翌朝、巨人探しを始めた。

 オーガとかじゃなくて「巨人」ってのが気になるが、とにかく今回は生き物だから、探索の結界に引っ掛かるはずだ。

 結構広めに結界を張って歩くと、すぐに見付かった。山の中腹にさしかかる辺りだ。


 「中腹よりちょい下ってことは、支部長の読みが当たったかな」


 ぼそりと言うと、レイルが反応した。


 「やっぱり北の森に行くことになりそうだね」


 否定できないのが悔しいとこだな。

 ある程度近付いたところで、姿隠しと匂い隠しの結界を張って進む。

 ところどころにある木の陰に身を隠しながら、反応のある方へ。

 やがて、少し拓けた場所に、巨人がいるのが見えた。

 オーガより二回りくらいでかい一ツ目の巨人は、腕が4本あった。


 「でかいな。腕が4本もあるぞ」


 「4本もあって、使いこなせるのかな」


 「魔獣だからな。できなきゃ生えてないだろ。

  それより、ちょっと試してみたいことがあるんだけどな。

  あいつも魔石があるわけだろ?

  もし、周りの魔素をなくしたら、やっぱ止まったりすんのかな」


 「バッカじゃないの?

  石の塊とはわけが違うんだよ。

  魔素がないくらいで止まるわけ…」


 呆れた口調のレイルだったが、ふと真顔になった。


 「いや、そうか…。やってみる価値はあるかもしれない」


 「なんだ?」


 「止まりはしないだろうけど、力を抑えることはできるかも。

  考えてみれば、魔素をなくせば僕だって身体強化できなくなるんだ。

  魔獣だって、魔素を使ってる力は使えなくなるよね。

  問題は、あいつ自身の魔石でどんだけ能力(ちから)が使ってられるかだね」


 意外なことに、レイルは俺の思い付きに乗るつもりのようだ。

 むしろレイルの方が、理路整然と有効性を説明してる。

 まぁ、やっても失うものはないし、当然と言えば当然なのかもしれないが。


 「よし、んじゃやってみるぞ」


 「バッカじゃないの?

  いきなり試したら、あいつの力が落ちたかどうかわかんないじゃないか。

  まず普通に戦ってみて、途中から魔素をどかさなきゃ駄目じゃない」


 う…まぁ、そりゃ正論だけどよ。


 「あの一ツ目と正面からやり合わずにすむなら、その方がよかないか?」


 一応、お前の負担を軽くしようと思ってんだけどな、こっちは。


 「正面からやったって勝てるよ。

  だから、最初は普通にやって、途中から魔素をなくしてよ。

  僕は魔石を持ってるし、適当に距離取るから、気にしないでやってね。

  あと、すぐ効果が出るかわかんないから、いいって言うまで続けてよね」


 「わかった」


 簡単すぎる打ち合わせの後、レイルは一ツ目に突っ込んでいった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >いるはずのない魔獣がいるところには、魔素溜まりがある そうか! 魔狼もいきなりいるはずないところに出現した。そして、みゃあもね!! >みゃあが連れてかれたりしたらどうすんのさ! 色…
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