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14-3 岩山の洞窟

 「とりあえずは、巨人が山の上から歩いてきたって仮定して辿ってみよう」


 「結局、さっきと同じってことだよね?」


 レイルに聞き返されたが、要するにそういうことだ。

 巨人がどこにいるか察知できない以上、こないだの奴がどこから来たかを探るのが一番手っ取り早いはずだ。

 逆に言やあ、ほかに手はないんだが。

 「まぁ、できることをやるしかないってのが本音だな」


 巨人が何のためにいたのかってところから考えれば、当然目的のために造って動かしてるはずで、造った奴がいて造った場所があるはずだ。

 あの巨体、重さから言って、よそで造ったもんを持ってきたとは思えない。

 てことは、この岩山のどこかに、少なくともあれを造った場所がある、と。

 だったら、そこを見付ければ、あれが何のために造られたか、どうやって造られたかってのがわかるかもしれない。

 今の俺達には、ほかの方法は思いつけないわけだし、仕方ない。


 「あの図体で山を下りてきたとなると、このルートが一番ありそうなんだよな。

  どこかを中心に警備してるってこともありうるが、アレがいた場所の左右どちらも洞窟とかありそうな感じじゃないしなぁ」


 「まっすぐ下りてきてる感じでもなかったけどね」


 「まあなぁ。

  まぁ、とりあえずまっすぐ登ってみて、駄目そうなら今度は左側を見てみりゃいいだろ。

  とにかく動いてみるしかないんだし」




 岩山を登っていったが、それらしきものは見付からない。

 「ね…みゃあの方はどうだ? 何か見付けたか?」


 レイルに確認してみたが、

 「ん~、なさそうだね」

ということだった。

 となると、こっちはハズレかもしれねぇなぁ。

 まぁ、とりあえずもう少し上まで登ってみっか。




 岩山のてっぺん、というか、上の方まで来てみたものの、結局何もない。

 探知できないような相手がいるところで野営したくはないが、動くもの全てに反応する結界なら、あの巨人も一応引っ掛かるから、そいつを張って休むことにした。

 まぁ、寝ないことには体がもたんし、そうせざるを得ないんだけどな。




 翌日、巨人が右回りで歩いてたって前提で、麓から見て左側を調べることにした。

 ったく、足跡さえ残ってくれてりゃ、こんな面倒はしなくてすむんだがなぁ。


 「ねぇ、昼間も動くもの全部引っ掛かる結界にしない? 不意討ちさえ食らわなきゃ勝てるんだし、どうせあのデカブツ見付けるのは難しいんだろ?」


 まぁ、実際大変なのは確かだからな。

 どちらかというと、目的は巨人がまだいるかじゃなくて、巨人が何のためにいたかの調査って感じだし、それでいいか。

 幸いというか、岩山だから動物もロクにいなくて、動くものを関知しても大きさで除外できる。

 「案外簡単なことだったんだなぁ」


 「ん? 何が?」


 つい口を突いて出た言葉に、レイルが反応した。


 「いや、あの巨人を捜そうと躍起になってたが、ここだと動くものってネズミみたいなちっこいのしかいなくてな。

  ある程度でかいのがいるようなら、そいつが巨人だって思ってもいいな」


 「なるほどね。もっと早く気付けば楽だったね」


 「…そうだな」

 レイルの言葉に、責めるような感じはない。

 ないんだが…昨日の苦労は何だったんだって気分になっちまう。

 まぁ、森みたいに木がないったって、岩の塊みたいなのはいくつもあるから、視界はよくない。

 不意討ちはともかく、洞窟の類は目で探すしかないんだよなぁ。

 結局、1日歩き回って収穫はなし。明日もこの先を探す感じだな。




 翌日。続きを探索する。

 「こっち側は、今日中に決着付けたいなぁ」


 「地味にキツいからね。まだ反対側もあるんだよね」


 そうなんだよなぁ。右回りの方が広いから先にやってるが、これが終わったら、左回りも探さなきゃなんねぇんだよな。

 そろそろ残骸の回収組も来るしなぁ。


 「こっちが終わったら、一旦戻ろうか」

