7-2 臨時休暇
支部長からは、特に責められることもなく、要するに沙汰あるまで待ってろというようなことを言われた。
2~3日待てってのは、1つには、洞窟に確認に行った奴が戻ってくるまでの時間だろう。多分、ヴァイとかって奴らの動向みたいなことは2~3日で調べられるようなことじゃないだろうしな。
降って湧いた休みだが、ちっとも嬉しくない。まさか監視はしてないだろうが、街から出るなってことは、逃げるなってのと同義だからな。別に悪いことしたわけじゃないが、疑われてるってだけでなんだか気が滅入ってくる。こういう時は、娼館でも行って気晴らしでもすっかな。
例によって、レイルと浴場に行ってまずは汗を流した。
「レイル、2日も暇ができたが、どうするよ」
「ん~、僕は別に。みゃあと遊んだり、今回使っちゃった魔石の魔力籠めとかかな」
「なんだ、あんな短時間でも魔石使うハメになったのか? そんなに強かったか?」
割とあっさり倒せた印象だったんだがな。
今回は、俺は氷の矢3本しか使ってなかったし、そんなに魔素使ったか?
「強くはなかったけどね。今後のことを考えると、魔石からどれくらい魔力を引き出して使えるか、実戦で試しておきたいじゃない。それこそ減るもんじゃないし」
「あっちにゃ魔法士もいたんだし、洞窟ん中の魔素を優先的に使った方がよかったんじゃないか?」
「あんな格下に君が後れを取るとは思えなかったからね」
「格下って…。あっちは前から6級だった連中だぞ」
「ギルドの格付けなんかどうでもいいよ。
どう見てもフォルスの方が魔法士として上でしょ。魔素を操る力で君を上回る奴を僕は知らないよ」
なんかレイルに褒められるとくすぐったいな。調子狂うというか。
「僕が組むなら、君以外にいないと思うよ」
「そりゃどうも」
「あのさ。言っとくけど、僕が組んでるのは君が優秀な魔法士だからなんだ。
もちろん信用できるとかそういうオマケもあるけど、一番は君と組むことで生き残れる可能性が上がるからってこと、忘れないでほしいね。
君を相棒に選んだ僕の目を信じなよ」
「別に、信じてないわけじゃないんだがな。
ま、お前にアテにされるくらい使えるってことでいいか」
「そうそう。胸張っていいよ。この僕の唯一の相棒なんだから。
これまでも、これからもね」
「これからって…。まぁ、俺もパーティー解消する気はないけどな。
こんな仕事だ、お互いいつ死んだっておかしかない」
「孫が生まれるまで死なないんじゃなかったの? まあ、君に子供が生まれるかどうかだって怪しいもんだけど」
そりゃ、つまり、俺は結婚できないと思ってるって、そういうことだな?
「そのうち、とびっきり美人な嫁さんもらって見せつけてやるから覚えとけ」
「ふぅん。陰険女みたいな?」
「だから、なんでここでセシリアが出てくる?」
「あれ? 僕は“陰険女”としか言ってないけど? やっぱりフォルスもあいつが陰険だと思ってるんだ」
「だって、お前いっつもセシリアのこと“陰険女”って呼んでるだろうが!」
「へえ~、そうか。フォルスもねえ」
ダメだ、何言っても揚げ足とられるな、これは。
「で? フォルスは休みの間何してんの?」
レイルが話題を変えてきた。まぁ、不毛なネタをいつまでもやられても困るから、ちょうどいいが。
「とりあえず予定はないからのんびりしてるかな」
「毎日娼館通いで忙しいんじゃないの?」
「毎日なんて通うかよ! 3日に1回も行けば十分だ」
「じゃあ、1回は行くんだ」
「あ…まぁ、今日はな。仕事が終わった日は、いつものことだろう。お前だって、どっかで女引っ掛けるつもりなんじゃないのか?」
「あ~、それもそっか。
ごめんね、僕だけもてちゃって。
そのうち誰か紹介してあげようか?」
「お前なぁ、女の子をそんな、物みたいに扱うなよ。そのうち本気で刺されるぞ」
「金で女買ってる奴が、それ言う?」
「向こうは納得ずくで売ってんだ。商売だろが。
お前の場合は、形はともかく、ちゃんとお前という個人を気に入った女の子なんだから、ちゃんと扱ってやれよ。たとえ一晩限りだとしても」
「君って、変なとこ真面目だね」
「茶化すな。
それと、親のない子供みたいなの作るんじゃねぇぞ」
「ああ、そういう…。大丈夫。孤児院溢れかえらせる気はないから。
僕だって、親のいない辛さは、一応知ってるからね」
「なら、いい」
そうか、そういやレイルは親が乱暴されてできた子供だって言ってたか。
混血なのもそのせいだって。
俺は孤児で、両親の顔を知らないが、レイルも父親が何者か知らないんだっけ。人間で、どっかの貴族ってことらしいが。
まぁ、こんなこと考えてっと気が滅入ってくるからな。やめだ、やめ。
「んじゃ、俺はちょっと遊んでくるからよ」
せっかくできた休みだ。楽しく遊んでくるとしよう。




