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12-1 気まずい…

前話のあらすじ

 一角馬捕獲のための囮となったセシリアは発情し、フォルスに告白した挙げ句、結ばれてしまった。

 だが、フォルスとしては気まずくて…。

挿絵(By みてみん)


 一角馬の騒ぎから5日が経った。そろそろ次の仕事を、とは思うんだが、どうも気が乗らない。乗らないっつうか、はっきり言えばギルドに行きたくない。もっと言えば、セシリアと顔を合わせたくない。

 あんな形で処女を奪った相手と顔を合わせるのは、気まずいよなぁ。

 何が気まずいって、セシリアが俺に惚れてるとかいうのがなぁ…。

 俺は、孤児だ。親の顔も知らない、つうか覚えてない。

 多分、2歳かそこらまでは、親と一緒に過ごしていたんだと思うが、いつのまにか孤児院にいた。

 いつも腹を空かせていて、街の雑用やら街のちょっと外での薬草の採取やらをして日銭を稼いでたっけ。盗みに手を染めなかったのは、そこまでしなくてもなんとか生きてけたからだ。

 盗みをやって捕まると、多分人生終了だから、そんな危険を冒さずに生きられるなら、それに越したことはない。人生終了ってな、文字どおり命がなくなるってことだからな。バカな奴らは安易にスリやらかっぱらいに走るが、捕まえるために首をはね飛ばされるなんてザラだ。そうやって死んだ奴を何人も見てきた。

 逆に、スリを捕まえて小銭をもらったこともある。捕まった奴は右腕を折られて、何日か後に道端でハエにたかられてるのを見たが、心は痛まなかった。

 結局、真っ当に、地道にやるのが一番確実だと学んだ俺は、冒険者を目指して我流で剣を覚えた。

 その後、俺の目の力に気付いた師匠に拾ってもらえて魔法を覚えることができて今に至るんだが…。


 まぁ、要するに俺は家族とか親ってもんに縁が薄いんだ。

 はっきり言って、自分が家族を持つってことに憧れもなければ実感も湧かない。

 セシリアは嫌いじゃないし、抱き心地も悪くないし、付き合うくらいは構わない──偉そうな言い方だが。

 だが、セシリアが何歳かは知らんが、付き合うとなりゃあ結婚とか言い出す日も来るだろう。

 ギルドでマネージャーなんて堅実な仕事を持ってる奴が、根無し草の冒険者と生きるなんて、無理な相談だ。

 第一、俺達はいつまでもこの街にいるって保証はないんだ。

 前の街で俺達を襲ってきた奴らが、また現れないとも限らないしな。

 まぁ、この街にいる間くらい、セシリアと一緒にいるのも悪くないが。娼館に行く金が掛からないし。…我ながら、下衆な考えだ。




 「あのさフォルス、そろそろギルド行かない?

  そりゃ、懐は温かいけど、いつまでもボーッとしてるのはどうなの。

  まだあいつのこと、ぐだぐだ悩んでんの?」


 うだうだやってたら、レイルにせっつかれちまった。

 わかってんだよな、そろそろ仕事しなきゃならねぇってのは。

 でもなぁ…。


 「あいつのことなら、心配いらないよ。

  妙なことにはならないさ」


 なんだよ、ずいぶんと軽く言ってくれるじゃないか。そういえば、セシリアの話をしてるのに嬉しそうだ。

 この前から、妙に機嫌がいいような気がするな。

 「なんだ、お前はセシリアを嫌ってると思ってたんだが、俺の気のせいだったか?」


 「バッカじゃないの? 僕はあいつが嫌いだって、はっきり言ってたと思うんだけど。

  どこに“嫌いじゃない”なんて思う余地があった?」


 ずいぶん清々しく言ってくれるじゃないか。

 「お前、俺がセシリアと付き合うなんてことにでもなったらどうすんだよ」

 俺はそれで悩んでんだぞ。


 「え? いいじゃん、付き合っちゃえば。

  フォルスを好きになる女なんて、そうそういるわけないんだから、捕まえといた方がいいと思うよ。

  なにより、タダだし!」


 「お前なぁ…。

  たしか、セシリアは俺に色目使ってるからどうのとか言ってなかったか」

 嫌味半分で言ったんだが、レイルの返事はあっさりしたもんだった。


 「あ、そのこと?

  フォルスが誘惑されていいように使われるのは困るけど、今ならフォルスの方が立場強いから問題ないね」


 「立場?」


 「あいつは、もう君にベタ惚れだよ。

  対して、君はあいつに執着してない。

  つまり、あいつは君を失うことを恐れて、無茶なことは言ってこなくなるわけだ。

  もちろん、あいつが僕らじゃないとヤバいって判断した仕事なら、余程でなきゃ受けるよ。

  どうでもいいようなのなら断るってだけで」


 ベタ惚れって…。それって、結構マズいんじゃないのか?

 「セシリアが結婚迫ってきたらどうすんだよ」


 「いいんじゃない? すれば。

  僕は、君が相棒であり続ける限り、誰と付き合おうが結婚しようが構わないよ」


 「街を出ることになったら、困るだろう」


 「そんときゃ連れていけばいい。

  できれば、行った先のギルドに勤めさせてさ。

  あいつなら、多分それができる。

  顔の利く信用できる奴がいると便利だよ」


 「そんな簡単にギルドに勤められんのか? できなきゃ、タダ飯食らいを飼うことになるんだぞ」


 レイルは、にやあって感じで、意地が悪そうな顔をして答えた。

 「へぇ? 意外と冷たいんだ? 君に処女を捧げた女だよ」


 「あんな状況じゃ、嬉しくないだろ。

  …違うな。

  お前もわかってんだろ。家族を持つなんて、想像もできねぇんだよ」


 「あいつのことは信用してるんだろ? だったら、僕と同じような感じでいいんじゃないの」


 「男と女じゃ違うだろうよ」

 なんか話が噛み合わねぇなぁ。


 「同じだよ。信用できるかどうか、一緒にいてメリットがあるかどうか。一緒にいようと思うかどうかさ」


 「そんな簡単に割り切れるかよ」


 「あいつって一人暮らしなんだっけ? うまくすれば、宿代も掛からなくなるよ」


 「お前、セシリアんちに居候でもするつもりか?」


 「いつでもフォルスと一緒にいられるように計らってあげるだけだよ」


 なんか、考えてんのがバカらしくなったな。

 「とりあえず、行ってみるか」


 「そうそう、考えてても話は進まないよ。

  邪魔だったら置いてけばいいんだから」


 それでこそレイルだ。…ってのは、褒めてないからな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] うーむ。レイル、不可思議な男。 なぜここで応援を!? ま、この子は素直じゃないとこあるしね。 でも、嬉しそうーというか、楽しそうだね笑 [気になる点] >フォルスを好きになる女なんて、そ…
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