 突然レイルが言ってきた。

 「どこに戻るって?」


 「前のデカブツのとこ。セシリア達、そろそろ来る頃でしょ」


 「そりゃそうだが、なんでだ。まだ反対(あっち)側も残ってんのに」


 「アテもなく動いてんのって、結構キツいからさ、ま、途中報告みたいなもんで」


 「まぁ、それでもいいか」


 セシリアに経過報告して意味があるかは疑問だが、やっちゃいけないってもんでもないだろ。

 ただ、レイルのことだから、またなんかからかうつもりなんだろうな。

 「とにかく、こっちをさっさと探そうぜ。

  どっちにしたって、ここが終わらなけりゃ話にならん」


 「そうだね」


 周りには、相変わらずネズミかなんかしかいねぇし、どうにも変わり映えがしねぇなぁ。

 そのまましばらく探し続けてたら、突然、レイルの腕の中のね──みゃあが騒ぎ出した。


 「フォルス」


 レイルが俺を見て、みゃあを下ろす。

 「ああ」

 こりゃ、何かを見付けたな。

 レイルの手を離れたみゃあが駆け出し、レイルが同じ早さで追い掛ける。

 俺は、どう頑張ってもついていけないから、レイルを感知しながら追い掛けるしかない。

 ようやく追いつくと、そこには洞窟が口を開けていた。

 ここまで来ると、俺にもわかる。

 洞窟に向かって、ゆっくりと魔素が流れている。

 目の前にあるのが洞窟でなけりゃ、単に風に流されてるのと区別が付かなかった。


 「よく見付けるよな」


 「ふふん、みゃあはすごいからね」


 このやりとりも何度目かね。

 「さて、中に何があるのやら。

  この魔素の流れん中じゃ探知はできないから、気ぃ付けろよ。

  魔素を引っ張ってる何かがあるのは間違いない」


 風に流されてるんなら、何かにぶつかって跳ね返ったりするもんだが、この魔素は間違いなく何かに引き寄せられている。

 試しに、俺の方に引き寄せてみると、近くの魔素は動かせた。だが、少し離れると、あっちの方が強い。

 「俺より、魔素を操る力が強い。

  今のうちに、周りの魔素を取り込んどけ。

  それと、魔石の準備もだ」

 言いながら、俺も魔石を確認する。

 奥に何がいるかわからねぇが、下手すると、俺みたいに周りの魔素を操って魔法を封じてくるかもしれない。

 俺と同じように魔素を動かせて、しかも俺より上手い──そんな奴とは、戦ったことがない。

 魔素がなくちゃ、魔法は使えない。だが、魔石を準備しとけば使える──俺が自分の切り札を知られたくない理由だ。

 対魔法士で圧倒的有利な魔素を操る力も、魔石で対処されたら何の役にも立たない。


 だが、洞窟の奥にあったのは、魔素溜まりだった。

 この前と同じように、みゃあが縁を(つつ)いてる。

 「魔素溜まり、か。まさか、これを守ってたってわけじゃないよな」


 「もしそうなら、デカブツを造った奴がこの魔素溜まりを造ったってことだよね」


 「…そりゃないよな」


 巨人は誰かが造ったとして魔素溜まりを人が造れるとは思えない。


 「でもさ、デカブツのせいでできたってことは?」


 巨人を造るのに何かやらかして、そのせいで魔素溜まりができたとか? そもそもどうやって巨人を造るのかもわからないのに、考えるだけ無駄だな。


 「わからん。だが、この魔素溜まりは変だ。

  この前のは魔素を吸ってもいたが、吐き出す方が多かった。こいつは吸うばっかりだ。

  少なくとも、あの巨人はここに近づけないはずだ」


 「なるほどね。じゃあ。とりあえずセシリアと合流しようか。

  左回りは、その後だね」


 「そうだな」

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― 新着の感想 ―
[良い点] >洞窟に向かって、ゆっくりと魔素が流れている。 魔素溜り来たね! [気になる点] >対魔法士で圧倒的有利な魔素を操る力も、魔石で対処されたら何の役にも立たない。 確かに! 自分の弱点を…
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